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宮廷編
14決意
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「玲馨! 玲馨はどこだ!」
宦官の宿舎に忙しなく現れたかと思えば大声で自分を呼ぶ声に、玲馨はもはや溜息を漏らすような事はない。
戊陽は今年で十九になるが出会ったあの頃と中身はさほど変わっていない。外見は逞しく成長したばかりか李将軍の厳しい稽古にも弱音を吐かずによく耐えているので、均整の取れた美しく力強い肉体を手に入れている。下級の武官などでは戊陽の相手は務まらないというから、花を持たせられているのでなければ剣の腕も相当なものなのだろう。
「殿下、今は教練房にて子供たちに字を学ばせているところですから、どうぞお静かに」
宿舎の入り口で待っていた戊陽のもとへ玲馨がやってくると、戊陽はパッと笑顔になる。
「む、そうだったな。いやな? 一刻も早くこれを読んだお前の意見が聞きたくて焦ってしまったのだ」
「これは……」
混じりけのないさらりとした品質のよい紙には走り書きのようにしてとある法案の事が長々と書かれてある。こんな高価な紙をただの書き付けに使うなんてとくどくど言ってやりたいが、他の宦官の目が気になった。
「話は殿下のお部屋で致しましょう」
「ああ、では紅桃宮へ参ろう。今年の桃もよく生っているからお前も食べて行くと良い」
桃の馥郁たる香りが風に乗って鼻を擽ると、今年もこの季節が来たのだと実感する。たわわに実った桃は賢妃の希望で賢妃宮から移植してきた物だ。今もしっかり手入れがされているので、毎年夏頃に薄紅の瑞々しい実をつける。昔、せっかく育った桃の木の行方を気にしていた事があるので、後宮に残されずに済んで何となくほっとしたのを覚えている。
戊陽が十五になった年は彼にとって辛い不幸事が続いた年であった。
今より少し早い季節の四年前、当時の皇帝黄雷が病で永眠すると、後を追うようにして一月も経たないうちに燕太傅も老衰で亡くなった。
戊陽は気丈に振る舞っていたが、暫くの間は食事が喉を通らずみるみる窶れていった。しかし時は待ってはくれないもので、兄の即位式が終わるとすぐに賢妃と戊陽の母子は居所を後宮の外へと移す事になる。
それがこの紅桃宮だ。城には皇族が住まうための宮殿がいくつかあるが、賢妃はかねてから「桃」の名がつけられた紅桃宮を望んでいた。
ふと玲馨が何かを探すように首を巡らせると「四郎なら暇を取らせた。あれも体は人だからな」と先んじて答えをくれる。あんまりな言い種だが玲馨も反論が浮かばない。これから話し合おうとしている事は四郎も知らない事なので、丁度よいと言えばそうだろう。
桃の匂いがいっそう強く香る四阿へと来ると、宮女がすぐに茶と菓子を持ってくる。大理石の台に置かれた陶器の中身を見て玲馨は目を瞬かせた。
「湯円ですか?」
湯円とはもち米を丸めて中に餡を入れて茹でた小吃──一品料理の事──だ。本来は冬頃に食べる季節料理で少なくとも玲馨は夏に食べた事はなかった。
「母上が桃を使った菓子を考案するのに夢中なんだ」
これのどこに桃が? と思っていると、戊陽は湯円の入った器の隣にあった小皿から、淡く色付いたとろりとした液体と固体の中間のような物を湯匙で掬って湯円にたっぷりとかける。そのまま別の湯匙で一つ湯円を掬ってから「ほら」と玲馨の口の前に差し出した。
「じ、自分で食べますから」
「……」
「……はぁ」
思わず右見左見して近くに人気が無いのを確認してから意を決して口を開ける。
戊陽があまりにもじ、と目を見つめるので堪えかねて目を閉じた。戊陽が不満そうに鼻を鳴らすのが聞こえたが、目を開けろとは言われず口の中に甘い香りと味のするものが入れられる。
「これは……桃、のような味がします」
湯円は本来中に煮た小豆などを入れるのだが、この湯円は中には何も入っていない。その代わりに先程戊陽がかけた物から桃の味がした。
「砂糖と一緒に煮詰めて作った桃の餡だそうだ。桃を直接中に入れるよりこちらの方がずっと美味しいのだと仰っていた」
「と言うより実際にこちらの方が美味かった」と戊陽は小声で呟く。
「賢妃様は料理上手でいらっしゃいますから」
