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5.恋と、嘘と、現実と
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「…本当にいいのか…?寧音に…」
「…もう、そんな脅しにはのらないから…でも、本当に寧音に何かしてみろ。僕はお前を絶対、許さない」
その時の千尋の顔が一瞬、泣きそうに歪んだ。
そんな風に見えたのは、僕の目の錯覚だったのだろうか。
…きっと、そうだろう。
だって、一瞬後にはいつもの千尋の顔だったから。
「…手、放してくれないかな」
弁当を食べる時間がなくなる。
僕の言葉に千尋は、ゆっくりと僕の腕をから手を放した。
そのまま美術室から出ていこうとした僕の後ろで千尋が呟いた。
「…そんなに俺の事が嫌いかよ」
「当たり前だろ。あんな事しておいて好かれているとでも思っていたのか」
千尋の言葉にカッとした僕は、吐き捨てるようにそう言って振り返らず扉を閉めた。
だからその時、千尋がどんな顔をしていたかなんて知らない。
僕は美術室を出ると、弁当を食べる為に空教室を探した。
さすがにクラスには戻りにくい。
だが、こちらに向かって走ってくる治夫に気付いて溜め息を吐いた。
…弁当を食べるのは、諦めるしかないか…。
「…もう、そんな脅しにはのらないから…でも、本当に寧音に何かしてみろ。僕はお前を絶対、許さない」
その時の千尋の顔が一瞬、泣きそうに歪んだ。
そんな風に見えたのは、僕の目の錯覚だったのだろうか。
…きっと、そうだろう。
だって、一瞬後にはいつもの千尋の顔だったから。
「…手、放してくれないかな」
弁当を食べる時間がなくなる。
僕の言葉に千尋は、ゆっくりと僕の腕をから手を放した。
そのまま美術室から出ていこうとした僕の後ろで千尋が呟いた。
「…そんなに俺の事が嫌いかよ」
「当たり前だろ。あんな事しておいて好かれているとでも思っていたのか」
千尋の言葉にカッとした僕は、吐き捨てるようにそう言って振り返らず扉を閉めた。
だからその時、千尋がどんな顔をしていたかなんて知らない。
僕は美術室を出ると、弁当を食べる為に空教室を探した。
さすがにクラスには戻りにくい。
だが、こちらに向かって走ってくる治夫に気付いて溜め息を吐いた。
…弁当を食べるのは、諦めるしかないか…。
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