あわいの宦官

ちゅうじょう えぬ

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山芒編

1凶兆

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 卜師ぼくし栄建ロンジェンの生まれはスー家領は東江ドンジャン郡の領都である。その名の通り東の川沿いにある都市だが、「地脈ちみゃく」の変質に伴い町の形成が移ったため、東という名は古い名残でしかない。
 皇帝が自ら治める京師けいし紫沈ズーシェンは当然ながらシェン国で一番の広さを誇り同じく一番栄えた都市だ。
 紫沈にて皇帝の御座おわ汀彩ティンツァイ城に栄建が召抱えられたのはその特異な力を先々代皇帝に見出されたからであった。
 源流はえきと呼ばれる占いで、蘇氏が独自に発展させてより地脈を読むのに特化させた。これを蓐卜占じょくぼくせんと呼ぶのだが、現在では単に卜占ぼくせんせんと言ってしまう事が多い。
 栄建はこの日、自宅で空を見ながら占じていた。仕事ではない。さしずめ星見の手慰めといったところだ。
 沈の南部で産出した気を通しやすい石を盆に並べて、酒をなみなみと注いだ盃を片手に星々を見る。これほど贅沢な夜を過ごせるのはいずれも先々代皇帝のおかげだ。
 ふと、盆の上で気が乱れたような気がして、盃を脇に置く。栄建は昔から酒に弱く盃をひっくり返す事はしょっちゅうなので、酔いを感じたらすぐに手を空ける癖がついていた。
「これは……!」
 始めは酔っぱらってどこかで手順を間違えたのだと思った。しかし三度同じが盆の上で描かれると、栄建は赤ら顔を一瞬にして真っ青にさせよろめいた。
 先々代皇帝に力を見出されて二十年余り。初めて見るあまりにおぞましい卦に腰を抜かし、老いて痩せた平べったいばかりの尻を強か打ち付ける。
「栄建様! いかがなさいました!」
 騒音を聞きつけすぐさま駆け付けた弟子に支え起こされ、改めて恐る恐る盆を眺めたがまた生気が抜けていくように全身が力を無くす。
「へ、陛下に、お知らせしなくては……っ」
「はて……私には何の卦が出ているのかさっぱりです」
「当然じゃ! 儂とて斯様な卦は初めて見る!」
「凶兆ですね?」
「そうでなくて尻餅をつくほど歳はとっておらん! ええい、早う馬車を呼べ!!」
 察しの悪い弟子の尻をぺしぺし叩きながら叫ぶと、弟子と同じく騒ぎを聞きつけた侍女が駆けつけ彼の代わりに素早く対応した。




 屋敷から皇帝の住まいである黄麟ホアンリン宮まで馬車で揺られている間、栄建は手の震えが収まらなかった。
 どうか今夜がお渡りの日ではない事を祈りながら宮の前で待つ事暫し。卜師の訪問を取り次いだ宦官かんがんが門まで呼びに戻ってくると杖をついて中へと急いだ。
凱寧カイニン皇帝陛下、失礼を承知でこの栄建、くお伝えしたき儀があり参った次第で御座います」
 屏風の向こうは皇帝の寝所である。気性が荒い事で有名な彼の前で迂闊をすれば、間もなく老いさらばえた肉体はあっさり首と別れる事になる。しかしその恐怖よりも尚勝る占いの結果は、刻一刻と老体の寿命を確実に縮めていた。
「入れ」
 皇帝の声が屏風越しに返る。
 す、と音もなく出てきた宦官に案内されて屏風を越えてみると、皇帝は平服ではあるが寝衣ではなかった。栄建の訪問を聞いて着替えたのでなければ皇帝は日の入りから二時辰約四時間経つこの時分まで仕事をしていた事になる。
 政治にはとんと疎い栄建は、疎いが故にこれまで命を長らえさせてきたと自負している。占じたままを率直に述べる様は、愚かしくも信用に値したのだろう。しかして今度ばかりは栄建も生きてはおれないかもしれない。
 覚悟を決め拱手きょうしゅの姿勢を保ちながら、先刻の占いの結果をまるで鉛を吐き出すようにして口にした。
「沈にかげりの兆し有り。脈々と継がれてきたものに変事有り。天道が万の復路を歩むうち、道はを切り落とすだろう」
 たったこれだけを伝えるのにすっかり力を使い果たした栄建は全身にびっしょりと汗を掻いていた。
 皇帝が栄建の占をどう解釈したかは分からない。ただ、皇帝の声が掛かるまでの短い時間が、さながら永遠のようであった。
「捨て置け」
「……は……?」
 栄建は耳を疑う。
「余には無縁な事」
「へ、陛下、しかし」
「栄建。これはお主の見た夢だ。よもや東江の卜師は寝台の上でも気を操ると申すか?」
 言われた意味にややあって気付いた栄建は、年甲斐もなく困り果てて袖で顔を隠すように大げさに拱手する。
 寝台、つまり布団の中で気を操る事といえば、男女の交合による養生術を指す。つまり卜占で扱う気を房中術とかけた下品なあしらい方をされた訳だ。
 若い皇帝と思えば仕方がないのだろう。怒りはなく、代わりに湧き起こった呆れや羞恥が、栄建の興奮を宥めるのに一役買う事になった。





