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臍④

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「はぁ……京介ぇ……っ」

 店に着くなり蕩けきったウジの声が京介を呼んで早く早くと訴えてくる。
 タクシーの中でも構わず京介の一物を咥えようとしてくるので止めるのに大変だった。ミラー越しにウジをガン見していた運転手を脅して救急車よりも速く走らせた。
 風邪で発熱してもこうはならないだろうというくらい全身が熱く火照っているウジを畳まで連れていく。脱衣所からありったけのタオルを持ってくると布団を敷いてその上にタオルを重ね、ウジの体を転がす。くたっとまるで人形のように力なく布団の上に倒れていったかと思えば、隣に座った京介の腰にすぐさままとわりついてくる。

「んぐ……ひょうふへ、ひょうふへ」

 ズボンの上からウジが股間を口に含もうとするので、まるで漏らしたかのように京介の股がみるみる濡れていく。

「舐めたいか?」
「んぁっ、舐めたい……っ」
「いいぜ。今日から三日は、俺の体はお前のモンだ。好きに使えよ」

 京介が許しを与えると、瞳孔にハートでも浮かびそうなほどとろとろの目をして股間に頬ずりし、覚束ない手でファスナーをおろしていく。下着から半勃ちのペニスを取り出してアイスでも舐めるように美味しそうにしゃぶりつく。荒い呼吸が黒い草むらをそよがせ、口端から溢れた唾液が汚していった。
 じゅるりと涎の音をさせながら、夢中でフェラをされて京介のそこはあっという間に硬くなっていく。
 京介はウジの好きにさせながら白いTシャツを胸元までたくし上げる。真っ赤に咲いた彼岸花。臍を中心に独特の形をした花弁を開かせている。
 あのデブ男はつくづくセンスが無い。淫紋と言えばハート型で臍より下に付けるのが定番だろう。ウジの薄い下生えの上にここにぶちまけてくれと浮かぶ紋ならさぞいやらしかったろうに。
 腹の端まである花弁の先に触れると、一物をしゃぶったままウジがくぐもった声を出す。つ、つ、と花びらをなぞって中心に辿り着き、臍の穴に人差し指をねじ込んだ。

「あっ」

 縒れた皺を解すようにして指先を曲げるとウジはもどかしげに股を擦り合わせ、それでも尚ペニスから顎が離れてしまわないよう必死で京介の太腿に頭を乗せている。普段からエロい事となると積極性の増すウジだが、それとは比べ物にならない。半分正気じゃないだろう。

「ぁっ、そこ」
「臍で感じるのか?」
「わかんなっ、ちんちんの奥が、ビリッてすぅ」

 くるりと縁をなぞるだけでウジは口から一物をこぼし、腰を突き出して臍からの感覚をいなそうとする。
 京介の手の下でウジの肌が熱を帯びた。血のように真っ赤な花弁がウジの腹の上で更に開き始めていた。

「満開じゃなかったって事か……?」

 花弁の動きを追って指を這わせると、ウジの体が激しく痙攣して声もなく絶頂する。

「は、今のでイッたのかよ……!」

 ジャージをおろすとぐっしょりと下着が濡れていた。

「京介ぇ」

 ウジは泣きそうな声を出しながら自分で自分の臍をかき混ぜる。
 京介はウジの頭を太腿に乗せたまま体を折り曲げて、ウジの腹に顔を寄せる。臍をくじる指に舌を這わせるとウジは親指と人差し指で臍を上下にくぱりと広げた。その動きはつまり、入れて、だ。

「ひあっ、ぁっ、あっ」

 細く尖らせた舌先を窪地に突き入れ隙間をねぶる。花弁を撫でていた左手を動かし、長く天に伸びたしべ――花の生殖器官――を指で上書きするように撫で上げた。

「んーっ……んん……っ」

 気に入らない。赤い彼岸花からは、あの小太りの男の気配が昇ってくる。べったりと付いた手垢を火で炙って焼失させてやりたい。
 臍の穴を舌で舐めて抉って吸って、そうしているうちに腹に持ち上がってきたウジの一物の気配を頬に感じ、顔を逸らして鈴口を舐めた。ぴこんっ、と可愛らしく跳ねたそれを捕まえて、亀頭に接吻する。