「そうだな。よく宮女と混ざって竈で煮炊きをしておられる。息の詰まる後宮で無聊をお慰めする数少ない息抜きだったのだろう」
賢妃は他の妃たちと比べると質素で気弱な感じのする人だ。物腰も柔らかく、そして飾り気がない。黄雷太上皇帝もおっとりとした人だったので、その二人から生まれた戊陽はどちらにも似ず奔放な性格をしている。どうやら祖父に似たらしいが戊陽が二歳の頃に亡くなっているため生憎本人を知らない。その頃はまだ玲馨が明杰だった歳だ。
「それを食べたら、これだ。ちゃんと読んで忌憚のない意見をくれ」
きっと試食に付き合わされたのだろう、湯円を小皿に分けようとすると戊陽が微妙な顔をして盆ごと玲馨に器を押し付けた。量はさほど多くはないが、全て食べたら夕食は必要なさそうだ。
急いで食べたのであやうく湯円を喉につまらせ茶で押し流し、完食すると戊陽の書き付けを改めて黙読し始める。
内容は官僚の登用試験である科挙の間口を広げるための草案だ。十五で居所を紅桃宮に移した頃から少しずつ戊陽も政に関わるようになった。皇族であっても二十歳までは宮廷に入れないので、もちろん裏向きの事だけだが。
それから四年が経ち、いつか言った「官吏になれ」という言葉をいよいよ現実のものにしようというのだ。
科挙を受けるには様々な条件があるが、書き付けには宮廷に出仕する者へ受験資格を与えるようにする事と、それに伴う損益がびっしりと書いてあった。
「この出仕する者という範囲ですが、それでは私たち宦官は含まれないのでは?」
「ならば城で何らかの仕事に従事する者ならどうだ?」
「そうですね。言い回しは後ほど考えるとして……。宦官たちに科挙を受けるための塾を開くというのは名案でしょう。しかしいっぺんに二つも要求して良いものでしょうか?」
「せっかく受験者を増やしても及第するものが居なくては結局何のためだったのか分からんだろ。だが問題は、塾を開くといって好んで宦官に教えたがる者がどれだけ居るかだな」
「給金を出せば来ますよ。ですが」
「その金を出し渋られる」
「ええ……」
食べ終えて空になった器を脇に避けて議論していると、そのうち呼んでもいないのに気を利かせた宮女が器を下げていった。
二人はそれにも気付かないほど夢中で草案を直していき、いつの間にか陽光が和らぎ幾分爽やかな風が四阿を吹き抜けたところで漸く一段落した。
「後は宦官の立場を良くしたくない者たちがどう──」
「玲馨」
少し汗ばんでしっとりした手が、玲馨の手に重ねられる。夕日を浴びて金に見える虹彩も赤みを帯びている。
「お前なら官吏になれる。そして俺と共に兄上を支えてくれ」
「……はい。あなたの期待に、全力で答えます」
手を裏返して握り返すと、戊陽は虚を衝かれたように目を瞠る。
「私の主は、生涯あなた一人ですから」
「……主、か」
戊陽の表情が僅かに翳るのを、もどかしいような申し訳ないような気持ちで見る。彼のその表情の裏にあるものを玲馨は朧気ながらも感じ取っていた。しかしそれを玲馨から求めては、将来辛い思いをする事になるのは戊陽だ。いずれ来る名家の公主との縁談に障りがあってはならない。
名残惜しいような気持ちを振り払い、そっと戊陽の手の下から抜け出す。戊陽もそれを止めようとはしなかった。
「──さて。兄上のところに胡麻でも擂りに行くとするか」
「では私は宿舎に戻ります」
「馬鹿を言え。お前も共に行くんだ。兄上に玲馨がいかに優秀かを見せておかねばならんからな」
「あまりに露骨だと不興を買うような気が致しますが」
「そう言って、お前は馬車に乗りたくないだけだろう」
胸中をぴったりと言い当てられるのでにっこり笑って返すと「不気味な顔をするな」と一蹴された。前に笑った顔が良いと言っていたので見逃してくれるかと思ったが、逆効果だったようだ。
日が傾き始めていたので行きも帰りも馬車を使う事になった。皇帝が過ごす黄麟宮まで馬車の速さなら一炷──香を一本焚く時間──の間に着いてしまう。この時間帯にこの速さなら人に見られる事もほとんど無いので、馬車に乗せられた玲馨の心も比較的穏やかだった。
馬車から降りると、ひっそりと静まり返った黄麟宮が二人を出迎えた。以前に訪れた時にはこの時間帯にはもうあちこちの灯火具に火が入れられていたと思ったが記憶違いだろうか。