 今上帝である凱寧はこの日の晩、宰相と酒を交わしていた。皇帝が休む寝台の天蓋てんがいから垂れたしゃの向こうで、栄建の言葉を彼も聞いてた。
 盃に浮かべた月を飲み干して、卜師の去った黄麟宮に凱寧の声が響く。
「宰相、あの卜師を罷免せよ」
「はて。栄建のみでよろしいのですかな?」
「何だと……?」
 宰相もまた酒の水面に揺らぐ月を飲み、酔いなど微塵もない顔付きで凱寧を見遣る。
「卜師、引いては地脈を読む占者全てを排してこそ陛下の世は安泰となりましょう」
「……ふ、ははっ」
 凱寧は声を上げて笑った。その悍しい笑い声は夜陰へと吸い込まれるように消えていく。

 月はこの国で影を意味する。
 沈国の皇族はやがて天子となる嫡子にホアンの名を与えた。
 黄は太陽の意である。
 月は太陽なくば輝かない。太陽は今宵、月を飲み干した。
 卜師栄建は月の役目を授かって、黄を持たぬ紛い物の太陽の国から影を消し去るのである。
 それはこの世の均衡を崩す愚行であった。





 帰宅の道中の事である。栄建が皇帝に占の結果を伝えている間、馬車で番をしていた弟子が卦の答えを教えろと迫った。
「はぁ。お前は良いな、気楽で。陛下もお前も、若さ故かのう」
「若いと言ってももう私も二十も半ばを越えます」
「そうか……そうだったな」
 深く重い息が漏れていく。今夜一晩で四つ五つ歳を取った気がする。御年七十を目前にして明日にでもお迎えが来るかも知れない。
「お前も二十五になるか。ならば今からでも遅くない。紫沈の外に縁を作れ。ふむ、西が良いか。私の故郷であれば卜師と聞いて悪い様にはすまい」
「縁を作れだなんて突然ですね。一体何故です?」
 屋敷に戻ったら盆を見ろ、そう言いかけてから弟子には占いの結果を読み解くのは難しいだろう事を思い出す。まだこの弟子は基礎を覚え始めたところだった。
「早晩、滅ぶのだ」
「はい?」
「沈国が」
 沈という国が消えてしまう。
 盆の上で乱れた石は、沈にとって最大の凶兆を示していた。



【あわいの宦官】



「これはまた、とても豪華な食事のようですね」
 果たしてこちらが呆れている事に相手は気付いているのだろうか。いや気付いていながら強引にその態度を貫くつもりか。
「いえいえ滅相も御座いません! これくらいは皇城である汀彩城では毎晩振る舞われているのでしょうから、さあさあ遠慮なさらずに」
 この様子だと最後まで本題については何も探らせず手ぶらで皇帝の元へと帰す気なのだろうと、三回目の宴が開かれた所で玲馨リンシンはとうとう諦めた。
 汀彩城の食事がどれだけ豪華だろうと宦官である玲馨が口にする事はないのだが、面倒なのでもう黙っている事にする。
 ここ北の地は北玄海ペイシュエンハイ、沈国内屈指の漁業都市だ。漁業の他には塩商が盛んで、海を越えた先にある異国との交易ではよほど利益を上げているとみえる。
 塩を作り売る権利はいずれ国で独占したいところだが、今の皇帝にそれだけの力は無く何年先の話になるか分からない。相手もそれをよく分かっているので、下手に出ているのは見せかけだけだ。
 魚を中心に海藻に貝類と、紫沈では干物になってしかお目にかかれないものが、焼いたり煮たりして卓に並べられている。
 玲馨はそれらを眺めながら絶対に貝にだけは手を出すまいと心に誓う。北玄海に来てすぐの頃、屋台で焼き貝を食べて盛大に腹を下したのだ。三日三晩まさに悪夢のようだった。
 これら贅を尽くした食事はしかし、決して北玄海の富を自慢するためのものではない。中央から調査にやってきた玲馨と文官の二人をさっさと追い払うための賄賂に近い。または「これだけ歓待してあげたんだから余計な事には首を突っ込まないで下さいね」と料理に言わせている。
「いかがでしょう? お口に合えば良いのですが」
 玲馨と文官を接待しているのは北玄海の監察官である周子佑ジョウズーヨウだ。沈では監察官を殊に刺史ししと呼んでいる。
 周刺史ジョウししは五十がらみの男で鼻の下に生やした特徴的な髭が彼の顔を覚えるのに役立つ。とにかく口の回る男でいっときも黙る事がない。玲馨はあまり得意な相手とは言えなかったが、話し好きの文官の覚えは大変良かった。
 周刺史はきっちり二人分だけ食事が用意された卓の隣で、せっせと酒を注いだり茶を注いだりおべっかをまくし立てたりと忙しい。彼の分の食事が無いのは、偏に「儲かってはいないのです、決して」というていだからだ。要はこれ以上の徴税はさせないぞという構えである。
 玲馨と共に来た文官はまだ歳が若く──とは言え玲馨より年上だが──周刺史のお世辞に酒にとすっかり気持ちよくなってしまって、最早後は寝るだけだ。ここへ視察に来てからというもの、あっという間に周刺史の手管に落ちてしまったので、周刺史を遣わせた北玄海の領主は見る目があり且つやり手のようだ。おかげ様で文官よりも立場が下の玲馨は満足な調査が出来ず、持ち帰る情報は上澄みの綺麗な所だけになってしまった──あくまで「本題」については、だが。
「失礼致します」
 地方官吏らしき男が静かに部屋に入ってくると一巻の書簡を玲馨に渡してくる。文官ではなく何故自分にと思ったが、開いてみてその署名に納得した。
 やはり、北での調査はそろそろ限界のようだ。




