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遅い

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SIDE メリル

(このケルベロス……割と、頭が悪いのでは?)

ケルベロスと言うべきか、ケルベロスたちと言うべきか迷う。
そう思ってしまう程、放つプレッシャーは強大であるが、頭三つの連携は大して取れていない。

最初、ケルベロスに挑みたいと伝えたメリルは、ほんの少しだけ一人で戦いと気持ち表明したことを後悔していた。
何故なら……メリルにしては、珍しくこの地下遺跡に生息しているモンスターも、他の地域に生息している事を忘れていたから。

元がBランク。
メリルの実力であれば……絶対に倒せない訳ではない。
ただ、絶対に勝てる保証もない。

強くなる為に挑むのだから、絶対に勝てるような相手であれば、寧ろ困るのだが……だとしても、やってしまったという思いが強かった。

しかし、実際に戦闘が始まると……確かに放たれるプレッシャーは半端ではなく、もしのこの攻撃を食らってしまえばと思うと、振るえてしまう。
ただ……本当に、ケルベロスは三つの頭を、魂を持ってるのだと感じたメリル。

「ガルル!! ルルゥアアアア!!!!」

「ガゥガゥッ!!!! ウガァアアッ!!!!!」

「ガァァアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

気に食わない攻撃があったのか、三つの内、二つの頭が喧嘩している中、もう一つの頭はやけくそ気味に炎のブレスを放つ。

(なんだか……時間が経つごとに、戦い易く、なっている様な…………まぁ、私としては嬉しいのですが)

体力の衰えは感じない。対して、メリルの体力はどんどん削られていく。
そこだけ見れば、結局は中々メリルが不利な状況に見えるが……メリルの扱う双剣はケルベロスの腹や脚、指などを切断するには至らないものの、確実に毛を……皮を、肉を刻んでいた。

メリルからすれば、基本的にモンスターを討伐するには、それで十分だった。

「「「っ!?」」」

「ようやく、回り始めてくれましたか」

Bランクモンスターとなれば、さすがに即死させることは不可能。

しかし、Bランクモンスターにも効く毒を生み出す、造ることは出来る。
図体が大きい分、毒が回るのに時間が掛かるものの、それまでの間、メリルにはケルベロスのブレスや爪撃、咬みつきを回避出来るだけの機動力がある。

更に、追加で更に毒を体内に流し込む度胸もある。

「ガァァアアアアッ!!!」

「「ルゥアアアアアッ!!!!」

(っ! ここにきて、息を合わせてきましたね)

意識を爪撃に集中させる頭と、ブレスだけに集中する二つの頭。

ケルベロスの体内構造がどうなっているのかメリルは知らないが、危機察知力……自身の状態を把握する力だけは流石だと、心の中から称賛を送る。

だが……遅かった。

動きが明らかに鈍り始めた。
先程までのスピードがないとなれば、ケルベロスがメリルに与える圧も落ち着いてしまう。

そうなれば、ケルベロスたちが上手く攻撃を繋ぎ始めたとしても、これまで通り、更に切傷が増えていく。

既に毒が体内に回っていることで、追加で毒を体内に入れこまれれば……より動きは鈍り、ただ狩られるのを待つだけの獲物となり下がる。

(最初から、この様に戦われていれば、私の勝ち目は薄かったでしょうが……これならば、もう問題は、なさそうですね)

勝てる。

そんな思いが強まるも、メリルは最後まで気を抜かない。
Bランクモンスターというだけで気が抜けない相手であり、地下遺跡に生息しているモンスターとなれば、更に警戒心を高めなければならない。

(しかし、ここまでくると……ケルベロスの打開策は、三位一体のブレス、でしょうか?)

先に手札を読んでおきたい。
どんな手を使って現状を打開しようとして来るのか考えていると……ケルベロスは一度後方に下がり……自身の体を、燃やした。
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