数年前から末弟である小杰の母、東妃から請われて小杰の勉強を見るようになった。以来玲馨は戊陽付きの宦官でありながら同時に東妃宮へ通う日々が続いてるのだが、戊陽はどこへ行くにも玲馨を伴いたがった。おかげで皇帝付きでもないのに黄麟宮へ訪れるのはこれが初めてではない。
「兄上はまだお戻りになられていないのだろうか?」
「宮廷の方におられるのかも知れませんね」
今日は随分と空が焼ける日のようで、真っ赤に染まった夕日が黄麟宮の全てを燃やすかのように赤赤と染め上げている。火が入っていない石灯籠に囲まれた道を進みながら、普段とは違う異様な空気を醸す景色に、段々と嫌な感覚が募り始めていた。
そういえば、いつもは必ず一人は居るはずの門衛が今日は誰も居なかった。それを思い出した時、丁度戊陽が皇帝の執務室の扉に手を掛けていた。
「殿下お気をつけ下さい!」
「何を──」
玲馨が叫んだせいで戊陽が振り返る。扉に背を向ける形となった事に急速に焦りが募って咄嗟に戊陽の手を扉の取っ手から引き剥がした。
ほんの瞬きの間、意識が飛んでいたらしい。ど、と耳の奥で鳴り続けていた心臓の音が聞こえるようになると、扉の向こうがもぬけの殻だった事に気が付いた。戊陽の手を掴んだまま立ち尽くす。
「どうした玲馨」
突然の行動に戊陽が訝る。思い過ごしならそれで良いが、戊陽の身に何かあってからでは遅い。感じていた違和感を正直に告げる。
「黄麟宮の門衛が、今日は一人も居ませんでした」
その一言で玲馨が何を考えたか戊陽も察したらしい。顔色を変えて「兄上を今すぐ探し出せ」と短く命じた。
戊陽には黄麟宮を出ているよう言ったが、彼はこういう時に我が身を優先してくれる人ではない。案の定玲馨を置いて走り出す。
「殿下! お待ち下さい!」
「兄上の身に危険が迫っているかも知れないのに俺だけ逃げていられるか!」
「まったく……もうっ!」
こうなっては玲馨も戊陽についていくしかなく、彼の後に続いて走る。
戊陽は寝所を目指しているようだった。さすがに玲馨でも皇帝の寝所までは場所を知らず先回りする事は叶わない。
そのうち戊陽の速さについていけなくなると角を曲がったあたりで戊陽を見失ってしまう。ゾッと背筋が冷たくなり、戊陽の名を叫ぼうとした玲馨を戊陽のまるで悲鳴のような「兄上!!」という叫び声が遮った。
「戊陽っ!!」
声のした方へ向かうと、真っ赤に塗られた扉が全開になったその向こうで、戊陽が呆然と立ち尽くしているのを見つける。
「殿下、後は私、が……」
気が抜けるようにして、玲馨の声が先細って消えていった。
皇帝の寝所という極めて私的な場所。そこは煩雑とした宮廷から逃れ皇帝が心身を休めるための安全な空間でなくてはならないというのに。赤赤と燃える西日に照らされて、一人の男が血を吐き息絶えていた。
「あ、にうえ……っ」
前につんのめるようにして戊陽が足を進めるのを玲馨も言葉無くただ見ている事しか出来なかった──が、視界の隅に何かもう一つ違和感を捉えてほとんど無意識に戊陽の前に飛び出した。
「これは……」
違和感の正体は人だった。腹に短剣を突き立てて、こちらも口から大量の血を吐いている。宦官の衣を着た若そうな男で、寝台に寄りかかったまま絶命していた。
状況的に見て、この男が皇帝を殺した下手人だろう。
そう、これは──暗殺だ。紛れもなく皇帝が暗殺されたのだ。
「あ、あ……、なんで、こんな」
戊陽は膝をつき、動かなくなった黄昌の体を抱きしめる。
仲の良い兄弟だった。玲馨が戊陽付きになってすぐの頃にはまだ黄昌も後宮で暮らしていた。戊陽に連れられ彼を訪ねる事もあり、二人が互いに信頼しあっているのを、玲馨とてよく知っていた。
黄雷に似たのだろう、武芸はからきしのおっとりとした人だった。玲馨のような宦官にも態度を変えない人で、戊陽が初めて玲馨と会った時に玲馨を見下さなかったのはきっと黄昌を手本にしていたからだと悟った。
どれだけ戊陽が強く抱きしめても、黄昌の腕はだらりと床に垂れ下がったままだった。もはや、戊陽の癒やしの力をもってしても救う事が出来ない。
黄昌を抱いたまま泣く戊陽をそのままに、玲馨は下手人だろう男の衣を寛げる。嫌な作業だったがどうしても確かめておきたい事があった。
腹部に刺さった短剣は、柄の凝った意匠から恐らく黄昌の物だと分かる。状況は分からないが、反撃しようとしたのかも知れない。
玲馨は男の下腹部を確かめ目を細める。
やはり、この男は宦官ではない。恐らく居なくなった門衛だろう。
