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一章
15雨降って
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王子ってどっちの?
なんて聞けるはずもなく、ツキヒの力にはなれそうにないと伝えることしか出来なかった。外套を買い取ってもらいツキヒに別れを告げて『あめふり屋』を後にする。
ヒヨクはどこに向かったろうか。宿をまだ取っていないので落ち合うとしたら質屋か。
都会に出てきてどうやら自分は方向音痴らしい事を知った。似たような建物が続くせいで質屋の方角を見失い、再び道行く人に訊ねながらどうにか質屋へと辿り着く。
「戻ったか、トキ」
質屋の主人と雑談に興じていたらしいヒヨクはトキを見つけると片手を上げて出迎えてくれた。合流出来たのは幸いだが、『あめふり屋』で聞かされた事が頭の中をぐるぐる回って受け答えがぎこちなくなってしまう。気まずい気持ちを一旦飲み込んで、質草の方はどうなったかを訊ねる。
「どれもそれなりの値が付くそうだ。小刀と縄は手元に残したいが構わぬな?」
特に小刀は旅の必需品なので了承しようとしたがすぐにヒヨクが妙な物を胸に抱いている事に気付く。
「なぁそれ、ちょっと貸してみろ」
「あっ」
人の頭ほどはありそうな壺をヒヨクから取り上げると、玩具を取られたような反応を見せる。ヒヨクの手が届かないように高い所に持ち上げて、その壺のずっしりとした重さにトキはがっくりとした。
「あの籠が重かった原因これじゃねぇか!! 何が入ってんだよこれ!」
「あ、開けるなら慎重にせよ!」
壺を台に置き、蓋を覆った布の紐を外す。蓋を開けると中からぷん、と濃厚な甘い匂いが上がってきて思わず顔を引っ込めた。
「何だ、この甘い匂い……?」
「……蜂蜜だ」
蜂蜜。
「なぁオヤジ、こいつはいくらで買い取ってくれるんだ?」
「中身はそっちの坊ちゃんが手ぇ突っ込んでねぇ保証が無いからなぁ。外側の壺なら銅貨二枚」
二本の指を顔の前に立てる店主に「売った」とトキが即答するとヒヨクが慌てて「ならぬ!」と割って入る。
「それは俺の一番大事な物だ。それがなければ俺は生きた心地がしなくなる。それに蜂蜜は高級品なのだぞ!」
「大袈裟だろ。実家に帰ればいくらでも食えるんだからこんなクソ重たいもんいらねぇよ飴で我慢しろ!」
「ならぬならぬ!!」
ヒヨクはまるで子供のように抵抗して壺を取り返そうとしたがトキが頭上に持ち上げてしまうとヒヨクの背では届かなくなってしまう。店主が迷惑そうな顔で「外でやってくれ」と尤もな事を訴えたところでヒヨクが大人しくなったのですかさず店主に壺を預けた。
「あっ」とヒヨクが切なげな声を上げるので店主は何度もトキとヒヨクの間で視線をうろうろさせたがトキがにべもなくヒヨクの希望を却下した。人が番の事でショックを受けている間に、自分は質屋でこそこそ旅の遅れの原因である蜂蜜壺を取り返していたと思うとつい八つ当たりしてしまう。壺に関しては道理がトキにある事も助けて自分の方がずっと正しいと思う気持ちが態度にも出た。
「お前のそれ、ただのわがままだからな」
「わがままなぞ、他が軽くなったのだから、壺くらい……」
「坊ちゃんや、旅にゃあの壺はちと重たすぎるとおっさんも思うよ。ここはそっちの兄さんの言う通りにして、家出に満足したら実家で溺れるくらいの蜂蜜を買ってもらいな」
理屈は分かっているようで店主に諭すように言われるとヒヨクは意見を引っ込めて漸く了承した。
質屋を出ると今夜の宿を探して歩き始めたが空気はこの三日の間で一番最悪だった。黙っていればいいのにむすっとして隣を歩くヒヨクから隠す気のない不機嫌な気配が漂ってきてつい突っかかってしまう。
「そんなに蜂蜜が好きかよ」
「あれさえあれば生きていけると思うくらいにはな」