「あっ、う、京介っ」
「嫌だったらすぐに言え」
「嫌、じゃない。きもちぃ……ああっ」

 そう言われて我慢する道理はない。
 舌の代わりに指で臍を弄り、精液塗れるのつるりと張った亀頭を舐め、一気に中腹まで口の中に含んでしまう。口内で硬くなるのが分かる。気を良くして喉に届きそうなほど奥まで咥えてやったら、鼻先に薄い下生えが掠れて擽ったい。
 京介は豊満な男の体の方が好きだ。鍛えていてひくつく胸筋に噛み付いてデカイ乳首を吸って噛んで。ナニもLLが好みだ。屈強な男が自分の手管で弱るのを見る様が、京介の征服欲を満たしてくれる。
 ウジは京介の好みには程遠い。肌は日焼けを知らず、骨と皮が目立ち、一物は根本まで咥えられるし尻も薄い。だけど、間違いなく今の京介はウジの肢体に興奮していた。白い肌に散った朱色と真っ赤な彼岸花を咲かせて腰を反らせ、ペニスを頬肉で挟んで思い切り吸い上げてやると普段は控えめな喉からあられもない声がこぼれていく。その淫らな姿に、ゾクゾクするほど欲情する。
 京介は熱心にウジのペニスを愛撫した。しとどに溢れてくる先走りを逐一舐めとって喉を鳴らす。それでも追いつかず、京介の唾液と混じったものがウジの内腿と尻臀しりたぶを伝って割れ目を濡らしていく。
 蟀谷辺りに熱感を感じて視線だけでそちらを見遣る。ウジの指が京介の髪に差し込まれ掻き上げた。自分の頭を撫でる手を掴んで口元に持っていき、指を咥えてペニスと同じように舐ってやると表情だけでゾゾゾとウジの背中を快感が駆け上がったのが分かった。

「京介」

 呼ばれて体を起こす。ウジが京介の目を見ている。

「来てくれて、嬉しかった」

 どっちだ。学校に来てくれて? 助けに来てくれて?
 どっちも、だろうか。
 京介が捕まえていたウジの手が逃げていき、京介の耳を擽った。そのまま項に伸びていき、襟足を混ぜ始める。
 もう何を求められているかとっくに察していた。
 京介は片手を布団につき、もう片方の手をウジの腹に乗せて花を撫でる。鼻先がぶつかるほど顔を下げて、黒目が滲むほど至近距離に迫るとウジは目を閉じた。京介は目を細めてじっとウジの顔を見つめながら、唇を重ねた。

「ふ……っ」

 見た目よりもふっくらした唇は怖いくらい京介の唇に馴染んでくる。手淫も口淫も熟達しているくせにキスは下手くそなのが憎らしい。何度も何度も食むようにすると同じように応えるので精一杯で、腹を撫でるとすぐに意識がそちらに傾き口元がおざなりになった。
 可愛い。可愛いと、思ってしまう。雛鳥のようだ。京介を真似てキスをしようとする姿はいじらしくてたまらない。
 舌先で唇をつつくと意図を理解したようで薄く唇が開く。どうしたらいいか分からず縮こまっている舌に舌を絡めて中を犯し尽くしてやれば、荒い呼吸の狭間に懸命に京介と舌を合わせてこようとする。

「んんっ」

 キスをしながら涎と先走りで濡れていた尻に手を這わせた。すぐに窄まりに辿り着き、指の腹で入口をやわやわと押してやる。

「ウジ」

 唇を離してウジに訊く。

「どうして欲しい?」

 我ながらずるい。ウジが尻で自慰をするのを知っておいてこれまで決してそこには触れてこなかった。今もどんな答えが返ってくるを分かっていて訊いている。
 目を細め、面映ゆいような表情で、ウジは震える腕を京介に伸ばす。

「欲しい。京介が欲しい」

 伸びてきたウジの手首にキスをしながら指先に力を込めた。

「っ……」

 爪が埋まり、関節が埋まり、人差し指の根本まではあっさり飲み込んだ。ウジはここを使って自慰をする。だがそれにしては狭い。く、と指先を曲げると肉の壁が思いの外強く京介の指を跳ね返してくる。

「お前、もしかして初めてか?」

 かあっとウジの頬が染まって首まで真っ赤になっていく。ウジの照れる表情なんて初めてだ。意外な事に初めてだと悟られるのが恥ずかしいと感じる感性を、この男は持っている。下着の中で京介の一物が暴発しそうなほど膨らんだ。