この事は早く調べなければ男の素性を探るのは刻一刻と難しくなる。何故なら彼には協力者が居るはずだからだ。そうでなくては宦官の衣をどこから手に入れたのか、何故都合良く門衛を一人で任されたのか。そして何より黄昌が寝所で一人という絶好の機会に潜り込めたのか。全てをたった一人でこなすのは困難だ。
「誰か! 人は居ないか!」
寝所を出て声を張り上げると既に戊陽の声を聞いていたのだろう、宮女がこちらへ走ってくるところだった。黄麟宮の宦官ではない玲馨を訝ったが、寝所の奥で戊陽と黄昌を見つけると血相を変えて人を呼びに行った。
戊陽は兄の体を抱きしめたまま動かない。その背中に張り付く悲壮は見ている者の心さえも暗く沈ませる。
黄昌の身に起きた事を何としてでも突き止めなくてはならない。戊陽のすすり泣く声が玲馨にそう思わせる。
しかし、玲馨の決意も虚しく、下手人の背後関係は一切が明るみにならないままだった。分かったのは、黄昌が毒殺だった事、そして下手人も同じ毒を煽って死んだ事のみ。
立て続けに皇帝を失った宮廷はたちまち混乱に包まれて、黄昌の死について満足に調べる間もなく、やがて戊陽が皇帝として即位する事になる。
あれから時が過ぎる事一年。黄昌を殺すよう指示をしたという文官が、今更になって、そしてあまりにも突然に出てきた。文官は顔中を腫らして元の顔が分からないほど酷い拷問をされて戊陽の前に現れた。
「こやつが先の皇帝殺しの主犯でございます」尚書令を務める林という男が言う。「どうなさいますか、陛下」
どうも何も、彼が本当に皇帝暗殺を目論んだというのなら彼に命は無い。だが尚書令は戊陽にこそ断罪させたいのだ。そうして自分の味方をしろと暗に仄めかしている。
主犯だと連れてこられた男は長い間拷問を受けてぐったりとしているのに、酷く怯えてガタガタと全身を震わせていた。誰が見ても彼が身代わりである事は自明である。
「首を落とされますか? 或いはこやつも黄昌帝と同じように強い毒を飲ませますかな?」
「ならぬ」
間髪入れずに戊陽が否定すると、尚書令は鼻白んだ。
「陛下は兄君の無念を晴らしたくはないと仰せに御座いますか?」
「ならぬと言った。私の判断は以上だ」
「陛下!」
玉座を立った戊陽を、尚書令は忌々しげに見ていた。
謁見の間を出ると、戊陽は悔しさを拳に込めて壁を強く殴り付ける。通りがかった官吏たちが驚いてこちらを振り返ると、音の正体が戊陽だと気付くや小声で何かを話しながら去っていく。
戊陽は即位してから癇癪を起こす事が増えたなどと噂されているが、真実は宮廷の不条理にただ憤っているのだ。
玲馨は、血が滲んだ戊陽の拳に手巾を巻き付ける。
なぜ、彼がこんな思いをしなくてはならないのか。
人を救いたいと願った戊陽が、罪も無い人に死ねと言わせられる宮廷の狂気。その根源はどこにあるのか。
だが見つけて根絶やしになぞ出来るものだろうか。私欲や征服欲という病魔に冒された人間の全てを排するまでに、戊陽はどれだけ心を費やさねばならないだろう。
そんな事ならいっそ、いっそ──逃げ出してしまえばいい。
「陛下、黄麟宮へ戻りましょう」
「ああ……」
この一年、父を失った時よりも遥かに無理をする戊陽を見てきた。食こそ細らなかったが──無理矢理口に詰め込むようにして食べる事もある──寝付きが悪く青い顔で日中を過ごす日も少なくない。
寝付いても夢見の悪さに叫びながら目を覚まし、それからまたまんじりともせず夜を明かす。
時折頭痛に悩まされるようで、薬を飲まなくては気を保っていられない事があった。けれど、どれだけ具合が悪かろうと張ってでも宮廷に行くのである。
死んでしまうと思った。このままでは戊陽を失ってしまうと。
玲馨はいくつかの死を見てきた。死とは何もなくなる事だ。生きていた時の思い出は寧ろ苦しくなるばかりで、やがてその時の痛みさえ忘れていくのが恐ろしかった。
だから決めたのだ。玲馨はこの先、良き皇帝になろうとする戊陽の事を裏切ると決めた。
それは戊陽のためではない。自分のためだ。
国のために死にゆくくらいなら、玲馨の事を呪って剣を突き立ててほしい。それで生きていてくれるのなら、玲馨は喜んで恨まれよう。
これが、自分を見付けて照らし出してくれた太陽の、その輝きを損なわせない唯一の方法だと信じて疑わなかった。