ヒヨクは子供のようにふくれっ面であてつけがましく言葉を返す。それに対してトキは皮肉るように言った。
「さっすが王子様、贅沢品で体が出来ていらっしゃる」
はん、と鼻で笑うと思いがけずヒヨクの少し心配そうな視線が下から見上げてきた。
「何なのだトキ、お主は質屋に戻って来た時から様子がおかしいぞ?」
おかしい? 誰のせいだと思ってる。
ツキヒに聞いた番の話が頭を巡る。
「そんな事ねぇよ。あんただって蜂蜜一つで子供みたいに駄々こねるなんてそれこそおかしいだろ」
「なっ、だから質屋に預けたではないか!」
「こそこそ買い戻しそうだけどな」
「そのような事せぬわ!」
せっかくヒヨクが一歩引いてくれたのに、ツキヒに聞いた事を思い出すとムカムカしてきてつい態度がきつくなってしまう。
どっちの王子と番うのかだって? どっちも、に決まってる。だってヒヨクとヒオは二人で一人の王子を演じてきたのだから、ツキヒが王子の番になるというならヒヨクの番になるのと同義だ。
どうしてその事をトキに黙っていたのか。『相』の試験で選ばれなかったトキへの配慮だろうか。馬鹿馬鹿しい。番う相手が決まっているのにトキに体を触らせた事もまた腹が立った。
結局、今日の宿に着くまで険悪な空気のままだった。
宿に着くと部屋を二つ取ろうとしたが、生憎一つしか空いていないと言われてまた睨み合う。
「お主は宿で休め。今回は俺のせいで一日旅程が遅れたのだから外で休む」
「馬鹿言ってんなよ」
どんなにムカついていても世間知らずの王子をたった一人で外に放り出せるはずもなく、宿の代金を二人分支払って嫌がるヒヨクを無理矢理部屋へ連れて行く。
「放せ無礼者!」
「これくらいの事で無礼かよ! そんなんで王子扱いすんなとか無理があんだろ」
寝台が二つあったのは不幸中の幸いだ。これ以上無意味な口論が起きないよう、衝立を引っ張って来て間に置いて寝台に寝転んだ。
一晩経てばお互い頭も冷えるだろう。怒りのせいで空腹も感じない。蜂蜜一つでどうしてこんな事にと思ったが、蜂蜜が本当の原因ではない事は分かっていた。
「……アメフリの娘がそんなに好きか」
短い沈黙を破り、ヒヨクが非難するような口調で言う。
アメフリが誰の事か分からず反応が一拍遅れた。
「はぁ? 何の話だよ急に」
アメフリとはツキヒの姓の事のようだ。『あめふり屋』という屋号そのままの名でなければトキは分からなかっただろう。それくらいツキヒに対してトキは関心を持っていなかった証拠だ。だがヒヨクは、ツキヒの事をちゃんと知っているらしい。
「良い子だったよツキヒは」
「なっ」
「ちょっと臆病過ぎるけど気立ての良い優しそうな子じゃねぇか。番になるアルファは幸せもんだな。番になれるなら、だけど」
嫌な言い方だと思っても止まらない。だって悔しい。自分とならヒヨクと番になれるのに、オメガ同士で番のフリをしていく事をヒヨクは決めてしまったかも知れないのだ。
「何だと……? トキこそ、一体何の話をしておるのだ」
衝立など何の意味もなく、とぼけるフリをするヒヨクに声を張ってまで食って掛かる。
「あんた言ったよな。あの候補戦では番を選ばないって」
少し間があいて困惑したような声が返ってくる。
「そうだ。実際に番は決まっておらぬ」
「でもツキヒは王子の番に選ばれたって言ってたんだよ!」
「何だと……?」
その声は衝立越しのこもった声ではなかった。外套を着たままのヒヨクが衝立に手をつき、寝台に寝転がるトキを見下ろしている。
ヒヨクの顔から怒りは消えていた。驚きさえもなく、まるで魂が抜けてしまったかのように茫然としてしまっている。何故かその表情を見ているとこちらが悪い事をしてしまったかのような気にさせられて、トキは寝返りを打って背を向けた。
「アメフリの娘がそう言っていたのか?」
「そうだ。ツキヒも困ってるみたいだった。事情は、よく分かんなかったけど」
それ以上ヒヨクはトキに何も訊かなかった。ふと気配がしないと思うと衝立の傍から消えており、そっと覗き込むと寝台に腰かけて窓の景色を見つめていた。
ヒヨクの反応からして彼がこの事を知らされていなかったのは間違いない。自分はもしかして余計な事を言ってしまったのだろうか。でも、そんな事トキに分かるはずがない。トキだって騙されたと思ったのだ。
急に矛を収めてしまったヒヨクのせいで不完全燃焼のもやもやを抱えたまま目を閉じた。眠って起きれば嫌な事は忘れられる。でも最近の自分はそれが出来ない日がずっと続いている。
こんなに自分が怒りを感じている原因が、そもそも眠っても忘れられない最たる例だった。
次に目を開けた時には早朝だった。
昇ったばかりの朝日が窓から差し込んで、その眩しさにトキの瞼が震える。目を開けて短い時間自分の居る場所を思い出そうとする。
ここは都の東にある烏の邑で、適当にさまよって見つけた宿の部屋だ。どうして適当だったのかというと、ヒヨクと喧嘩していたからで――。
半身を起こして寝台の右側にあるトキが持ってきた衝立を見遣る。まだ眠っているのだろうか、部屋の中はとても静かだ。しん、とした静けさの中に薪ストーブの火が消えてしまった早朝の冷たい空気が混じり合って俄かに目が冴える。
喧嘩の元になった台の上に放りっぱなしの籠を見つけて昨日の自分の醜態を思い出してしまう。
一晩寝て怒りは引いていたが、その分自分の態度の酷さが浮き彫りになった。
やり過ぎだったと思う。荷を売るにしてももっとやり方というものがあった。自分のむしゃくしゃをぶつけるようにして正論を振りかざすのは褒められた行為ではない。
謝ろう。一晩眠れば嫌な事は全部忘れるのがトキの長所だ。今日こそそれを実行する。
布団から出るとひんやりした空気が肌を撫でていき思わず身震いする。衣桁に適当に引っかけていたせいで皺になってしまった外套を羽織り、衝立の向こうを覗く。
「ヒヨク……?」
しかしそこにはもぬけのからになった冷えた寝台があるだけだった。
台の上にヒヨクの荷物が残っていた。路銀も置きっぱなしだったのでひとまず財嚢だけ持って宿を飛び出す。
まさか都に帰ってしまった訳ではないだろうと思いながらも焦りは募りじわじわと頭が混乱していく。
「ヒヨクー!!」
人通りが疎らの早朝に、トキの声が響く。応えるものは無い。
探すと言っても当てなど無かった。土地勘の無い邑では辛うじて昨日訪れた質屋と『あめふり屋』の場所が分かるくらいだ。
明確な理由はなかった。何となくそっちに行ったかも知れないという曖昧な理由で『あめふり屋』に向かって走り出す。
『あめふり屋』は邑の中でもかなり大きな店のようで大通りを進むと方向を示す看板が建てられていた。それに従い息が切れるほど走って、まだ開店前の『あめふり屋』の前までやってくる。
「ヒヨク」
はぁ、はぁ、と肩で呼吸を繰り返し、額を伝ってきた汗を手首で拭う。
「トキ?」
昨日と変わらない姿でこちらを振り返ったヒヨクはポカンとした表情だった。
「どうした? 顔色が悪いぞ」
「……あんたが黙っていなくなるから」
トキが答えるとヒヨクは納得した顔になる。思い詰めてここまで来た訳ではなさそうだ。
「そうか。矢立を売ってしまったので書き置きを残せず――」
気付いたら抱きしめていた。ヒヨクの匂いがして、やっと安心する。
荷物も何もかも宿に残っていたので勝手に都に戻った訳でないと明らかでも、もしかしたらどこかで誰かに攫われでもしたかと思うといても立ってもいられなかった。そうでなくとも昨晩は自分の言葉で酷く傷つけてしまったようだった。衝立の前で茫然と立ち尽くしたヒヨクの表情は尋常ではなかった。
「トキ?」
戸惑うヒヨクを無視して、もう少しと思って腕に力を籠める。
好きだ。こんな時なのに思う。
やっぱり自分はヒヨクが好きだ。
「矢立、買い戻そう」
「そ、そうか? お主が良いなら、俺は嬉しいが」
腕の中でおろおろとヒヨクが戸惑っている。何で抱きしめられているのだろうと思いながら、それでも振りほどいてはいけないのだろうとされるがままになっている。それらが手に取るように分かり、彼のいじらしさにたまらなくなる。
もっとこうしていたいという思いを堪え、ヒヨクの肩を掴んで体を離す。
「あんた、思い付いたら無茶するところあるから、心配した」
一体いつから外に出ていたのだろう、ヒヨクの鼻の頭と頬骨の辺りがほんのり寒そうに染まっている。つい妹たちにするように触れそうになって慌てて手を引っ込める。
「トキ、昨日はすまなかった。昨日の俺は少々冷静ではなかった」
「謝んなよ。後出しの俺が情けなく見えるだろ。俺も、悪かった」
ふ、とどちらともなく笑い出す。木枯らしが吹き抜けていく寒空に、あたたかな笑い声が二つ響き渡る。
安心したのかぐう、とトキの腹の虫が鳴いた。こんな時に恥ずかしいと思いつつも、食事を取ろうとヒヨクを誘って歩き出す。
「冷静じゃなかったって、俺と別れてた間に何かあったのか?」
昨日はトキも冷静ではなかった。理由はツキヒからあの番候補戦の知らない結末を聞かされたからで、それは昨晩ヒヨクに伝えた。
ヒヨクの言う冷静ではなかったというのは『喧嘩になる前から』という意味だと汲み取ったのだが、訊ねてもヒヨクは黙ったまま何も言わない。急に腹でも痛くなったのかと隣に視線をやると、ヒヨクは外套の合わせを掴んで鼻の辺りまで引き上げて難しい顔をしていた。
「お主と『あめふり屋』の前で別れた後、外套の行方が気になったので裏手に回って様子を探っておった」
それってつまり。
「盗み聞きしてたのか!?」
「人聞きの悪い事を申すな。偵察だ」
「ま、いいけど。それで?」
「それで……」
三歩進んで言い淀み、五歩進んで懊悩する。一体何が引っ掛かって説明に詰まるのか分からないが傍から見ている分には面白い。ネズミやウサギのような小動物がちょこまか動いてはぴたりと一時停止する動きに似ている。
それはそれとしてヒヨクの顔立ちはどこか猫っぽさを感じる。ツンと持ち上がった眦が特にそう見えるのだろう。性格の方も塀を飛び越えようとしていたお転婆ぶりから始まったおかげで気が強いじゃじゃ馬のような印象だったが、この数日でそれは少しずつ違うものに変わり始めている。
そう、例えるなら子犬だ。警戒心の強い子犬で周りの大型犬に負けないよう目いっぱい胸を張ってお澄まししているような、そんな雰囲気がヒヨクにはある。子犬だからまだ世間を知らないし、ある一面はとても純粋で無垢だ。大柄なトキの体を触れもせず倒してしまうくせに、力の弱い老人に騙されてついて行ってしまいそうな危うさがある。
いくら王族だからと言ってもこんなにも純真に育つものだろうか。寧ろ王族こそ権謀術数に長けた家臣を従え宮廷でふんぞり返っている印象だが。
そんな事を考えながらじっとヒヨクを見つめていると、視線に気付いたヒヨクが「どうした?」と小首を傾げる。その仕草の愛らしさに思わず「可愛い」と呟いてしまいそうになった。
「俺の事よりヒヨクはどうなんだって」
「俺は、だから、店の裏手からお主らの会話を聞いてそれで……お主がツキヒを助けたろう。何というか、こう、親密げに」
「助けた……? ああ、お茶の事か」
「そういう事だ」
「……へ? 何がそういう事になんの?」
「察しろ」
「む、無理無理! 何も分かんないって!」
「れ、冷静ではなかったのだ!! お主とてそうであろう!!」
「だからその理由だろー?」
しかしこれ以上答えるつもりはないらしく、ヒヨクは素早く歩いていってしまう。その頬はまだ寒いのか真っ赤だ。そのうち何か食べ物の匂いがしてくるとそっちに釣られるようにしてトキを置いて行ってしまった。
「何だよー。俺は話したのにさぁ」
昨日のトキが躍起になっていたのは嫉妬が原因だったとは思われていないようだがそれはそれで何だか虚しい。知って欲しいような知られたくないような複雑な気分でヒヨクの後を追う。
なんて聞けるはずもなく、ツキヒの力にはなれそうにないと伝えることしか出来なかった。外套を買い取ってもらいツキヒに別れを告げて『あめふり屋』を後にする。
ヒヨクはどこに向かったろうか。宿をまだ取っていないので落ち合うとしたら質屋か。
都会に出てきてどうやら自分は方向音痴らしい事を知った。似たような建物が続くせいで質屋の方角を見失い、再び道行く人に訊ねながらどうにか質屋へと辿り着く。
「戻ったか、トキ」
質屋の主人と雑談に興じていたらしいヒヨクはトキを見つけると片手を上げて出迎えてくれた。合流出来たのは幸いだが、『あめふり屋』で聞かされた事が頭の中をぐるぐる回って受け答えがぎこちなくなってしまう。気まずい気持ちを一旦飲み込んで、質草の方はどうなったかを訊ねる。
「どれもそれなりの値が付くそうだ。小刀と縄は手元に残したいが構わぬな?」
特に小刀は旅の必需品なので了承しようとしたがすぐにヒヨクが妙な物を胸に抱いている事に気付く。
「なぁそれ、ちょっと貸してみろ」
「あっ」
人の頭ほどはありそうな壺をヒヨクから取り上げると、玩具を取られたような反応を見せる。ヒヨクの手が届かないように高い所に持ち上げて、その壺のずっしりとした重さにトキはがっくりとした。
「あの籠が重かった原因これじゃねぇか!! 何が入ってんだよこれ!」
「あ、開けるなら慎重にせよ!」
壺を台に置き、蓋を覆った布の紐を外す。蓋を開けると中からぷん、と濃厚な甘い匂いが上がってきて思わず顔を引っ込めた。
「何だ、この甘い匂い……?」
「……蜂蜜だ」
蜂蜜。
「なぁオヤジ、こいつはいくらで買い取ってくれるんだ?」
「中身はそっちの坊ちゃんが手ぇ突っ込んでねぇ保証が無いからなぁ。外側の壺なら銅貨二枚」
二本の指を顔の前に立てる店主に「売った」とトキが即答するとヒヨクが慌てて「ならぬ!」と割って入る。
「それは俺の一番大事な物だ。それがなければ俺は生きた心地がしなくなる。それに蜂蜜は高級品なのだぞ!」
「大袈裟だろ。実家に帰ればいくらでも食えるんだからこんなクソ重たいもんいらねぇよ飴で我慢しろ!」
「ならぬならぬ!!」
ヒヨクはまるで子供のように抵抗して壺を取り返そうとしたがトキが頭上に持ち上げてしまうとヒヨクの背では届かなくなってしまう。店主が迷惑そうな顔で「外でやってくれ」と尤もな事を訴えたところでヒヨクが大人しくなったのですかさず店主に壺を預けた。
「あっ」とヒヨクが切なげな声を上げるので店主は何度もトキとヒヨクの間で視線をうろうろさせたがトキがにべもなくヒヨクの希望を却下した。人が番の事でショックを受けている間に、自分は質屋でこそこそ旅の遅れの原因である蜂蜜壺を取り返していたと思うとつい八つ当たりしてしまう。壺に関しては道理がトキにある事も助けて自分の方がずっと正しいと思う気持ちが態度にも出た。
「お前のそれ、ただのわがままだからな」
「わがままなぞ、他が軽くなったのだから、壺くらい……」
「坊ちゃんや、旅にゃあの壺はちと重たすぎるとおっさんも思うよ。ここはそっちの兄さんの言う通りにして、家出に満足したら実家で溺れるくらいの蜂蜜を買ってもらいな」
理屈は分かっているようで店主に諭すように言われるとヒヨクは意見を引っ込めて漸く了承した。
質屋を出ると今夜の宿を探して歩き始めたが空気はこの三日の間で一番最悪だった。黙っていればいいのにむすっとして隣を歩くヒヨクから隠す気のない不機嫌な気配が漂ってきてつい突っかかってしまう。
「そんなに蜂蜜が好きかよ」
「あれさえあれば生きていけると思うくらいにはな」
ヒヨクは子供のようにふくれっ面であてつけがましく言葉を返す。それに対してトキは皮肉るように言った。
「さっすが王子様、贅沢品で体が出来ていらっしゃる」
はん、と鼻で笑うと思いがけずヒヨクの少し心配そうな視線が下から見上げてきた。
「何なのだトキ、お主は質屋に戻って来た時から様子がおかしいぞ?」
おかしい? 誰のせいだと思ってる。
ツキヒに聞いた番の話が頭を巡る。
「そんな事ねぇよ。あんただって蜂蜜一つで子供みたいに駄々こねるなんてそれこそおかしいだろ」
「なっ、だから質屋に預けたではないか!」
「こそこそ買い戻しそうだけどな」
「そのような事せぬわ!」
せっかくヒヨクが一歩引いてくれたのに、ツキヒに聞いた事を思い出すとムカムカしてきてつい態度がきつくなってしまう。
どっちの王子と番うのかだって? どっちも、に決まってる。だってヒヨクとヒオは二人で一人の王子を演じてきたのだから、ツキヒが王子の番になるというならヒヨクの番になるのと同義だ。
どうしてその事をトキに黙っていたのか。『相』の試験で選ばれなかったトキへの配慮だろうか。馬鹿馬鹿しい。番う相手が決まっているのにトキに体を触らせた事もまた腹が立った。
結局、今日の宿に着くまで険悪な空気のままだった。
宿に着くと部屋を二つ取ろうとしたが、生憎一つしか空いていないと言われてまた睨み合う。
「お主は宿で休め。今回は俺のせいで一日旅程が遅れたのだから外で休む」
「馬鹿言ってんなよ」
どんなにムカついていても世間知らずの王子をたった一人で外に放り出せるはずもなく、宿の代金を二人分支払って嫌がるヒヨクを無理矢理部屋へ連れて行く。
「放せ無礼者!」
「これくらいの事で無礼かよ! そんなんで王子扱いすんなとか無理があんだろ」
寝台が二つあったのは不幸中の幸いだ。これ以上無意味な口論が起きないよう、衝立を引っ張って来て間に置いて寝台に寝転んだ。
一晩経てばお互い頭も冷えるだろう。怒りのせいで空腹も感じない。蜂蜜一つでどうしてこんな事にと思ったが、蜂蜜が本当の原因ではない事は分かっていた。
「……アメフリの娘がそんなに好きか」
短い沈黙を破り、ヒヨクが非難するような口調で言う。
アメフリが誰の事か分からず反応が一拍遅れた。
「はぁ? 何の話だよ急に」
アメフリとはツキヒの姓の事のようだ。『あめふり屋』という屋号そのままの名でなければトキは分からなかっただろう。それくらいツキヒに対してトキは関心を持っていなかった証拠だ。だがヒヨクは、ツキヒの事をちゃんと知っているらしい。
「良い子だったよツキヒは」
「なっ」
「ちょっと臆病過ぎるけど気立ての良い優しそうな子じゃねぇか。番になるアルファは幸せもんだな。番になれるなら、だけど」
嫌な言い方だと思っても止まらない。だって悔しい。自分とならヒヨクと番になれるのに、オメガ同士で番のフリをしていく事をヒヨクは決めてしまったかも知れないのだ。
「何だと……? トキこそ、一体何の話をしておるのだ」
衝立など何の意味もなく、とぼけるフリをするヒヨクに声を張ってまで食って掛かる。
「あんた言ったよな。あの候補戦では番を選ばないって」
少し間があいて困惑したような声が返ってくる。
「そうだ。実際に番は決まっておらぬ」
「でもツキヒは王子の番に選ばれたって言ってたんだよ!」
「何だと……?」
その声は衝立越しのこもった声ではなかった。外套を着たままのヒヨクが衝立に手をつき、寝台に寝転がるトキを見下ろしている。
ヒヨクの顔から怒りは消えていた。驚きさえもなく、まるで魂が抜けてしまったかのように茫然としてしまっている。何故かその表情を見ているとこちらが悪い事をしてしまったかのような気にさせられて、トキは寝返りを打って背を向けた。
「アメフリの娘がそう言っていたのか?」
「そうだ。ツキヒも困ってるみたいだった。事情は、よく分かんなかったけど」
それ以上ヒヨクはトキに何も訊かなかった。ふと気配がしないと思うと衝立の傍から消えており、そっと覗き込むと寝台に腰かけて窓の景色を見つめていた。
ヒヨクの反応からして彼がこの事を知らされていなかったのは間違いない。自分はもしかして余計な事を言ってしまったのだろうか。でも、そんな事トキに分かるはずがない。トキだって騙されたと思ったのだ。
急に矛を収めてしまったヒヨクのせいで不完全燃焼のもやもやを抱えたまま目を閉じた。眠って起きれば嫌な事は忘れられる。でも最近の自分はそれが出来ない日がずっと続いている。
こんなに自分が怒りを感じている原因が、そもそも眠っても忘れられない最たる例だった。
次に目を開けた時には早朝だった。
昇ったばかりの朝日が窓から差し込んで、その眩しさにトキの瞼が震える。目を開けて短い時間自分の居る場所を思い出そうとする。
ここは都の東にある烏の邑で、適当にさまよって見つけた宿の部屋だ。どうして適当だったのかというと、ヒヨクと喧嘩していたからで――。
半身を起こして寝台の右側にあるトキが持ってきた衝立を見遣る。まだ眠っているのだろうか、部屋の中はとても静かだ。しん、とした静けさの中に薪ストーブの火が消えてしまった早朝の冷たい空気が混じり合って俄かに目が冴える。
喧嘩の元になった台の上に放りっぱなしの籠を見つけて昨日の自分の醜態を思い出してしまう。
一晩寝て怒りは引いていたが、その分自分の態度の酷さが浮き彫りになった。
やり過ぎだったと思う。荷を売るにしてももっとやり方というものがあった。自分のむしゃくしゃをぶつけるようにして正論を振りかざすのは褒められた行為ではない。
謝ろう。一晩眠れば嫌な事は全部忘れるのがトキの長所だ。今日こそそれを実行する。
布団から出るとひんやりした空気が肌を撫でていき思わず身震いする。衣桁に適当に引っかけていたせいで皺になってしまった外套を羽織り、衝立の向こうを覗く。
「ヒヨク……?」
しかしそこにはもぬけのからになった冷えた寝台があるだけだった。
台の上にヒヨクの荷物が残っていた。路銀も置きっぱなしだったのでひとまず財嚢だけ持って宿を飛び出す。
まさか都に帰ってしまった訳ではないだろうと思いながらも焦りは募りじわじわと頭が混乱していく。
「ヒヨクー!!」
人通りが疎らの早朝に、トキの声が響く。応えるものは無い。
探すと言っても当てなど無かった。土地勘の無い邑では辛うじて昨日訪れた質屋と『あめふり屋』の場所が分かるくらいだ。
明確な理由はなかった。何となくそっちに行ったかも知れないという曖昧な理由で『あめふり屋』に向かって走り出す。
『あめふり屋』は邑の中でもかなり大きな店のようで大通りを進むと方向を示す看板が建てられていた。それに従い息が切れるほど走って、まだ開店前の『あめふり屋』の前までやってくる。
「ヒヨク」
はぁ、はぁ、と肩で呼吸を繰り返し、額を伝ってきた汗を手首で拭う。
「トキ?」
昨日と変わらない姿でこちらを振り返ったヒヨクはポカンとした表情だった。
「どうした? 顔色が悪いぞ」
「……あんたが黙っていなくなるから」
トキが答えるとヒヨクは納得した顔になる。思い詰めてここまで来た訳ではなさそうだ。
「そうか。矢立を売ってしまったので書き置きを残せず――」
気付いたら抱きしめていた。ヒヨクの匂いがして、やっと安心する。
荷物も何もかも宿に残っていたので勝手に都に戻った訳でないと明らかでも、もしかしたらどこかで誰かに攫われでもしたかと思うといても立ってもいられなかった。そうでなくとも昨晩は自分の言葉で酷く傷つけてしまったようだった。衝立の前で茫然と立ち尽くしたヒヨクの表情は尋常ではなかった。
「トキ?」
戸惑うヒヨクを無視して、もう少しと思って腕に力を籠める。
好きだ。こんな時なのに思う。
やっぱり自分はヒヨクが好きだ。
「矢立、買い戻そう」
「そ、そうか? お主が良いなら、俺は嬉しいが」
腕の中でおろおろとヒヨクが戸惑っている。何で抱きしめられているのだろうと思いながら、それでも振りほどいてはいけないのだろうとされるがままになっている。それらが手に取るように分かり、彼のいじらしさにたまらなくなる。
もっとこうしていたいという思いを堪え、ヒヨクの肩を掴んで体を離す。
「あんた、思い付いたら無茶するところあるから、心配した」
一体いつから外に出ていたのだろう、ヒヨクの鼻の頭と頬骨の辺りがほんのり寒そうに染まっている。つい妹たちにするように触れそうになって慌てて手を引っ込める。
「トキ、昨日はすまなかった。昨日の俺は少々冷静ではなかった」
「謝んなよ。後出しの俺が情けなく見えるだろ。俺も、悪かった」
ふ、とどちらともなく笑い出す。木枯らしが吹き抜けていく寒空に、あたたかな笑い声が二つ響き渡る。
安心したのかぐう、とトキの腹の虫が鳴いた。こんな時に恥ずかしいと思いつつも、食事を取ろうとヒヨクを誘って歩き出す。
「冷静じゃなかったって、俺と別れてた間に何かあったのか?」
昨日はトキも冷静ではなかった。理由はツキヒからあの番候補戦の知らない結末を聞かされたからで、それは昨晩ヒヨクに伝えた。
ヒヨクの言う冷静ではなかったというのは『喧嘩になる前から』という意味だと汲み取ったのだが、訊ねてもヒヨクは黙ったまま何も言わない。急に腹でも痛くなったのかと隣に視線をやると、ヒヨクは外套の合わせを掴んで鼻の辺りまで引き上げて難しい顔をしていた。
「お主と『あめふり屋』の前で別れた後、外套の行方が気になったので裏手に回って様子を探っておった」
それってつまり。
「盗み聞きしてたのか!?」
「人聞きの悪い事を申すな。偵察だ」
「ま、いいけど。それで?」
「それで……」
三歩進んで言い淀み、五歩進んで懊悩する。一体何が引っ掛かって説明に詰まるのか分からないが傍から見ている分には面白い。ネズミやウサギのような小動物がちょこまか動いてはぴたりと一時停止する動きに似ている。
それはそれとしてヒヨクの顔立ちはどこか猫っぽさを感じる。ツンと持ち上がった眦が特にそう見えるのだろう。性格の方も塀を飛び越えようとしていたお転婆ぶりから始まったおかげで気が強いじゃじゃ馬のような印象だったが、この数日でそれは少しずつ違うものに変わり始めている。
そう、例えるなら子犬だ。警戒心の強い子犬で周りの大型犬に負けないよう目いっぱい胸を張ってお澄まししているような、そんな雰囲気がヒヨクにはある。子犬だからまだ世間を知らないし、ある一面はとても純粋で無垢だ。大柄なトキの体を触れもせず倒してしまうくせに、力の弱い老人に騙されてついて行ってしまいそうな危うさがある。
いくら王族だからと言ってもこんなにも純真に育つものだろうか。寧ろ王族こそ権謀術数に長けた家臣を従え宮廷でふんぞり返っている印象だが。
そんな事を考えながらじっとヒヨクを見つめていると、視線に気付いたヒヨクが「どうした?」と小首を傾げる。その仕草の愛らしさに思わず「可愛い」と呟いてしまいそうになった。
「俺の事よりヒヨクはどうなんだって」
「俺は、だから、店の裏手からお主らの会話を聞いてそれで……お主がツキヒを助けたろう。何というか、こう、親密げに」
「助けた……? ああ、お茶の事か」
「そういう事だ」
「……へ? 何がそういう事になんの?」
「察しろ」
「む、無理無理! 何も分かんないって!」
「れ、冷静ではなかったのだ!! お主とてそうであろう!!」
「だからその理由だろー?」
しかしこれ以上答えるつもりはないらしく、ヒヨクは素早く歩いていってしまう。その頬はまだ寒いのか真っ赤だ。そのうち何か食べ物の匂いがしてくるとそっちに釣られるようにしてトキを置いて行ってしまった。
「何だよー。俺は話したのにさぁ」
昨日のトキが躍起になっていたのは嫉妬が原因だったとは思われていないようだがそれはそれで何だか虚しい。知って欲しいような知られたくないような複雑な気分でヒヨクの後を追う。
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