「ひっ、あっ」
「痛かったら言えよ」

 ローションなんて便利な物はこの店には無い。京介も使わないので少し考えてから台所から貰ったまま開封していなかった食用油のボトルを持ってくる。

「後で洗ってやるから」

 とぷっ、とぷっ、と重量を感じる音を立てながら油を自分の手とウジの尻にまぶしていく。すぐに胃もたれしそうな油の匂いが上がってきたがウジの体を傷付けるよりはずっといい。
 油の滑りを借りて二本目を収めると、柔い内臓を時間を掛けて押し広げていく。
 自慰をするだけあってウジはしっかり快感を得ていた。京介の指の動きに健気に反応し、臍の周りに花弁を開かせる。
 三本までくるとウジは三度目の射精を迎える。もうほとんど出すものが残っていないようで半分ほど空イキのようなものだ。ぐったりと体を布団に横たえて、汗をびっしょりと掻いているのに勃起が収まらない。

「お腹、熱い……っ」

 花に残った魔力が燃えているのだろう。使いきってそのまま淫紋が消えてくれたら良いがまだどうなるか分からない。

「京介、も、お願い」
「ん……分かった」

 ウジの体を俯せに返そうとするとウジは嫌がった。大半何でも受け入れるウジに抵抗されると、自分がまた失敗した気になって気後れしてしまうが「顔が見たい」と言われて腹の奥が熱くなった。
 ウジの両足を抱えて腰を添わせる。油を追加で尻と自分に足して尖端で後孔にキスしてやると、ウジがうっそりと目を細めた。

「っは、あ……入って、くる……っ」

 狭い。それから熱い。ウジはどうにか尻周りの筋肉を緩めて京介の挿入を助けようとしているようだが全然足りない。
 京介が肉付きが良い相手を好むのは、自分もまたガタイが良くてそれに見合ったサイズをしているからだ。細い体に凶器のような怒張をねじ込むのはまるで自分が強姦しているような気になって気が削がれてしまうのだ。
 でも、ウジの体を相手に、京介の欲は決して萎えていかない。それどころか早く早くと体が急かしてくるのを制御するのに必死になる。

「おっきぃ……っ」
「煽んなよっ」
「もっと、おっきくなるの?」
「ば、か……!」

 指で馴らしても尚閉じた感触のある腸の中を今にも弾けそうなペニスで拡げて、拡げて。薄いが柔いウジの尻臀に下生えが密着すると二人同時に息を吐き出した。

「痛くないか?」
「お腹いっぱいで苦しいって感じ」
「辛かったらすぐ言え。ゆっくり動くから」
「ん」

 中がウジの形に馴染むのを待ってから律動を開始した。逐一油を足して、角度を付けないよう正確に前後に腰をゆっくり動かす。
 京介の尖端がウジの入り口にある凸を引っ掛けるとウジが鳴く。ウジが鳴き声を上げると彼岸花は鮮やかさを増していった。

「はぁ、きょ……け、もっとして」
「っ……お前なぁ」
「足りない、足りないっ」

 淫紋がウジにそうさせているのだろう、ウジは物欲しげな顔で京介を見つめながら自分で花を撫で始める。花びらを撫で、蕊を伝い、臍をほじると釣られて中がきつく締まる。
 食いちぎられそうだ。気持ちいい。血管が切れそうなほど興奮しているのが自分でよく分かる。

「くそ……っ」
「やあっ!? あっ、あんっ!」

 ウジの両手を取り、布団に縫い付ける。繋がりが深くなる。察しの良いウジは京介が抜けていかないよう自ら腰に足を絡めてしがみついた。
 加減をしたストロークでも背中がぞわぞわするほど気持ちが良い。もっと長く中に居たいと思うとそこまで迫っている射精感を体が我慢してしまう。
 京介が腰を振るほどに彼岸花は美しく花弁を広げた。ウジが京介の手をぎゅっと握りしめて四度目の絶頂を迎えると、花はとうとう満開に咲き誇った。ウジは目を大きく見開き自分の体に起きた事が分かっていない顔で天井を見つめ、眦から涙を零す。

「悪い、後少し付き合え」
「え? あっ!」

 不思議な事に臍を彩るように咲いていた彼岸花は、いよいよ開きすぎて細い花弁を落とし始めた。花弁の先端から徐々に色を失って消えていく。儚くてつい目を奪われながら犬のように腰を振っていると喘ぎながらウジが臍を指で広げて「ここ」と何かを訴えた。
 始めは何を言われているか分からなかったがすぐにそこに出してほしいという意味だと気付いた。

「淫紋のせいっても、変態過ぎるだろ……!!」

 出る、と思った瞬間ウジの中からペニスを素早く引き抜き、彼岸花に掛けるように精液を迸らせる。ぴゅっと白濁に塗れた花はあっという間に散っていき、最後には臍に溜まった京介の精液と、ウジの臍の下で赤い蕾の状態になった彼岸花だけが残った。
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