 宴の終わりに、近く調査を引き上げる事を酔っ払った文官に提案すると、文官はこれを呆気なく了承した。もうとっくの昔に調査には飽きていたのだ。それを玲馨がどうにか粘って引き止めていたものだから、玲馨の申し出は願ったり叶ったりだったのだろう。
 玲馨は汀彩城へと思いを馳せる。
 玲馨の帰りを今かと待っている皇帝は、今頃さぞや鬱憤を溜めているに違いない。毎日毎日、老官吏たちの我欲に塗れた上奏を聞き、傍に侍る某宦官は滅私が服を着て歩いているので愚痴の聞かせ甲斐がなく、未だ後宮にはの一人も居ないので癒やしてくれる女も無い。玲馨という宦官一人が居なくなった事で皇帝は疲労も鬱憤も蓄積していく一方の日々を送っているはずだ。 
 皇帝付きの玲馨が遠く北の地まで調査に派遣された裏側には、老官吏の思惑があるに違いない。それがどこの勢力に属したものかまでは皇帝にも分からなかった。
 現在、皇帝の力は残念ながら宮廷においてさしたる影響力を持たない。表向きには皇帝にかしずきながらも、水面下では老獪たちが詔勅を自分たちの良いように決めてしまう。その一方で誰か一人が得するような事にならないのは、宮廷内が大きく四つの勢力に別れているからだ。
 北玄海、山芒シャンマン、東江、そして雲朱ユンジューの四方を治める四王に連なる者たち同士、互いに牽制し合っているのだ。
 この四つの均衡が保たれている間は、皇帝がひたすら耐えているだけで沈はある程度平和が続くだろう。しかしどこか一つでもその均衡が崩れたなら、たちまち動乱を呼ぶ事になる。四つの力を抑えて治めるはずの皇族の力が弱いからだ。蓋が無くなり肥え太った力は新たな器を求めて暴れだす。
 そんな権謀術数渦巻く宮廷に、玲馨は一ヶ月ぶりに帰還する。





「何? 治水だと?」
 北の領地を治めるジン家の視察から戻ってきたばかりの文官は拱手の下から「左様に御座います」と答える。
 朝議の席についている老官吏たちは文官の方を見もしない。この文官は科挙を受けて採用された官吏で元は庶民の出である。一方朝議の場に席を持つような官吏たちは所謂高官で、全て貴族からなっていた。つまり老官吏たちはこの文官には最初からまともな仕事ぶりを期待していないし、たとえ良い成果を挙げても評価するつもりがないのである。
 文官のいまひとつパッとしない態度に老官吏たちの至極退屈そうな態度とが相乗効果となって、皇帝は苛立ちを募らせていく。
「その、北玄海の南端のあわいの……」
「陛下、こちらを」
 文官を助けるようにして出てきたのは若い宦官だ。年の頃は皇帝とそう変わらない二十代前半で、墨よりも黒い瞳が印象に残る。彼の周囲だけ僅かに温度が低いような涼し気な雰囲気と、す、と伸びた目尻が賢そうな印象を与えていた。
 名を玲馨と言って、その身分のために姓はない。
 第二十二代皇帝である戊陽ウーヤンは、玲馨のその切れ長の目が驚けば存外大きくなる事も、どこか頑なな様子が崩れたらたちまち愛らしくなる事も知っている。果たして玲馨のそんな姿を見たのはいつが最後だったか、思い出すだけ遠い記憶であったが。
 一ヶ月ぶりに顔を見た自分の宦官にひとしきり思いを馳せつつ、玲馨が差し出す文官の認めた書簡を開く。書簡と思われたそれの中身は地図だ。
 皇領である紫沈の北端と、紫沈より北方である北玄海の南端、そして両者の境界に位置する「あわい」の略図が描かれており、文官の調べによると治水工事が行われているのは北玄海側のあわいであるらしい事が分かる。
「これが本当だとして、董家は何故こちらへ報告してこない? 単なる治水であれど領民の著しい増加を見過ごせるとでも思ったか」
 北玄海に赴任している刺史は他方の刺史よりも比較的真っ当にその仕事をこなしていたはずだった。
「はっ。董家の申しますところ、川の増水によって病が蔓延し、まずは報告よりも領民の安全の確保を優先したとの事。折しも文を書き付けようとした所で私が参ったと喜ばれまして……」
「丁度よい足と思われておるではないか。科挙を受けて官僚となった者が聞いて呆れる」
 ピシッと笏で掌を打つ音がして、文官が肩を竦める。官吏たちの潜めた笑い声が響いた。
 戊陽は決して怒りっぽい性格ではない。これは玲馨が北に発ってからというものやりどころの無かった苛立ちが募っていってこうなっているのだ。その苛立ちをぶつけられる矛先となってしまった文官は憐れだが、戊陽は知らなかった。文官の北玄海での働きは美味い飯を食って刺史と中身の無い冗談を言い合っていただけである事を。これは文官にとって因果応報なのである。
「あわいの治水と申したな? 董家はあわいをどうしたいのだ。あわいに住まう者共を飼い慣らそうというのか?」
 何かを思い出したのか皇帝の顔に苦い色が広がっていく。その表情を文官は自分へ向けられたのだと思い込んで、亀のようにして組んだ手の内側に頭を引っ込めた。それを憐れに思ったか、玲馨が一歩前へ進み出ると口を開いた。
「陛下、恐れながら。あわいの民から病が拡大し、大量の死者を出したという過去の記録も御座います。董家の迅速な判断はこうした──」
「良い。分かった。お前の話は後で聞く」
「はい」
「北玄海について何か説明のある者は?」
「では私から。菫家の方策と致しましては──」
 文官の代わりに立ち上がった官吏の話を戊陽は聞き流していく。どうせ益体の無い言い訳ばかりで聞くだけ無駄なのだ。しかしこの件に関して一旦は決着をつけなくてはならず、そのためには北玄海の、つまり菫家勢力の言い分というものを踏まえる必要があった。
 戊陽は官吏が話す中で玲馨の事を考えていた。
 一ヶ月のうちに話したい事が山と溜まっている。どれも宮廷に関わるものばかりで楽しい事などひとつもないが、何でも良いから玲馨と過ごす時間が欲しかった。
「後で聞く」と言ったからには、玲馨はこの後必ず戊陽の元へやってくる。まずは何から話そうかと考えているうちに、官吏の話は終わっていた。





 実のところ玲馨は単なる皇帝付きというわけではなかった。玲馨は皇帝付きであると共に第五皇弟付きの宦官でもあるのだ。
 そのため日中は皇帝の補佐を務めながら午後には皇弟のもとに参じるのが本来だが、皇帝が特別に玲馨を呼んだ時はその限りではなかった。
 玲馨は朝議の後外廷を出ると、皇帝の居所である黄麟宮へ戊陽と共に向かう。皇帝が使う大きく華美な馬車に揺られながら、玲馨は戊陽の隣に座っていた。
 御簾を下ろすためにつけた紐にまでぎょくで出来た飾りがついているのを見て、北玄海でも周刺史が手配した馬車に乗る機会があった事を思い出す。あれも立派な軒車けんしゃだったが、あれとこれとを比べるのは少々可哀想な気がした。
 それくらい立派な馬車に宦官が皇帝と共に乗って、あまつさえ妃のように隣に座るというのは常識から考えると信じ難い事なので、出来る限り遠慮したい。のだが、今日ばかりは戊陽がそれを許さなかった。
「帰ってくるのが遅い」
「大変申し訳ありません陛下」
「陛下はやめろ」
 むすっとして言う戊陽に、ちらと目配せをする。玲馨の視線の先には馬を操る御者の姿が映っている。すると意図を察したようで、戊陽は溜息を漏らした。
「黄麟宮まで急がせろ」
「はい!」
 御者の威勢の良い返事のあと、御者が持つ鞭の音が響く。急がせればもちろん馬は疲れてしまうので戊陽は滅多なことではそうした指示を出さない。つまり、今の戊陽は滅多な状況という事だ。
 これは──と玲馨は今から腹を括る。朝議の場でも荒れていた事を思うに、戊陽の気が済むまで帰してはくれなさそうだ。




