930 / 970
土俵に上がる
しおりを挟む
「…………難しい、ね」
「うっ、セルシア様はそう思うっすか」
セルシアにそちら側に立たれてしまうと、シュラとしてもこれ以上は何も言えなくなってしまう。
「違う。私たち、なら……倒せる、可能性は、ある。でも……ラガスの、様に、安定性は、ない」
自分たちが万全の状態で、装備や武器を惜しまず使うのであれば、倒せる可能性はあると思っているセルシア。
しかし、ラガスは墓場の攻略の際に、ソロでAランクモンスターであるハイ・ヴァンパイアを討伐した。
そして今回のイレックスコボルト戦では、うっかり羅門の使用を忘れていた。
セルシアも羅門を使用していれば、もっと余裕を持って討伐出来たと思っている。
場所が場所なだけに反動が残るアビリティの使用は好ましくないという意見は解るものの、そこをカバーする為のパーティーメンバーである。
結果として、ラガスは安定してAランクモンスターを討伐出来るだけの戦闘力を有している……というのがセルシアの感想。
対して、自分たち三人だけで戦う場合、可能性があるというだけで、安定性には欠けている。
「安定性っすか。まぁ、イレックスコボルト戦やメリルがソロで戦ったケルベロスも、毒をぶち込まれても自力でなんとかしちゃったっすもんね」
「あれには、驚いた。挑む、機会が、あるなら……挑んで、みたい。でも…………容易に、挑める相手じゃ、ないのは、解って、る」
まだまだ上を目指す気満々であるセルシア。
しかし、背負うリスクの大きさを考えられない程、強くなる事だけに脳を支配されてはいない。
「まぁ~~、それもそうっすね。もうちょい、イレックスコボルトと戦った時、タンクとして踏ん張るべきだったからな~~~」
決してラガスは手を抜いていた訳ではない。
寧ろ全力で戦っていたが、それでもイレックスコボルトを相手に、十分な戦力になれていたかというと、微妙なラインである。
「私も、同じ。紫電崩牙を、使ったん、だから……もっと、ちゃんと、斬るべき、だった」
武器の性能だけであれば、紫電崩牙は十分イレックスコボルトに通じる得物。
Aランクモンスターと戦うのであれば、プライドなど捨てて超高品質の武器に頼るという手段自体は悪くない。
それでも、セルシアには頼ってしまったのだから、それ相応の結果は出したいという思いがあった。
しかし、結果的に途中から全てラガスに任せてしまうことになった。
「……ってなると、もっと強くなるのが一番ってことっすよね。それなら、尚更地下遺跡でもっと探索すべきっすよね!」
「そう、ね。墓場は、もう知ってる、場所だし」
実戦的鍛錬の場という意味では、セルシアにとって墓場も十分それに値する場所であった。
しかし、自分のミスで結果的にラガスを巻き込んでしまったこともあり、トラップという存在が改めてセルシアに緊張感を与えることになった。
「んじゃあ、これからは……効率的に、CランクやBランクのモンスターを倒していくべきっすかね?」
「………………強く、なるため、なら。シュラが、よく、やってる、戦い方で、良いと、思う」
「俺のいつもの戦い方っすか?」
「うん」
シュラは鬼人族の腕力を活かし、大剣だけではなく長槍、戦斧、大斧、ハンマーといった武器まで扱える。
だが、相手が素手で戦うモンスターや、パワーに自身があるタイプのモンスターであれば、自らその土俵に上がって戦ってしまう。
効率的に討伐するのであれば、決して鈍足ではない脚を活かし、強靭な腕力から繰り出される一撃を叩き込むのがベストではあるが、戦いを楽しむ脳筋タイプであるシュラは、よく相手の土俵に上がって戦ってしまう。
「倒す、だけじゃ、なくて……乗り越えれば、今より、強く、なれる……多分」
どのタイミングで更に殻を破り、成長するかは人それぞれ。
ただ、温い戦いを続けていても、成長することは出来ない……それだけは全員に言える事実であった。
「うっ、セルシア様はそう思うっすか」
セルシアにそちら側に立たれてしまうと、シュラとしてもこれ以上は何も言えなくなってしまう。
「違う。私たち、なら……倒せる、可能性は、ある。でも……ラガスの、様に、安定性は、ない」
自分たちが万全の状態で、装備や武器を惜しまず使うのであれば、倒せる可能性はあると思っているセルシア。
しかし、ラガスは墓場の攻略の際に、ソロでAランクモンスターであるハイ・ヴァンパイアを討伐した。
そして今回のイレックスコボルト戦では、うっかり羅門の使用を忘れていた。
セルシアも羅門を使用していれば、もっと余裕を持って討伐出来たと思っている。
場所が場所なだけに反動が残るアビリティの使用は好ましくないという意見は解るものの、そこをカバーする為のパーティーメンバーである。
結果として、ラガスは安定してAランクモンスターを討伐出来るだけの戦闘力を有している……というのがセルシアの感想。
対して、自分たち三人だけで戦う場合、可能性があるというだけで、安定性には欠けている。
「安定性っすか。まぁ、イレックスコボルト戦やメリルがソロで戦ったケルベロスも、毒をぶち込まれても自力でなんとかしちゃったっすもんね」
「あれには、驚いた。挑む、機会が、あるなら……挑んで、みたい。でも…………容易に、挑める相手じゃ、ないのは、解って、る」
まだまだ上を目指す気満々であるセルシア。
しかし、背負うリスクの大きさを考えられない程、強くなる事だけに脳を支配されてはいない。
「まぁ~~、それもそうっすね。もうちょい、イレックスコボルトと戦った時、タンクとして踏ん張るべきだったからな~~~」
決してラガスは手を抜いていた訳ではない。
寧ろ全力で戦っていたが、それでもイレックスコボルトを相手に、十分な戦力になれていたかというと、微妙なラインである。
「私も、同じ。紫電崩牙を、使ったん、だから……もっと、ちゃんと、斬るべき、だった」
武器の性能だけであれば、紫電崩牙は十分イレックスコボルトに通じる得物。
Aランクモンスターと戦うのであれば、プライドなど捨てて超高品質の武器に頼るという手段自体は悪くない。
それでも、セルシアには頼ってしまったのだから、それ相応の結果は出したいという思いがあった。
しかし、結果的に途中から全てラガスに任せてしまうことになった。
「……ってなると、もっと強くなるのが一番ってことっすよね。それなら、尚更地下遺跡でもっと探索すべきっすよね!」
「そう、ね。墓場は、もう知ってる、場所だし」
実戦的鍛錬の場という意味では、セルシアにとって墓場も十分それに値する場所であった。
しかし、自分のミスで結果的にラガスを巻き込んでしまったこともあり、トラップという存在が改めてセルシアに緊張感を与えることになった。
「んじゃあ、これからは……効率的に、CランクやBランクのモンスターを倒していくべきっすかね?」
「………………強く、なるため、なら。シュラが、よく、やってる、戦い方で、良いと、思う」
「俺のいつもの戦い方っすか?」
「うん」
シュラは鬼人族の腕力を活かし、大剣だけではなく長槍、戦斧、大斧、ハンマーといった武器まで扱える。
だが、相手が素手で戦うモンスターや、パワーに自身があるタイプのモンスターであれば、自らその土俵に上がって戦ってしまう。
効率的に討伐するのであれば、決して鈍足ではない脚を活かし、強靭な腕力から繰り出される一撃を叩き込むのがベストではあるが、戦いを楽しむ脳筋タイプであるシュラは、よく相手の土俵に上がって戦ってしまう。
「倒す、だけじゃ、なくて……乗り越えれば、今より、強く、なれる……多分」
どのタイミングで更に殻を破り、成長するかは人それぞれ。
ただ、温い戦いを続けていても、成長することは出来ない……それだけは全員に言える事実であった。
115
お気に入りに追加
3,493
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
悪役令嬢は蚊帳の外です。
豆狸
ファンタジー
「グローリア。ここにいるシャンデは隣国ツヴァイリングの王女だ。隣国国王の愛妾殿の娘として生まれたが、王妃によって攫われ我がシュティーア王国の貧民街に捨てられた。侯爵令嬢でなくなった貴様には、これまでのシャンデに対する暴言への不敬罪が……」
「いえ、違います」
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する
清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。
たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。
神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。
悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる