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一章
8疑い
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「単刀直入に聞くわ。あなた、バースを偽ってないわよね?」
焦りで冷や汗が吹き出してくる。『義』の試験で戦いに一切恐れを見せなかったせいで怪しまれたのだ。そうでなくとも誰よりも背が高く幅も厚みもあるトキはオメガには見えない。
いや待て。まだ疑われてるだけだ。薬もちゃんと飲んでるし、どうにか誤魔化せばいい。
嘘を吐く時の、嫌な感覚が胸の中いっぱいに広がっている。これから自分は嘘を吐くんだという後ろめたい気分のせいで視線が勝手に下がっていく。
何か、言わなくては。
「お、俺は――」
「あーやっと見つけたよトキ。夕飯に行こうって話してたのにどこ探しても見つからないからさぁ」
「シ、カ……」
ミスイの鋭い眼差しがトキからシカに移っていく。「あなたも」と声を高くして、ミスイは腰に手を当て説教の構えだ。
「試験の最中、全く真面目でいらっしゃらないわよね?」
どういう訳かミスイはシカを相手には敬語を使うらしい。彼女の中で勝手に格付けされているようで何となく腹が立つ。
「いや~、あはは。そんな風に見えます?」
「ええ、私の目にはそう見えましたの。花瓶選び、花選び、どちらもいい加減で形も色彩も贈る相手を思いやっていないのは一目瞭然。『義』の試験では構えもしないで、相手の方が降参されるのをただ待ってらっしゃる風でした。だというのに何故か候補者から降ろされずにいる」
彼女の指摘はとても正しい。何故ならシカは彼の仕えている主の身代わりに参加させられているからだ。シカに候補者として残っていく意思はない。しかし、ミスイが指摘するのを聞いて初めて、トキもシカに疑問を持った。主の代理で仕方なく参加したのなら『義』の試験で相手より先に降参すれば、彼も候補者から外れる大義名分を得られたはずなのにシカはそうしなかった。
「あなたたち二人ともオメガにしては体つきも良すぎますし、手合わせをさせられても平気な顔をしておられますし、本当にオメガなのか甚だ怪しいと思います」
ミスイの頬は怒りで真っ赤だ。それだけこの候補戦にかける思いが強いという事なのか、それともいかにも平民といったトキとやる気のないシカが残り続けているのが気に食わないだけなのか。トキでもミスイが冷静さを欠いてしまっているのが分かった。そういう隙をシカという男は見逃さない。
「やれやれ。ご自身は侍女を連れてのご参加だったというのに、それを棚に上げて一人孤独に戦っている他の候補者のバースを疑うとは」
一人孤独とはトキの事か。孤独だったのかトキは。
「彼の参加は王宮が認めたんですよ。明日の『礼』の試験、既にあなたは相応しくないかも知れませんね、ミ族のお姫様」
なまじ口がよく回るだけに、シカは反論の隙を与えない。基本的には責めたり責められたりするのもオメガは不得手なので、シカにきつく詰められるとミスイはたちまち勢いをなくした。
「あ、あの子たちは、ただのお目付け役で……」
「そのお目付け役に、事前に試験の内容を探らせたりしてませんか?」
「お、おいおい、さすがに言いすぎ」
「そんな事する訳っ……!」
じわ、とミスイの目に涙が滲む。
「もう、知りませんわ!!」
どこまでも強気なミスイは言い負かされたところで涙を見せまいと手の甲で目元を拭い、捨て台詞を吐いて自分の部屋に戻っていってしまった。
「あんたなぁ……。女の子相手にもうちょっとこう、なぁ?」
「おっと俺が責められるのかい? 疑われた君を助けたのに」
「それは、助かったよ」
相手が少女でなくともオメガというだけでトキは強く出られなかった。今日の演武台での出来事があって、トキの中でアルファとオメガには決定的な違いがあると実感する事になった。トキが少しでも怒りを見せればミスイは引き下がったろう。でもそれではまるで弱い者いじめみたいじゃないか。
それに、俺は本当にオメガじゃない。
既に嘘を吐いてこの試験に潜り込んでいるのに、改めて面と向かって他人に嘘を吐き直さなければならないと思うと気後れしてしまった。今更罪を重ねるのが嫌だと卑怯な事を思ってしまったのだ。
――誰かの『何か』を無駄にしちまうって事なんだ。
自分で言った言葉を思い返して馬鹿らしくなる。とんだ偽善もあったものだ。そもそも番のオメガを決める候補戦にトキが参加している事自体が不正でしかないというのに。
「あ、あの、ミスイちゃん、み、ミスイさんを見ませんでしたか?」
ミスイが去ったすぐあとで、小柄な人影が二人の前にわたわたと転がり出て来た。
「おや、これは『烏』の姫様。ミスイさんならご自身の部屋に戻られたようですけど?」
「あ、ありがとうございます!」
三階の角の部屋からバタバタと飛び出してきた四人のうち最後の一人の候補者ツキヒ。彼女は月の邑『烏』の出身で、シカが一番最初に注目の候補者としてミスイと一緒に名前を挙げていた人物だ。シカの読みは見事に当たっており、ミスイもツキヒも候補に残っている訳だが。
――こういうものは出来レースって相場が決まってるんだ。
じゃあ『候補戦』って何のためにやってんだよ。
シカの読みが当たるという事は即ち『出来レース』がより現実味を帯びていく事を示している。初めから番にする相手が決まっているのなら何も国中から候補を集めて競わせるなんて事をする必要はないのに。
「一体どんな目的があって候補戦なんてやってるんだろう? って、顔してるねトキ」
「うおっ気持ち悪! 何で分かるんだよ!」
「君は分かりやすいからねぇ。ま、意味はある。主に主催する王族と開催地になるこの都にとってね」
食堂に移動しがてらシカはいつものように説明してくれる。
「まずは都の活性化だね。候補戦に参加するオメガのほとんどは各邑の名士の子息だ。護衛をつけて都に入り宿を取って都に金を落とすだろ? それに番が決まるって事はそのまま王子のご成婚になるんだからみんな貢物を持って来る。貢物そのものの価値というよりは、それぞれ自分たちの強みを貢物を使ってアピールするのさ。うちの邑じゃあこんなものが採れますよ、こんなものを作りますよ、こんなものが交易で流れてきますよってな具合に。そんで王族とお近づきになって邑は王族の支援を得る。支援の内容は色々だね。単純に金銭が動く事もあれば、王宮官僚への推薦とか」
『義』の試験の間は大人しかったシカは水を得た魚のようによく喋った。田舎の木こりには話が難しく、「なるほど分からん」と右から左へ聞き流していく。
「ま、要するにだ。番と一口に言ってもその裏には色んな思惑があるって事さ。王子の意思で自由に好きな相手を選んで番うんなら、トキが疑問に思った通り候補者同士で争う必要はないし、お偉いさんの中の誰か一人の思惑だけで番が決まるんだとしてもやっぱり候補戦は必要ない。政治が王の言葉だけで動くなら簡単なんだけどねー」
トキの頭では候補戦を行う事に意味が無い訳ではない、という事しか分からなかった。とにかくまだトキにも活路はあると思って良いのだろう。不正をしているのにと自分で自分を責める心はあるが、寧ろだからこそここまで来たなら番の座を獲得しなくては落ちていった候補者たちが浮かばれない。最後まで嘘を吐き通してトキは故郷を救い、王族には番の座を一年で返してしまおう。それがトキに出来る最も誠実なやり方だ。やる事は最初と何も変わらない。
となると、気になるのは明日の『礼』の試験だが。
「なぁシカ、明日の『礼』ってどんな意味があるんだ?」
焦りで冷や汗が吹き出してくる。『義』の試験で戦いに一切恐れを見せなかったせいで怪しまれたのだ。そうでなくとも誰よりも背が高く幅も厚みもあるトキはオメガには見えない。
いや待て。まだ疑われてるだけだ。薬もちゃんと飲んでるし、どうにか誤魔化せばいい。
嘘を吐く時の、嫌な感覚が胸の中いっぱいに広がっている。これから自分は嘘を吐くんだという後ろめたい気分のせいで視線が勝手に下がっていく。
何か、言わなくては。
「お、俺は――」
「あーやっと見つけたよトキ。夕飯に行こうって話してたのにどこ探しても見つからないからさぁ」
「シ、カ……」
ミスイの鋭い眼差しがトキからシカに移っていく。「あなたも」と声を高くして、ミスイは腰に手を当て説教の構えだ。
「試験の最中、全く真面目でいらっしゃらないわよね?」
どういう訳かミスイはシカを相手には敬語を使うらしい。彼女の中で勝手に格付けされているようで何となく腹が立つ。
「いや~、あはは。そんな風に見えます?」
「ええ、私の目にはそう見えましたの。花瓶選び、花選び、どちらもいい加減で形も色彩も贈る相手を思いやっていないのは一目瞭然。『義』の試験では構えもしないで、相手の方が降参されるのをただ待ってらっしゃる風でした。だというのに何故か候補者から降ろされずにいる」
彼女の指摘はとても正しい。何故ならシカは彼の仕えている主の身代わりに参加させられているからだ。シカに候補者として残っていく意思はない。しかし、ミスイが指摘するのを聞いて初めて、トキもシカに疑問を持った。主の代理で仕方なく参加したのなら『義』の試験で相手より先に降参すれば、彼も候補者から外れる大義名分を得られたはずなのにシカはそうしなかった。
「あなたたち二人ともオメガにしては体つきも良すぎますし、手合わせをさせられても平気な顔をしておられますし、本当にオメガなのか甚だ怪しいと思います」
ミスイの頬は怒りで真っ赤だ。それだけこの候補戦にかける思いが強いという事なのか、それともいかにも平民といったトキとやる気のないシカが残り続けているのが気に食わないだけなのか。トキでもミスイが冷静さを欠いてしまっているのが分かった。そういう隙をシカという男は見逃さない。
「やれやれ。ご自身は侍女を連れてのご参加だったというのに、それを棚に上げて一人孤独に戦っている他の候補者のバースを疑うとは」
一人孤独とはトキの事か。孤独だったのかトキは。
「彼の参加は王宮が認めたんですよ。明日の『礼』の試験、既にあなたは相応しくないかも知れませんね、ミ族のお姫様」
なまじ口がよく回るだけに、シカは反論の隙を与えない。基本的には責めたり責められたりするのもオメガは不得手なので、シカにきつく詰められるとミスイはたちまち勢いをなくした。
「あ、あの子たちは、ただのお目付け役で……」
「そのお目付け役に、事前に試験の内容を探らせたりしてませんか?」
「お、おいおい、さすがに言いすぎ」
「そんな事する訳っ……!」
じわ、とミスイの目に涙が滲む。
「もう、知りませんわ!!」
どこまでも強気なミスイは言い負かされたところで涙を見せまいと手の甲で目元を拭い、捨て台詞を吐いて自分の部屋に戻っていってしまった。
「あんたなぁ……。女の子相手にもうちょっとこう、なぁ?」
「おっと俺が責められるのかい? 疑われた君を助けたのに」
「それは、助かったよ」
相手が少女でなくともオメガというだけでトキは強く出られなかった。今日の演武台での出来事があって、トキの中でアルファとオメガには決定的な違いがあると実感する事になった。トキが少しでも怒りを見せればミスイは引き下がったろう。でもそれではまるで弱い者いじめみたいじゃないか。
それに、俺は本当にオメガじゃない。
既に嘘を吐いてこの試験に潜り込んでいるのに、改めて面と向かって他人に嘘を吐き直さなければならないと思うと気後れしてしまった。今更罪を重ねるのが嫌だと卑怯な事を思ってしまったのだ。
――誰かの『何か』を無駄にしちまうって事なんだ。
自分で言った言葉を思い返して馬鹿らしくなる。とんだ偽善もあったものだ。そもそも番のオメガを決める候補戦にトキが参加している事自体が不正でしかないというのに。
「あ、あの、ミスイちゃん、み、ミスイさんを見ませんでしたか?」
ミスイが去ったすぐあとで、小柄な人影が二人の前にわたわたと転がり出て来た。
「おや、これは『烏』の姫様。ミスイさんならご自身の部屋に戻られたようですけど?」
「あ、ありがとうございます!」
三階の角の部屋からバタバタと飛び出してきた四人のうち最後の一人の候補者ツキヒ。彼女は月の邑『烏』の出身で、シカが一番最初に注目の候補者としてミスイと一緒に名前を挙げていた人物だ。シカの読みは見事に当たっており、ミスイもツキヒも候補に残っている訳だが。
――こういうものは出来レースって相場が決まってるんだ。
じゃあ『候補戦』って何のためにやってんだよ。
シカの読みが当たるという事は即ち『出来レース』がより現実味を帯びていく事を示している。初めから番にする相手が決まっているのなら何も国中から候補を集めて競わせるなんて事をする必要はないのに。
「一体どんな目的があって候補戦なんてやってるんだろう? って、顔してるねトキ」
「うおっ気持ち悪! 何で分かるんだよ!」
「君は分かりやすいからねぇ。ま、意味はある。主に主催する王族と開催地になるこの都にとってね」
食堂に移動しがてらシカはいつものように説明してくれる。
「まずは都の活性化だね。候補戦に参加するオメガのほとんどは各邑の名士の子息だ。護衛をつけて都に入り宿を取って都に金を落とすだろ? それに番が決まるって事はそのまま王子のご成婚になるんだからみんな貢物を持って来る。貢物そのものの価値というよりは、それぞれ自分たちの強みを貢物を使ってアピールするのさ。うちの邑じゃあこんなものが採れますよ、こんなものを作りますよ、こんなものが交易で流れてきますよってな具合に。そんで王族とお近づきになって邑は王族の支援を得る。支援の内容は色々だね。単純に金銭が動く事もあれば、王宮官僚への推薦とか」
『義』の試験の間は大人しかったシカは水を得た魚のようによく喋った。田舎の木こりには話が難しく、「なるほど分からん」と右から左へ聞き流していく。
「ま、要するにだ。番と一口に言ってもその裏には色んな思惑があるって事さ。王子の意思で自由に好きな相手を選んで番うんなら、トキが疑問に思った通り候補者同士で争う必要はないし、お偉いさんの中の誰か一人の思惑だけで番が決まるんだとしてもやっぱり候補戦は必要ない。政治が王の言葉だけで動くなら簡単なんだけどねー」
トキの頭では候補戦を行う事に意味が無い訳ではない、という事しか分からなかった。とにかくまだトキにも活路はあると思って良いのだろう。不正をしているのにと自分で自分を責める心はあるが、寧ろだからこそここまで来たなら番の座を獲得しなくては落ちていった候補者たちが浮かばれない。最後まで嘘を吐き通してトキは故郷を救い、王族には番の座を一年で返してしまおう。それがトキに出来る最も誠実なやり方だ。やる事は最初と何も変わらない。
となると、気になるのは明日の『礼』の試験だが。
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