それから一年、現在に至るまで、玲馨は戊陽を玉座から下ろす方法を模索し続ける事になる。
宦官の宿舎に忙しなく現れたかと思えば大声で自分を呼ぶ声に、玲馨はもはや溜息を漏らすような事はない。
戊陽は今年で十九になるが出会ったあの頃と中身はさほど変わっていない。外見は逞しく成長したばかりか李将軍の厳しい稽古にも弱音を吐かずによく耐えているので、均整の取れた美しく力強い肉体を手に入れている。下級の武官などでは戊陽の相手は務まらないというから、花を持たせられているのでなければ剣の腕も相当なものなのだろう。
「殿下、今は教練房にて子供たちに字を学ばせているところですから、どうぞお静かに」
宿舎の入り口で待っていた戊陽のもとへ玲馨がやってくると、戊陽はパッと笑顔になる。
「む、そうだったな。いやな? 一刻も早くこれを読んだお前の意見が聞きたくて焦ってしまったのだ」
「これは……」
混じりけのないさらりとした品質のよい紙には走り書きのようにしてとある法案の事が長々と書かれてある。こんな高価な紙をただの書き付けに使うなんてとくどくど言ってやりたいが、他の宦官の目が気になった。
「話は殿下のお部屋で致しましょう」
「ああ、では紅桃宮へ参ろう。今年の桃もよく生っているからお前も食べて行くと良い」
桃の馥郁たる香りが風に乗って鼻を擽ると、今年もこの季節が来たのだと実感する。たわわに実った桃は賢妃の希望で賢妃宮から移植してきた物だ。今もしっかり手入れがされているので、毎年夏頃に薄紅の瑞々しい実をつける。昔、せっかく育った桃の木の行方を気にしていた事があるので、後宮に残されずに済んで何となくほっとしたのを覚えている。
戊陽が十五になった年は彼にとって辛い不幸事が続いた年であった。
今より少し早い季節の四年前、当時の皇帝黄雷が病で永眠すると、後を追うようにして一月も経たないうちに燕太傅も老衰で亡くなった。
戊陽は気丈に振る舞っていたが、暫くの間は食事が喉を通らずみるみる窶れていった。しかし時は待ってはくれないもので、兄の即位式が終わるとすぐに賢妃と戊陽の母子は居所を後宮の外へと移す事になる。
それがこの紅桃宮だ。城には皇族が住まうための宮殿がいくつかあるが、賢妃はかねてから「桃」の名がつけられた紅桃宮を望んでいた。
ふと玲馨が何かを探すように首を巡らせると「四郎なら暇を取らせた。あれも体は人だからな」と先んじて答えをくれる。あんまりな言い種だが玲馨も反論が浮かばない。これから話し合おうとしている事は四郎も知らない事なので、丁度よいと言えばそうだろう。
桃の匂いがいっそう強く香る四阿へと来ると、宮女がすぐに茶と菓子を持ってくる。大理石の台に置かれた陶器の中身を見て玲馨は目を瞬かせた。
「湯円ですか?」
湯円とはもち米を丸めて中に餡を入れて茹でた小吃──一品料理の事──だ。本来は冬頃に食べる季節料理で少なくとも玲馨は夏に食べた事はなかった。
「母上が桃を使った菓子を考案するのに夢中なんだ」
これのどこに桃が? と思っていると、戊陽は湯円の入った器の隣にあった小皿から、淡く色付いたとろりとした液体と固体の中間のような物を湯匙で掬って湯円にたっぷりとかける。そのまま別の湯匙で一つ湯円を掬ってから「ほら」と玲馨の口の前に差し出した。
「じ、自分で食べますから」
「……」
「……はぁ」
思わず右見左見して近くに人気が無いのを確認してから意を決して口を開ける。
戊陽があまりにもじ、と目を見つめるので堪えかねて目を閉じた。戊陽が不満そうに鼻を鳴らすのが聞こえたが、目を開けろとは言われず口の中に甘い香りと味のするものが入れられる。
「これは……桃、のような味がします」
湯円は本来中に煮た小豆などを入れるのだが、この湯円は中には何も入っていない。その代わりに先程戊陽がかけた物から桃の味がした。
「砂糖と一緒に煮詰めて作った桃の餡だそうだ。桃を直接中に入れるよりこちらの方がずっと美味しいのだと仰っていた」
「と言うより実際にこちらの方が美味かった」と戊陽は小声で呟く。
「賢妃様は料理上手でいらっしゃいますから」
「そうだな。よく宮女と混ざって竈で煮炊きをしておられる。息の詰まる後宮で無聊をお慰めする数少ない息抜きだったのだろう」
賢妃は他の妃たちと比べると質素で気弱な感じのする人だ。物腰も柔らかく、そして飾り気がない。黄雷太上皇帝もおっとりとした人だったので、その二人から生まれた戊陽はどちらにも似ず奔放な性格をしている。どうやら祖父に似たらしいが戊陽が二歳の頃に亡くなっているため生憎本人を知らない。その頃はまだ玲馨が明杰だった歳だ。
「それを食べたら、これだ。ちゃんと読んで忌憚のない意見をくれ」
きっと試食に付き合わされたのだろう、湯円を小皿に分けようとすると戊陽が微妙な顔をして盆ごと玲馨に器を押し付けた。量はさほど多くはないが、全て食べたら夕食は必要なさそうだ。
急いで食べたのであやうく湯円を喉につまらせ茶で押し流し、完食すると戊陽の書き付けを改めて黙読し始める。
内容は官僚の登用試験である科挙の間口を広げるための草案だ。十五で居所を紅桃宮に移した頃から少しずつ戊陽も政に関わるようになった。皇族であっても二十歳までは宮廷に入れないので、もちろん裏向きの事だけだが。
それから四年が経ち、いつか言った「官吏になれ」という言葉をいよいよ現実のものにしようというのだ。
科挙を受けるには様々な条件があるが、書き付けには宮廷に出仕する者へ受験資格を与えるようにする事と、それに伴う損益がびっしりと書いてあった。
「この出仕する者という範囲ですが、それでは私たち宦官は含まれないのでは?」
「ならば城で何らかの仕事に従事する者ならどうだ?」
「そうですね。言い回しは後ほど考えるとして……。宦官たちに科挙を受けるための塾を開くというのは名案でしょう。しかしいっぺんに二つも要求して良いものでしょうか?」
「せっかく受験者を増やしても及第するものが居なくては結局何のためだったのか分からんだろ。だが問題は、塾を開くといって好んで宦官に教えたがる者がどれだけ居るかだな」
「給金を出せば来ますよ。ですが」
「その金を出し渋られる」
「ええ……」
食べ終えて空になった器を脇に避けて議論していると、そのうち呼んでもいないのに気を利かせた宮女が器を下げていった。
二人はそれにも気付かないほど夢中で草案を直していき、いつの間にか陽光が和らぎ幾分爽やかな風が四阿を吹き抜けたところで漸く一段落した。
「後は宦官の立場を良くしたくない者たちがどう──」
「玲馨」
少し汗ばんでしっとりした手が、玲馨の手に重ねられる。夕日を浴びて金に見える虹彩も赤みを帯びている。
「お前なら官吏になれる。そして俺と共に兄上を支えてくれ」
「……はい。あなたの期待に、全力で答えます」
手を裏返して握り返すと、戊陽は虚を衝かれたように目を瞠る。
「私の主は、生涯あなた一人ですから」
「……主、か」
戊陽の表情が僅かに翳るのを、もどかしいような申し訳ないような気持ちで見る。彼のその表情の裏にあるものを玲馨は朧気ながらも感じ取っていた。しかしそれを玲馨から求めては、将来辛い思いをする事になるのは戊陽だ。いずれ来る名家の公主との縁談に障りがあってはならない。
名残惜しいような気持ちを振り払い、そっと戊陽の手の下から抜け出す。戊陽もそれを止めようとはしなかった。
「──さて。兄上のところに胡麻でも擂りに行くとするか」
「では私は宿舎に戻ります」
「馬鹿を言え。お前も共に行くんだ。兄上に玲馨がいかに優秀かを見せておかねばならんからな」
「あまりに露骨だと不興を買うような気が致しますが」
「そう言って、お前は馬車に乗りたくないだけだろう」
胸中をぴったりと言い当てられるのでにっこり笑って返すと「不気味な顔をするな」と一蹴された。前に笑った顔が良いと言っていたので見逃してくれるかと思ったが、逆効果だったようだ。
日が傾き始めていたので行きも帰りも馬車を使う事になった。皇帝が過ごす黄麟宮まで馬車の速さなら一炷──香を一本焚く時間──の間に着いてしまう。この時間帯にこの速さなら人に見られる事もほとんど無いので、馬車に乗せられた玲馨の心も比較的穏やかだった。
馬車から降りると、ひっそりと静まり返った黄麟宮が二人を出迎えた。以前に訪れた時にはこの時間帯にはもうあちこちの灯火具に火が入れられていたと思ったが記憶違いだろうか。
数年前から末弟である小杰の母、東妃から請われて小杰の勉強を見るようになった。以来玲馨は戊陽付きの宦官でありながら同時に東妃宮へ通う日々が続いてるのだが、戊陽はどこへ行くにも玲馨を伴いたがった。おかげで皇帝付きでもないのに黄麟宮へ訪れるのはこれが初めてではない。
「兄上はまだお戻りになられていないのだろうか?」
「宮廷の方におられるのかも知れませんね」
今日は随分と空が焼ける日のようで、真っ赤に染まった夕日が黄麟宮の全てを燃やすかのように赤赤と染め上げている。火が入っていない石灯籠に囲まれた道を進みながら、普段とは違う異様な空気を醸す景色に、段々と嫌な感覚が募り始めていた。
そういえば、いつもは必ず一人は居るはずの門衛が今日は誰も居なかった。それを思い出した時、丁度戊陽が皇帝の執務室の扉に手を掛けていた。
「殿下お気をつけ下さい!」
「何を──」
玲馨が叫んだせいで戊陽が振り返る。扉に背を向ける形となった事に急速に焦りが募って咄嗟に戊陽の手を扉の取っ手から引き剥がした。
ほんの瞬きの間、意識が飛んでいたらしい。ど、と耳の奥で鳴り続けていた心臓の音が聞こえるようになると、扉の向こうがもぬけの殻だった事に気が付いた。戊陽の手を掴んだまま立ち尽くす。
「どうした玲馨」
突然の行動に戊陽が訝る。思い過ごしならそれで良いが、戊陽の身に何かあってからでは遅い。感じていた違和感を正直に告げる。
「黄麟宮の門衛が、今日は一人も居ませんでした」
その一言で玲馨が何を考えたか戊陽も察したらしい。顔色を変えて「兄上を今すぐ探し出せ」と短く命じた。
戊陽には黄麟宮を出ているよう言ったが、彼はこういう時に我が身を優先してくれる人ではない。案の定玲馨を置いて走り出す。
「殿下! お待ち下さい!」
「兄上の身に危険が迫っているかも知れないのに俺だけ逃げていられるか!」
「まったく……もうっ!」
こうなっては玲馨も戊陽についていくしかなく、彼の後に続いて走る。
戊陽は寝所を目指しているようだった。さすがに玲馨でも皇帝の寝所までは場所を知らず先回りする事は叶わない。
そのうち戊陽の速さについていけなくなると角を曲がったあたりで戊陽を見失ってしまう。ゾッと背筋が冷たくなり、戊陽の名を叫ぼうとした玲馨を戊陽のまるで悲鳴のような「兄上!!」という叫び声が遮った。
「戊陽っ!!」
声のした方へ向かうと、真っ赤に塗られた扉が全開になったその向こうで、戊陽が呆然と立ち尽くしているのを見つける。
「殿下、後は私、が……」
気が抜けるようにして、玲馨の声が先細って消えていった。
皇帝の寝所という極めて私的な場所。そこは煩雑とした宮廷から逃れ皇帝が心身を休めるための安全な空間でなくてはならないというのに。赤赤と燃える西日に照らされて、一人の男が血を吐き息絶えていた。
「あ、にうえ……っ」
前につんのめるようにして戊陽が足を進めるのを玲馨も言葉無くただ見ている事しか出来なかった──が、視界の隅に何かもう一つ違和感を捉えてほとんど無意識に戊陽の前に飛び出した。
「これは……」
違和感の正体は人だった。腹に短剣を突き立てて、こちらも口から大量の血を吐いている。宦官の衣を着た若そうな男で、寝台に寄りかかったまま絶命していた。
状況的に見て、この男が皇帝を殺した下手人だろう。
そう、これは──暗殺だ。紛れもなく皇帝が暗殺されたのだ。
「あ、あ……、なんで、こんな」
戊陽は膝をつき、動かなくなった黄昌の体を抱きしめる。
仲の良い兄弟だった。玲馨が戊陽付きになってすぐの頃にはまだ黄昌も後宮で暮らしていた。戊陽に連れられ彼を訪ねる事もあり、二人が互いに信頼しあっているのを、玲馨とてよく知っていた。
黄雷に似たのだろう、武芸はからきしのおっとりとした人だった。玲馨のような宦官にも態度を変えない人で、戊陽が初めて玲馨と会った時に玲馨を見下さなかったのはきっと黄昌を手本にしていたからだと悟った。
どれだけ戊陽が強く抱きしめても、黄昌の腕はだらりと床に垂れ下がったままだった。もはや、戊陽の癒やしの力をもってしても救う事が出来ない。
黄昌を抱いたまま泣く戊陽をそのままに、玲馨は下手人だろう男の衣を寛げる。嫌な作業だったがどうしても確かめておきたい事があった。
腹部に刺さった短剣は、柄の凝った意匠から恐らく黄昌の物だと分かる。状況は分からないが、反撃しようとしたのかも知れない。
玲馨は男の下腹部を確かめ目を細める。
やはり、この男は宦官ではない。恐らく居なくなった門衛だろう。
この事は早く調べなければ男の素性を探るのは刻一刻と難しくなる。何故なら彼には協力者が居るはずだからだ。そうでなくては宦官の衣をどこから手に入れたのか、何故都合良く門衛を一人で任されたのか。そして何より黄昌が寝所で一人という絶好の機会に潜り込めたのか。全てをたった一人でこなすのは困難だ。
