学生時代

Me-ya

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3.雨やどりの教室で消えた初恋

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「………ごちそうさま」

「…また、そんなに残して…どうしたの?」

朝食を半分以上残した俺に、母親が聞く。

「…別に…」

「そういえば寧音ちゃんも迎えに来なくなっちゃったし…あ、もしかして喧嘩でもしたの?駄目よ、早く謝っちゃいなさ………」

「…最近、寧々、勉強が忙しいらしいから…」

「……え?………あ、そうか…寧音ちゃん、特進クラスだっ…」

「いってきます!!」

何も知らずに寧音の事を話し続ける母親を途中で遮り、家を飛び出した。

「…よっ!」

登校の途中、いつもの場所で治夫が僕を見てニカッと笑う。

…寧音に別れを告げられ…いや、少し距離を置こうと言われた次の日から治夫はいつもこの場所で僕を待っている。

「…どうして毎朝、僕を待っているのさ?」

溜め息を吐きつつ、僕は治夫に聞く。

「いや~、寧音と別れてひとりで登校は寂しいだろうと思ってね」

(…ふ~ん…って、余計なお世話…)

「…まだ、別れてねーし…」

…………………………ん…………………………?

「…僕が寧音と登校しなくなったって、誰に聞いたの?」

僕は誰にも言ってないのに…っていうか、寧音に距離を置こうと言われた次の日から治夫は僕を待っていたよな…寧音はそんな事、誰にも言わないだろうし…誰に聞いたんだろう?

「そりゃ、分かるさ。俺、いつも隼人の事、見てるから」

……………キモ……………。

「…そんな冗談はいいから」

「………あれ、ウケなかったか…まあ、振られたからって落ち込んでないで元気だせよ。な?」

アハハと笑って治夫は僕の背中をバンバンと叩く。

だから、まだ振られてないっつーの!!

「…背中、痛いから」

「…ああ…悪い、悪い」

笑いながらも、背中をバシバシ叩く。

…全然、悪いなんて思ってないな。

でも、ま、治夫のお陰であまり落ち込む事はなかったのも事実だし…。

治夫なりに僕の事を慰めようとしてくれているのかな。

半分、押しかけ…とはいえ、約束通り勉強も教えてくれるし…。

凄く意外だったけど、治夫の教え方は上手で…っていうか、分かりやすくて……どこが分からないのか分からなくて質問もできなかった僕に笑いも馬鹿にもせずに根気強く基本の基本から教えてくれて………スパルタだけど………。

照れ臭くて口には出せないけど、心の中では治夫に感謝している。

『距離を置こう』

そう言われてから寧音とは会っていないし、勿論、話もしてない。

時々、廊下で擦れ違ったり、遠くから姿を見かけたりするだけで…言葉は交わせず。

それだけで心臓がドキドキした。

放課後、図書室で寧音が勉強している姿を遠くから見かけただけでも胸が一杯になったりした。

それから僕は放課後、図書室で寧音が自習している姿をバレないように遠くから5分位見た後、帰る事を習慣にしていた。

『毎日、毎日、よく飽きないな…てか、ストーカーだな』

と、治夫に揶揄われ、冷たい視線で見られながらもその日課は続けた。

だって、好きなんだもん。

しようがないじゃないか。
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