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メリットがあっても

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「ふぅーーーーーー」

「お疲れ様です、ラガス坊ちゃま。それで、交渉は上手くいきましたか」

ロビーに戻ると、直ぐにメリルたちはギルド内にある酒場で軽食を頼んで摘まんでいた。

「最初から割と話の解る人と言うか、通じる人だった。まぁ…………ちょっと熱くなり過ぎて、一部私財を出すかもしれないけど」

「そうですか。確かに考えた内容を実行するには、それなりの人員が必要ですからね。現状に不満や不快感を持っていたとしても、報酬がなければ動かないというのは珍しくないでしょう」

……なんか、思ってた反応と違うな。

「怒らないんだな」

「私財を使用することをですか?」

「うん」

「私たちが日々の生活に追われている、そこまで懐に余裕のないパーティーであればともかく、間違いなく余裕はあります」

珍しく意識してなくても敵をつくりそうな言葉を口にするな、メリル。

「加えて、ラガス坊ちゃまは冒険時の稼ぎ以外にも、他の事でも収入を得ているではありませんか」

貴族から魔靴の注文は今も継続的に依頼が来てるから、確かに定期的に懐にそれなりの大金が入ってくる。

「ですので、私としましては特に文句もなく、無駄遣いだとも思いません」

「俺はそもそもそういうのに口出す権利はないと思ってるんで」

「私も、ラストと、同じく」

信頼されてる……とはまた違いそうではあるけど、特に問題無しと思って良さそうだな。

あとラストとセルシア、口出す権利はあるからな。

「そうか……ありがとう。とはいえ、色々とメリット云々については話し合ったけど、最終的に決めるのは更に上の人間だからな……後は最終判断を待つだけだ」

「……メリットが、ある、なら……やらない、の?」

メリットがあるならやる……それが正しい考え方と言うか、一般的でストレートな考え方ではあるんだろうけど、個人のあれこれで済む話ではない。

「本当に実行するなら、必要な金の一部を俺が出すにしても、人を動かさないといけないだろ。ギルド的には、普段の業務に更に新し業務が追加されることになる」

勿論、全従業員の仕事が増えるわけではない。

ただ、一部の職員の仕事が増えるのは間違いない。

「人が足りないとかの問題なら、増やせば良いんじゃないっすか?」

「シュラ、人が足りないからといって、そう簡単に従業員を増やせるものではないのよ」

「ほ~~~~~~ん…………経営者にしか解らない問題ってやつか」

シュラにしては珍しくメリルに突っ掛からず、柔軟な考え方をしてるな。

「そうですね。私も正確な知識がある訳じゃないから詳しくは語れないけど、ギルドの利益から職員たちの給金を出してるでしょうから、人を増やせば給金の額が下がる可能性もある筈よ」

「そりゃあれだな、不満が爆発しそうだな」

「そうでしょう。だからこそ、メリットがあると解っていても、簡単に実行出来ることじゃないの……それを考えると、必要な経費の一部をラガス坊ちゃまが、自身の私財から出すと伝えたのは正解だったかもしれませんね」

「……その時はあんまり深く考えてなかったけど、今思うと確かにナイスな判断だったかもしれないな」

つっても、俺が考え付いてないだけで、他にも問題はあるかもしれない。
でも……アリクみたいなハンターの為にも、平民出身のハンターの為にもなるだろうから、是非とも実行してほしい。

そう思いながら、二日後からまたハンターとして仕事を開始。
これまで通り目標を地下遺跡? の最下層到達を目指して行動。
今回もAランクモンスターとは遭遇せず、無事に帰還。

素材を売却するためにハンターギルドへ向かうと、素材の売却を終えてロビーに戻ってくると……嫌な知らせが耳入ってきた。
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