「誰か! 人は居ないか!」
寝所を出て声を張り上げると既に戊陽の声を聞いていたのだろう、宮女がこちらへ走ってくるところだった。黄麟宮の宦官ではない玲馨を訝ったが、寝所の奥で戊陽と黄昌を見つけると血相を変えて人を呼びに行った。
戊陽は兄の体を抱きしめたまま動かない。その背中に張り付く悲壮は見ている者の心さえも暗く沈ませる。
黄昌の身に起きた事を何としてでも突き止めなくてはならない。戊陽のすすり泣く声が玲馨にそう思わせる。
しかし、玲馨の決意も虚しく、下手人の背後関係は一切が明るみにならないままだった。分かったのは、黄昌が毒殺だった事、そして下手人も同じ毒を煽って死んだ事のみ。
立て続けに皇帝を失った宮廷はたちまち混乱に包まれて、黄昌の死について満足に調べる間もなく、やがて戊陽が皇帝として即位する事になる。
あれから時が過ぎる事一年。黄昌を殺すよう指示をしたという文官が、今更になって、そしてあまりにも突然に出てきた。文官は顔中を腫らして元の顔が分からないほど酷い拷問をされて戊陽の前に現れた。
「こやつが先の皇帝殺しの主犯でございます」尚書令を務める林という男が言う。「どうなさいますか、陛下」
どうも何も、彼が本当に皇帝暗殺を目論んだというのなら彼に命は無い。だが尚書令は戊陽にこそ断罪させたいのだ。そうして自分の味方をしろと暗に仄めかしている。
主犯だと連れてこられた男は長い間拷問を受けてぐったりとしているのに、酷く怯えてガタガタと全身を震わせていた。誰が見ても彼が身代わりである事は自明である。
「首を落とされますか? 或いはこやつも黄昌帝と同じように強い毒を飲ませますかな?」
「ならぬ」
間髪入れずに戊陽が否定すると、尚書令は鼻白んだ。
「陛下は兄君の無念を晴らしたくはないと仰せに御座いますか?」
「ならぬと言った。私の判断は以上だ」
「陛下!」
玉座を立った戊陽を、尚書令は忌々しげに見ていた。
謁見の間を出ると、戊陽は悔しさを拳に込めて壁を強く殴り付ける。通りがかった官吏たちが驚いてこちらを振り返ると、音の正体が戊陽だと気付くや小声で何かを話しながら去っていく。
戊陽は即位してから癇癪を起こす事が増えたなどと噂されているが、真実は宮廷の不条理にただ憤っているのだ。
玲馨は、血が滲んだ戊陽の拳に手巾を巻き付ける。
なぜ、彼がこんな思いをしなくてはならないのか。
人を救いたいと願った戊陽が、罪も無い人に死ねと言わせられる宮廷の狂気。その根源はどこにあるのか。
だが見つけて根絶やしになぞ出来るものだろうか。私欲や征服欲という病魔に冒された人間の全てを排するまでに、戊陽はどれだけ心を費やさねばならないだろう。
そんな事ならいっそ、いっそ──逃げ出してしまえばいい。
「陛下、黄麟宮へ戻りましょう」
「ああ……」
この一年、父を失った時よりも遥かに無理をする戊陽を見てきた。食こそ細らなかったが──無理矢理口に詰め込むようにして食べる事もある──寝付きが悪く青い顔で日中を過ごす日も少なくない。
寝付いても夢見の悪さに叫びながら目を覚まし、それからまたまんじりともせず夜を明かす。
時折頭痛に悩まされるようで、薬を飲まなくては気を保っていられない事があった。けれど、どれだけ具合が悪かろうと張ってでも宮廷に行くのである。
死んでしまうと思った。このままでは戊陽を失ってしまうと。
玲馨はいくつかの死を見てきた。死とは何もなくなる事だ。生きていた時の思い出は寧ろ苦しくなるばかりで、やがてその時の痛みさえ忘れていくのが恐ろしかった。
だから決めたのだ。玲馨はこの先、良き皇帝になろうとする戊陽の事を裏切ると決めた。
それは戊陽のためではない。自分のためだ。
国のために死にゆくくらいなら、玲馨の事を呪って剣を突き立ててほしい。それで生きていてくれるのなら、玲馨は喜んで恨まれよう。
これが、自分を見付けて照らし出してくれた太陽の、その輝きを損なわせない唯一の方法だと信じて疑わなかった。
それから一年、現在に至るまで、玲馨は戊陽を玉座から下ろす方法を模索し続ける事になる。
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