学生時代

Me-ya

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5.恋と、嘘と、現実と

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その内、慣れるのだろうか。

治夫が隣にいない事に。

今は想像もできないけど。

時間が過ぎれば。

きっと………。

……………………………………………………。

…………………………。

……………。

………と、思っていたのに。

「隼人、食堂に行くの?一緒に行こう」

昼休みになり、食堂に行こうと教室を出た僕はその声に振り向く。

「………治夫」

怪我が治り、病院を退院して登校してきた治夫に何故か僕は、なつかれてしまった。

治夫が登校初日、僕に笑って話しかけてきた時は記憶が戻ったのかと喜んだ。

だが、記憶が戻ったわけじゃないと聞き、がっかり。

では何故、僕に話しかけてきたのか。

不思議に思った僕に治夫は、意識が戻った時に見舞いに現れたきり姿を見せなくなった僕が、ずっと気になっていたんだと告げてきた。

『だから、母さんに聞いたんだ。そしたら幼馴染みだって教えられて…アルバムも見せられた』

『何故、隼人だけの記憶だけがないのかわからないけど、記憶をなくす以前はきっと治夫は俺の中で大事な存在だったと思うんだ』

『隼人は俺にとって、大事な友人』

『記憶をなくしててもそれだけは何故か、わかった』

『だから、記憶をなくしているとか…そんなの関係なく…記憶をなくす前…いや、できたらそれ以上に隼人と仲良くなりたいと俺自身が思ったから…』

治夫の、その言葉を聞いて…泣くかと思った。

その言葉だけで…もう、治夫が僕の事を忘れてても…寧音と付き合っててもいい…そう思えた。

恋人だと、いつか別れがくるかもしれない…だが、友人なら…別れる事はない。

…ずっと、一生、友人でいられる…。

それに、何より。

治夫に大事な友人だと言われた。

僕に関する記憶をなくしているのに…。

それでも、僕を大事な友人だと…。

それだけで充分だ。

僕のこの気持ちは箱に入れて、厳重に鍵を何重にもかけて、心の底に仕舞っておく。

絶対、表には出さない。

そう決めた。

「治夫」

寧音の治夫を呼ぶ声がする。

「一緒にお昼、食べよう」

そう。

治夫と寧音のこういった場面も、笑顔で見る事ができるようにならないと…。


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