924 / 970
比べるものではない
しおりを挟む
そうか、そうだな……シュラの言う通りだな。
「……ラガス坊ちゃま。私としましては、今のラガス坊ちゃまが大丈夫とは思えないのですが」
「いや、本当に大丈夫だから安心しろっての」
「…………分りました。それで、いったい何に気付いたのですか」
「簡単な話だよ。あの時、イレックスコボルトと対峙した時……後、一応俺とセルシアが下の階層に転移させられた時もか。その二回……俺たちは、確かに冒険した」
本当にヤバいと、ハイ・ヴァンパイアと戦った時以上の恐ろしさを、イレックスコボルトから感じた。
それと、セルシアと共に下の階層に転移してしまった時、このまま無事にメリルたちと合流出来るのかという心配があった。
ただ、今思えば、そういう感覚を多くのハンターは何回も味わってきた筈なんだ。
「冒険、ですか……私としては、あまり良い冒険とは思えませんが」
「はっはっは!! 確かに、セルシアと一緒に転移した時は、かなりハラハラドキドキものだったな。でも、普通のハンターたちは、常にそういう冒険を体験して、乗り越えてきてる訳だろ」
「そうなのかも、しれませんね」
「俺たちだけ、安全距離から楽しむのは違う……って考え方は違うか」
「えぇ、違うと思います」
うっ!! め、珍しく本当に拒否? したい感じの顔だな。
「私たちには、安全距離から楽しむ……それだけの力があります。それだけ……幼い頃から積み重ねてきたものがあります。だからこそ、他の新米ハンターたちと比べて、ハンターになってから本来ルーキーたちが体験する筈の苦労を体験せずに済みました」
「だな」
「別に、私たちはのんびりとした旅を行い、ルーキーたちの狩場を荒しているわけでもありません」
そこは……否定出来ないな。
トロールの集団を纏めるファイルトロールを討伐したり、クソバカマッドサイエンティストを潰したり、全部で五十階層もあるダンジョンを探索したり……決して楽な冒険はしてない、か。
「なので、わざわざ他の方々と苦労比べをする必要はないかと」
ん~~~~~…………なんともこう、心を抉る言い方だな。
わざわざ、不幸比べをする必要はない。
確かに、それはそうかもしれない。
ただ……うん、俺としてはそれはそれ、これはこれって感じなんだよな。
「メリル。確かに俺も比べる必要はないと思ってる。というか、別に他のハンターたちとそこを競い合いたい訳じゃない。ただ、ハンターとして楽をしたくないっていうか……安全距離から戦ってるだけのチキン野郎になりたくないんだよ」
「あっ、なんかそれ、凄いしっくりきたっす!」
どうやら、シュラも同じような事を考えてたみたいだな。
「……ラガス坊ちゃま。私たちがこれまで対峙してきたモンスターは、全員が全員楽な相手ではありませんでした」
そうだな。それは確かに間違いない事実だ。
ハンター活動を始めてからカルパに到着するまで。
カルパに到着してからも、確かに楽じゃない相手と戦ってきた。
「それはそうなんだけどさ、こう……今回、地下遺跡? っていう、俺たちでもハラハラドキドキが続く探索場所があるだろ」
「…………はぁ~~~~~~~。つまり、自殺行為がしたい訳ではない。ただ、既にいくらか探索し、自分たちでもそれなりに命の危機がある場所だと解った。だからといって逃げる様なダサい真似はしたくない……といったところでしょうか」
「大体そんな感じかな」
メリルの言う通り、自殺行為がしたい訳ではない。
冒険はしたいけど、死にたくはないし、メリルたちを死なせたくもない。
ただ、あそこは危険な場所だと解ったから、ささっと退散するような真似はしたくない。
「うんうん、確かにそれはダサいっすよね。まぁ……また再度探索とかなったら、後半年ぐらいはカルパに留まる事になりそうっすから、完全にダンジョン化するまで待つ必要はないと思うっすけど」
シュラに同意だな。
とりあえず、簡単に意見を纏めると、安全圏から出ないような行動を取り続けるダサい真似だけはしたくないってことかな。
「……ラガス坊ちゃま。私としましては、今のラガス坊ちゃまが大丈夫とは思えないのですが」
「いや、本当に大丈夫だから安心しろっての」
「…………分りました。それで、いったい何に気付いたのですか」
「簡単な話だよ。あの時、イレックスコボルトと対峙した時……後、一応俺とセルシアが下の階層に転移させられた時もか。その二回……俺たちは、確かに冒険した」
本当にヤバいと、ハイ・ヴァンパイアと戦った時以上の恐ろしさを、イレックスコボルトから感じた。
それと、セルシアと共に下の階層に転移してしまった時、このまま無事にメリルたちと合流出来るのかという心配があった。
ただ、今思えば、そういう感覚を多くのハンターは何回も味わってきた筈なんだ。
「冒険、ですか……私としては、あまり良い冒険とは思えませんが」
「はっはっは!! 確かに、セルシアと一緒に転移した時は、かなりハラハラドキドキものだったな。でも、普通のハンターたちは、常にそういう冒険を体験して、乗り越えてきてる訳だろ」
「そうなのかも、しれませんね」
「俺たちだけ、安全距離から楽しむのは違う……って考え方は違うか」
「えぇ、違うと思います」
うっ!! め、珍しく本当に拒否? したい感じの顔だな。
「私たちには、安全距離から楽しむ……それだけの力があります。それだけ……幼い頃から積み重ねてきたものがあります。だからこそ、他の新米ハンターたちと比べて、ハンターになってから本来ルーキーたちが体験する筈の苦労を体験せずに済みました」
「だな」
「別に、私たちはのんびりとした旅を行い、ルーキーたちの狩場を荒しているわけでもありません」
そこは……否定出来ないな。
トロールの集団を纏めるファイルトロールを討伐したり、クソバカマッドサイエンティストを潰したり、全部で五十階層もあるダンジョンを探索したり……決して楽な冒険はしてない、か。
「なので、わざわざ他の方々と苦労比べをする必要はないかと」
ん~~~~~…………なんともこう、心を抉る言い方だな。
わざわざ、不幸比べをする必要はない。
確かに、それはそうかもしれない。
ただ……うん、俺としてはそれはそれ、これはこれって感じなんだよな。
「メリル。確かに俺も比べる必要はないと思ってる。というか、別に他のハンターたちとそこを競い合いたい訳じゃない。ただ、ハンターとして楽をしたくないっていうか……安全距離から戦ってるだけのチキン野郎になりたくないんだよ」
「あっ、なんかそれ、凄いしっくりきたっす!」
どうやら、シュラも同じような事を考えてたみたいだな。
「……ラガス坊ちゃま。私たちがこれまで対峙してきたモンスターは、全員が全員楽な相手ではありませんでした」
そうだな。それは確かに間違いない事実だ。
ハンター活動を始めてからカルパに到着するまで。
カルパに到着してからも、確かに楽じゃない相手と戦ってきた。
「それはそうなんだけどさ、こう……今回、地下遺跡? っていう、俺たちでもハラハラドキドキが続く探索場所があるだろ」
「…………はぁ~~~~~~~。つまり、自殺行為がしたい訳ではない。ただ、既にいくらか探索し、自分たちでもそれなりに命の危機がある場所だと解った。だからといって逃げる様なダサい真似はしたくない……といったところでしょうか」
「大体そんな感じかな」
メリルの言う通り、自殺行為がしたい訳ではない。
冒険はしたいけど、死にたくはないし、メリルたちを死なせたくもない。
ただ、あそこは危険な場所だと解ったから、ささっと退散するような真似はしたくない。
「うんうん、確かにそれはダサいっすよね。まぁ……また再度探索とかなったら、後半年ぐらいはカルパに留まる事になりそうっすから、完全にダンジョン化するまで待つ必要はないと思うっすけど」
シュラに同意だな。
とりあえず、簡単に意見を纏めると、安全圏から出ないような行動を取り続けるダサい真似だけはしたくないってことかな。
136
お気に入りに追加
3,493
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
悪役令嬢は蚊帳の外です。
豆狸
ファンタジー
「グローリア。ここにいるシャンデは隣国ツヴァイリングの王女だ。隣国国王の愛妾殿の娘として生まれたが、王妃によって攫われ我がシュティーア王国の貧民街に捨てられた。侯爵令嬢でなくなった貴様には、これまでのシャンデに対する暴言への不敬罪が……」
「いえ、違います」
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する
清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。
たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。
神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。
悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる