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良い匂いはすれど

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SIDE ラガス

「うん、良い戦いっぷりだったな」

相手の体勢を崩し、最後は背後から渾身の一撃を頭部に叩きこんでノックアウト……理想的な流れで終わらせたな。

「……そうですね。シュラにしては、珍しく頭を使って戦ったかと」

「はっはっは!! 確かにそうかもしれないけど、ちゃんとメリルの言いつけを守ったってことだろ」

あのオーガの中身がどうなってるのかは知らないけど、本当に強かった。
今更シュラが普通のCランクモンスターを相手に苦戦することはなく、未開拓地に生息してるCランクモンスターであっても、楽しもうとせず戦えば一分程度……もしくは一分掛からない程度の時間で討伐出来る。

「あの、オーガ……多分、Bランク?」

「シュラの奴が鬼火まで使ったのを考えれば、実質それぐらいの戦闘力があってもおかしくはなさそうだな」

「見たところ、先日私たちが戦ったオーガの様な、異常性はありませんでした」

「だな。でも、身体能力……特に防御力は結構びっくりするレベルだ。まぁ、それも解体して見れば解る話だ」

シュラに労いの言葉を掛け、早速解体開始。
すると、割と直ぐに何故あそこまでシュラの攻撃に耐えられる防御力を有していたのか解った。

「このオーガ……筋肉が分厚い。いや、密度が高いのか?」

「通常の個体よりも、筋肉の質が高いと?」

「質……と言うよりも、量が違うって感じかもしれないな」

そもそも、同じサイズのオーガと比べて、シュラがソロで討伐した個体はかなり重かった。

筋肉が異様に発達した個体か。
もしかして、この地下遺跡に生息するオーガは、これが標準サイズなのか?

だとしたら……とりあえず、シュラやセルシアにとっては嬉し過ぎる遊び場か。

「いやぁ~~、マジでガチガチに堅かったっすよ。それに、他のオーガと比べて大斧を受け止めた時の衝撃? も、他の個体と比べて結構重かったっす」

「筋肉の密度が高くなれば、イコール筋肉量が増えてる……ことになるのか? それなら、純粋なパワーも上がってていてもおかしくはないな」

「……筋肉量が増えれば、その分重さが増えてパワーはともかく、スピードは落ちそうに思えますが」

「体のサイズが大きければ、そうなるかもしれない。後は、体格に見合わない筋肉量を持ってたりすれば、スピードは落ちそうだが……見た目は変わらず筋肉量だけ増えていれば、スピードが損なわれることはなく、寧ろスピードアップに繋がるのかもしれないな」

「なる……ほど」

とはいえ、本当にそうなのかは、いまいち解らないけどな。
もっと専門的な知識を持ってれば上手く説明出来るんだろうけど、元がただの学生だからな。

「しっかし、まだ探索を始めて一日も経ってないっすけど、結構面白いモンスターがうようよいるっすね」

「地下遺跡だから、って考えは安直すぎるかな?」

「手付かずの未開拓遺跡だからではないでしょうか」

「手付かずって聞くと、お宝の匂いがするけど、初っ端からポイズンセンチネルとかDランク、Cランクのゴーレムとか普通じゃないオーガとかと遭遇するってなると、初見殺し? って感じだな」

事前にダンジョンに似てるようで、似てない部分があるってのは聞いてたけど、明らかにルーキーたちや実力がそこまで高くないハンターたちがお宝の匂いに釣られて挑めば、全滅待ったなしだろうな。

「それは……楽しく、ない?」

「普通のハンターたちからすれば、勘弁してほしいだろうな。俺たちの場合は全員強いから、そこまでビビる必要はないけど」

多分だけど、ブロンズランクのハンターたちでも、あまり進んで探索したくないレベルの遺跡じゃないかな。

「ラガス坊ちゃま。油断は禁物ですよ」

「解ってるよ、メリル。でも、あまり臆病になり過ぎるのも良くないだろ」

この後も度々モンスターに遭遇したが、ローテーションしながら全て討伐に成功。

昼間に考えた内容が合ってるかどうかは解らないけど、ひとまず部屋らしき場所で野営することにした。
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