 黄麟宮に到着すると、玲馨よりも年嵩の宦官が出迎えた。例の滅私が服を着て歩いている宦官だ。彼とは十年来の付き合いになるのだが、戊陽からの命でもない限りは彼が玲馨に声を掛ける事はほとんどなかった。
 彼の顔を見るのも一ヶ月ぶりなのだが、私的な付き合いがあまりにも無いと久しぶりだという感慨が湧かないものらしい。
 汀彩城にある宮の中で最も広く最も美しく整えられた黄麟宮は、戊陽が最低限の宦官と宮女しか置かないのでどこか寂しげな印象を与える。更に宮女は年季が明けても戊陽が頼んで宮に残した者たちで、皆歳を召した者ばかりだった。宦官と壮年の宮女、こう言ってはなんだが華が無いのである。
 こうした状況を万に一つ官吏たちに見られでもしたら一刻も早く後宮を整えるよう躍起になるかも知れない。このままではまたしても、子を成さずに皇帝が代わってしまう、と。先帝の在位は四年と実に短かった。
 皇帝の戻りを聞きつけ宮女たちは戊陽の着替えを手伝うために奥の部屋から出てきたが、戊陽が彼女たちを止めて玲馨一人に着替えを手伝うよう命じた。宮女たちも慣れたもので、はいどうぞと玲馨に水の入った桶と手巾を渡してさっさと消えていく。
 こうなることは予測していたので玲馨もまた戊陽の後に続いて部屋に入り、さっさと脱がせにかかった。
「玲馨、北はどうだった」
「随分な歓待をされて気が気ではありませんでした」
「玲馨」
「はい」
「玲馨」
「……」
 ぐ、と玲馨が言葉に詰まると、戊陽は絶対に逃すまいとして襟元を掴んでいた玲馨の手を捕まえる。
「……何だ、戊陽」
 やがて根負けした玲馨が応えてやると、にまぁ、と戊陽の取り繕っていた皇帝の顔が柔らかく崩れていく。玲馨は思わず嘆息したが、それには一切嫌な感情は含まれていなかった。
「よく無事で戻った。俺はお前が北で毒殺でもされるかと、それこそ気が気ではなかった」
「そんなに心配するなら私を行かせなければ良かったんだ」
 思い出すのは貝の苦しみだ。
「そうもいくまい。あの文官一人で行かせていたら、治水の事さえ分からず終いだったろう」
 北での文官の様子を見るに、玲馨は否定出来なかった。
 玲馨は手際よく上衣を脱がしてしまうと下は良いと言われたので、手巾を水につけ固く絞る。この手巾も麻などではなく絹糸で織られた上質な物だ。産地は西の東江である。
 手触りのよい手巾で戊陽の体を拭き始めると、戊陽は自分の体を清める玲馨をじ、と見下ろしてくる。自分に奉仕させる玲馨を見て何を考えているのか、普段の戊陽には無い珍しい反応なので玲馨もさすがに戸惑いを覚えた。
 腕、背中と終わって最後に腹を拭き始めると、戊陽はくすぐったかったのか腹をひゅっと引っ込めた。驚いて思わず手を止めてしまったが、気を取り直して臍より下に手巾を当てようとすると、今度は腰をくの字に曲げて玲馨の手から逃れようとする。
「……」
「……」
 身に着けたままの袴、それから前に屈められた腰。今の戊陽に何が起こっているかを察して玲馨は顔を上げた。
「お慰めしましょうか」
「い……いらん」
 青いような赤いような顔で言う戊陽を、玲馨は愛いなと思うのだった。





 着替えを終えると戊陽は卓と椅子を用意させ、そこに自らも腰掛けながら玲馨を座らせる。着替えの間の出来事を取り繕うように、戊陽は卓の上に件の地図を広げた。
「あわいは『地脈』の薄れた土地だ。今更ここを領地として何の得がある?」
 文官が描いた地図をトン、トン、と戊陽の指が叩く。
「あわい」は領地と領地の狭間にある川や街道、浮民が居着いた土地を示す言葉だ。
 あわいがどの領地にも属さないのは、大地を流れる地脈と呼ばれる物が薄いか或いは全く存在せず管理されなくなったためである。
 およそ七十年前、時の皇帝は凱寧の頃、大きな地脈変動があった。それは皇帝のお膝元である皇領「紫沈」、そして四王が治める東西南北の領地を割るようにして動き、地脈の無いあわいを生み出した。
 あわいには川は流れど黒く濁り、土はあれど痩せ衰え、大気は重く息苦しい。徒歩での移動は困難を極め、馬の進みも悪くなる。
 地脈変動の直後は各領地がさながら陸の孤島と化し、皇帝とそして四方を預かる四王の尽力によって街道が確保されるまでの数年間で国民の約五分の一が死んでいった。
 それから数十年余りを経た今でもあわいの状況はさほど変わらない。
 地脈変動以来、帝と王はあわいの領土を捨て、管理する土地を狭める事によってどうにか国を守ってきた。
「治水とは何だ? 何かの暗喩か?」
「暗喩ではありません」
 着替えを終えたので今は寡黙な宦官と他に宮女たちが部屋の中に控えている。玲馨が戊陽に対して態度を崩すのは二人きりの時だけだ。
 簡略化した地図を見下ろす玲馨の表情は先ほどまでのやり取りがなかったかのように揺るぎなく静かだ。凪の水面のような静寂の下で何を考えているか誰にも分からないだろう。
 薄い唇から紡がれる声は、どこか古琴の弦を爪弾く響きに似ていると戊陽は思う。二胡の歌うようなしなやかさではなく、張り詰めた糸をひとつひとつ奏でていく正確な音。それが戊陽の耳には心地よい。
「委細は私にも分かりかねますが」
 弦のように張り詰めているが、ポロン、と一音一音零れていく音には少しだけ艶っぽさもある。ずっと聞いていられそうだが、内容を聞き逃しては元も子もないので意識を切り替える。
「しかし、東の地が原因である可能性が御座います」
 訝るように僅かに玲馨の目が眇められた。陶器のようにきめ細やかな白い肌に浮かぶ黒々とした瞳は何者も寄せ付けないような、それでいて全てを吸い寄せてしまうような深い色合いを持つ黒金剛石を嵌め込んだかのようである。
 美しい、と、一言で表してしまうには惜しいだけのものを持ちながら玲馨は宦官であった。女に生まれれば或いはその美貌だけで妃嬪ひひんにまで上り詰めたのではないだろうか。
 宦官には姓がなく戸籍もない。宦官は皇帝の物で土地も家も持たない。その命尽きるまで皇帝に侍り、皇帝が永逝すれば嘗ては主に殉死して死出の旅路にも付き従った。
 時代が下った今では法で殉死を定めなくなったものの、皇帝が死したらやはり次代の皇帝に付き、そしてやはり生を終えるまで皇帝と共にあり続けるのだ。
「──にて、川の流れに何か影響のある出来事があったのでしょう。ですから……。陛下」
 陛下と呼ぶ前に溜息の音がして、玲馨と戊陽の視線が交わった。交わったおかげで玲馨が話している間、戊陽はずっと彼の顔を見続けていた事に気が付いた。
「説明が不要ならばそう仰って下さい」
「不要ではない。が、話は大体分かった。つまりお前は今度は山芒シャンマンに調査を派遣せよと言いたいのだろう?」
 玲馨の黒金剛が瞬く。聞いていたのかと言いたげだ。無論、聞いていた。顔を凝視していたのは無意識だったが。
「玲馨、お前はこの件に感して董家を突ついたところで何も出てこないと考えた。そうだな?」
「はい」
「あわいを通る河川が一本、山芒から北玄海に向かって流れている。川は山芒からあわいにかけて流れ、北玄海の領地を縫うようにして流れているが、『治水』の発端はその川の上流が原因に違いない」
「はい」
 戊陽が筆を持てと命じると皇帝付きの宦官が言葉通りの物を持ってくる。無口な宦官は所作さえも静かだ。気配というものが酷く薄く、さながら皇帝の影のようでもある。
 戊陽は薄く付けた墨で、す、と一本の流れを地図に書き足す。東の山岳地帯から流れ出る河川は、中央付近のあわいに侵入し、北の北玄海を囲むあわいと北玄海の領土を両岸とする形で海まで流れていく。つまり岸の一方が北玄海で、もう一方はどこにも属さないあわいという事だ。
 河川の名はユエ川。現在でも山芒では農業用水として主要な河川でありながらも、あわいを通る時に汚染されて北玄海へ辿り着く頃には黒く濁り生命を害する毒となる。
 海は地脈が非常に活性化しており川の一本ごときで濁る事はない。寧ろ汚染された水を浄化さえするのだが、海水を人の営みに利用することは難しい。気をつけるべきは塩商くらいのものだ。
 その川に何かがあると玲馨は睨んでいる。何があるのかを下流で暮らす民がひた隠すならば、上流から暴いていけとそういう事だった。
「差配は任せる。好きに人を使え」
「……。私に陛下の名を騙れと仰いますか」
「細かしい奴め。──ふむ。丁度良い物がある。これで私が一筆認める。それを持って官吏を口説くと良い」
 皇帝の名と印璽を捺した書簡にはしかし誰の名も書かずに「汝」とだけ記される。皇帝の勅命を記す書状が誰にでも渡せるよう細工されたそれを、戊陽は菓子でも渡すかのようにして玲馨に差し出した。
「……拝命致しました」
 たった一枚の重たい紙を受け取り、玲馨は深々と腰を折る。
 姓も戸籍も無く皇帝の所有物である宦官の手の中に、国家権力が収まっている。これを戊陽の信頼と取るべきか、或いは怠慢と取るべきか。涼しげな表情の下で玲馨の胸中が複雑だと思うと、不思議と戊陽の中には欲が満たされるような感覚があった。





 玲馨は黄麟宮から直接、後宮の中にある東妃とうひの宮を訪れる。そこは玲馨の仕えるもう一人の皇族、小杰シャオジエ第五皇弟の暮らす宮でもある。玲馨が北の調査を切り上げるその決定打となったあの書簡を送ってきたのが小杰だ。内容を要約すると「早く帰ってきてね玲馨」というような事が書かれてあった。
 今年で十二歳になる小杰は誕生日を迎えたら早いうちに後宮を出ていく事になるだろう。何故なら先帝に子がなく宮廷が荒れたからだ。官吏たちは戊陽に早く子を作って欲しいのである。
 戊陽の後宮を作るには、後宮最後の住人である東妃と小杰が出ていかなくてはならないため、戊陽と同じく東妃母子にも圧力が掛けられていた。本来なら十五歳になるまで後宮で暮らして良いという決まりがあるはずなのに、だ。
 先帝の急逝から戊陽が即位して二年。今では宮廷の混乱も落ち着きを取り戻し、戊陽の主導する朝議も形になったと言ってよいだろう。しかし、そも次男であった戊陽に政治的な後ろ盾は無きに等しく、彼は宮廷において半ば孤立している。今の戊陽にとって必要なものは即戦力になる味方だが、残念ながら小杰と戊陽の関係性は良いとは言えない。個人間の仲の良さではなくそのもっと後ろ、母親の生まれにしがらみがあった。
「小杰殿下。玲馨が北玄海の地より戻って参りました」
 後宮の最後の住人である東江のとその息子の小杰の居所を訪れ、見知った宮女たちと挨拶を交わすと最後に二人の部屋に通される。
 黄麟宮付きの宦官や宮女たちとは付き合いが長いのであちらでは玲馨もさほど取り繕う必要はないのだが、こちらではそうはいかない。小杰こそ玲馨に懐いているものの、他は東妃を筆頭に玲馨に対して心を許していないような硬い空気が漂っている。
「玲馨! 待っていたぞ!」
 ぴゃっと飛び跳ねて走り寄ってきたのは、沈人には見られない金の髪に緑の目をした少年である。彼が小杰だ。母である東妃の外見を濃く継いでおり、そのどこか神秘的な見目の美しさは後宮の外にまで広まり有名である。
 母や宮女たちと玲馨の間にある微妙な空気感など、幼い小杰にはあまり関係がないらしい。子供が屈託なくはしゃぐ姿で室内の空気も多少和らいでいく。
「殿下、元気でお過ごしだったようですね」
「もちろんだ。お前が選んできた書も全て読み終わったぞ」
「全て、で御座いますか?」
「うむ!」
 俄に目を見張る玲馨に、小杰は胸を逸らす。一ヶ月程度では読み終えられないくらい大量の書物を選んでおいたつもりだったが、子供の成長とは早いものだ。
 小杰は末弟とはいえ当然ながら様々な学問の師がつけられている。しかし、小杰は殊座学については玲馨から教わりたがった。曰く他の誰よりも教え方が分かりやすいという。玲馨は部屋を少年の宦官と二人で分けて使っているが、その少年にも同様の理由で慕われている。
 子供に教えるのは嫌いではなかった。寧ろ好きの部類に入るだろう。教え子の覚えは良くても悪くても構わない。学ぶ事に誠実な者たちの、その成長を見守るのが恐らく楽しいのだ。
「さすがで御座いますね。もう後二巻ほど選んでおいても良かったようです」
「いいや五巻だ。おかげでお前がおらぬ間、退屈で仕方なかった。私はお前に教わるのが最も好きだ玲馨」
 小杰は兄弟の中で特に昔の戊陽に似ていると玲馨は思う。直截簡明としていて、どこか自分に自信があって、大きな挫折を知らないから歪まず真っすぐだ。
 戊陽は即位してから少しずつ腹芸というものを覚えなくてはならなかった。そうしなければ自分を守る事さえも出来なくなってしまうからだ。活動的で根が真っ直ぐな戊陽には玉座が酷く窮屈そうに見えた。
「恐悦至極に御座います。私の師もお喜びになられるでしょう」
「師? 確か、玲馨の師は戊陽兄上と同じであったな」
 問われた玲馨は「はい」と頷き、旧懐をその目に宿す。
燕太傅イェンたいふは歴代の太傅の中でも大変智慧に富んだ方だったと言われております。宦官の身である私にも隔てなく様々な事を教えて下さいました。もし、私の教え方が良いと思って頂けるのなら、全ては燕太傅のお陰です。私は師を真似ているに過ぎないのですから」
 玲馨は穏やかに笑う。心が緩んでふっと染み出したような笑顔は、会話に混ざらず見守っていた宮女たちに溜息を吐かせた。
「ねぇ殿下、先日届いた菓子を玲馨にどうでしょう?」
「菓子? あ、お祖母様のお国のですね!」
 東妃が頷くより早く宮女が動き、菓子に合わせて茶が用意される。これは宦官には過分な待遇で、普段からこうという訳ではない。想像するに、玲馨が顔を出せなかった一ヶ月の間によほど小杰が愚図ったのではないだろうか。でなければわざわざ北玄海に書簡など届けさせなかっただろう。茶や菓子を振る舞うのは玲馨を足止めして少しでも小杰と長く過ごさせたいのだと思えばこの対応も不思議ではない。
 いつもなら断る場面だが、東妃の苦労を思えばと用意された茶と菓子を頂く事にする。
「そう言えば、殿下は読まれた書の事で玲馨に聞きたい事があったのではなかったかしら?」
 椀の中の茶がなくなりかけるとおもむろに東妃が言う。
 母に言われるまですっかり忘れていたらしい小杰は「あ!」と声を上げ、椅子から飛び降りて小走りに部屋を出ていった。話題に上がった書物とやらを持ってくるのだろう。まぁまぁと東妃が笑っていたのは少しの間だけだった。
 幼い小杰が居なくなると室内は途端に張り詰めたような静けさに満ちる。玲馨の視界の隅で宮女たちが居住まいを正すのが見えた。
「玲馨。単刀直入に聞きます。あの子のためにあなたが選んだ書の中に『天子たるもの』という言葉から始まる文が多く書かれた物がありました。あの書物を小杰殿下に読ませた意図を教えなさい」
 彼女の問いで、降りた静寂に緊張が漂っていた理由が分かった。
 東妃の言う書物は確かに玲馨が選んだ物で、つまるところが帝王学の書である。政治学ではなく天子とは斯くあるべしと思想や精神を説いた物だ。
 天子とは皇帝の事を指す。戊陽の弟である小杰が天子と呼ばれるためには、戊陽が男児を成さずに没し、間の二人の兄弟も同様に世を去って初めて回ってくる席に座る必要がある。
 きっと東妃は疑っているのだ。
 宦官ごときが自身の息子に刃を握らせようとしているのではないかと。危険なはかりごとに巻き込もうとしているのではないか、と。
 西の姫である東妃は五番目の妃だ。東西南北を四つの王に守らせるこの沈国において、五番目の妃というのは他四人の妃よりも自ずと位が一つ下がる事になる。この後宮で位が最も低い立場で若くて美しい女というのは、やっかむにはうってつけだったろう。
 それ故か或いは元来の才能なのか、東妃はとても賢い女性だ。五番目の妃という本来必要のない場所に連れて来られた彼女とその皇子が今日まで生きながらえたのは、東妃の功績に違いなかった。
「皇帝付きの宦官」という身分がなければ、彼女の言葉一つで首が飛ぶ東妃を前にして、玲馨は丁寧に拱手をした。その横顔には怯えや恐れなどは見えない。
「恐れながら、殿下が仰せになったのです。戊陽陛下の学んだ書が見たい。やがて陛下の一助となるべく必要な知識を身に着けたいと」
 嘘ではない。小杰はよく言っているのだ。兄の治世を盤石とするために知恵と力をつけたいと。
 小杰の望みを東妃も知っているし、小杰についている師たちも既知だ。だが帝王学の書などというものを渡してきた者は後にも先にも玲馨しか居ないだろう。
 結局、東妃の疑いの眼差しはさほど和らぐ事はなかった。玲馨も苦しい言い訳だった事を自覚していた。
 それから小杰の持ってきた書の中に件の書が混じっていなかった事を確認して玲馨はほっとするのだった。
 東妃の宮を出ると俄に雨が振り始めていた。春先の冷たい雨はまるで乗り越えたはずの冬をまたそっと連れ戻すかのようなそら寒さを覚える。
 作物は枯れ、獣は山奥に眠る糧の無い冬。代わりにあわいを跋扈するのは、人を襲って殺してしまう妖魔だ。
 あわいは妖魔を生むのだ。
 そして妖魔を倒せるのは、その力を持つ者だけ。
 人はあわいの中では暮らしていけない。
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