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強者との殺し合いに……
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「ふっふっふ。ラガスも、探索してみたいって気持ちが湧き上がって来たか?」
「っ……湧き上がってきてないと言えば、嘘になりますね」
顔に出てたか?
まぁ、探索してみたいって気持ちが芽生えたのは事実。
「けど、色々と不安に思う件があるので、あまり一個のことに集中し過ぎるのもあれかなって」
「あぁ~~~、あの件かぁ…………そうだな。俺もある程度気に止めとかなきゃならねぇな。別に愛国心なんてもんは大してねぇけど、友人や顔見知りの連中を守れるなら、参加しねぇ訳にはいかない」
「俺も同じ気持ちです」
「なっはっは!!!! お前らはまだ若いが、確かに実力はピカ一だもんな。お前らにその気がなくても、上から
頼まれるだろうな」
「かもしれませんね……とはいえ、一部のバカが暴走してただけであれば、その方が良いのかもしれませんけど」
「…………罪もねぇ人間を殺すのは、気が引けるか」
「盗賊や裏の人間を殺すのとでは、訳が違うと……思ってます」
クソ絡みをしてきたバカ共をボコボコにしてきた経験はある。
ただ、別にそいつらも殺してはいない。
国と国の戦争になれば、戦うのは国民や国を守るために鍛え続けてきた兵士や騎士、魔術師。
そして俺たちと同じハンター…………仮にそうなれば、退いてくれないかな、なんてバカな事を考えてしまうな。
「そうだろうな。その考えは、大事に持っておいた方が良い……」
「……もしかしてですけど、そういった考えを忘れた人と、戦ったりしたことがあるんですか?」
「昔ちょっとな。まだパーティーで行動してた頃の話だ。そいつは……元傭兵、だったらしい。それなりに有名な奴だったらしいが、それまで積み重ねてきた名声を捨てた……なんでたと思う」
「………………同じ人間との殺し合いに、快楽を覚えたから、ですか?」
「そうだ。百点満点の回答だ」
そう言うと、エスエールさんがグラスに残っていたワインを一気に飲み干し、再度グラスに注ぎ始めた。
「シリアルキラーって呼ばれる連中とは、また違う。弱者をいたぶって殺すことに快楽を得ているのではなく、強者との戦いを心の底から楽しんでいる……そんな奴だった」
「……その人は、強者との戦い……だけでは満足できなかったんですか」
「そいつが言うには、モンスターが俺たちに向けて放つ怒気や殺気よりも、人間が人間に向けて放つ怒気や殺気の方が様々な感情が込められていて、複雑かつ濃密なものらしい」
放つ圧に、様々な感情が込められている、か。
人間がモンスターよりも考える力があることを考慮すると……そういった捉え方も出来るのか?
「加えて、強者と呼ばれる人間との戦いではなく、殺し合うことに快楽を感じていた」
「それが……本当の意味での、殺し合いを経験した人間が堕ちるかもしれない道、ということなんですね」
「あいつ、死ぬ時に恐怖で怯えた表情じゃなく、満足気な笑みを浮かべながら逝ったんだ……本当の意味で染まっちまってたんだって、今なら思う。だからこそ、同じ人を殺すことに対してある程度の罪悪感を持つのは大事だと俺は思うぜ」
「……心に刻んでおきます」
この世界で第二の人生を送ってから、特に盗賊とかは絶対に殺すか奴隷送りにべきだと思ってたけど、全員が全員……堕ちたくて墜ちたわけではないよな。
「ふっ、悪いな。こんな暗い話がしたい訳じゃなかったんだ。とにかく、ラガスたちが発見した地下遺跡は、割と面白味があって、探索のし甲斐があるところだぜ」
「みたいですね。少なからず興味は湧いてきました……って、ちょっと待ってください。その、地下遺跡って……俺たちが見つけた事になってるんですか?」
「あぁ、そうだぞ。ちゃんとギルドの方でも、発見者たちはラガスたちってことになってるぞ」
………………止めとこう。
もうツッコんだところで、意味はなさそうだし。
「っ……湧き上がってきてないと言えば、嘘になりますね」
顔に出てたか?
まぁ、探索してみたいって気持ちが芽生えたのは事実。
「けど、色々と不安に思う件があるので、あまり一個のことに集中し過ぎるのもあれかなって」
「あぁ~~~、あの件かぁ…………そうだな。俺もある程度気に止めとかなきゃならねぇな。別に愛国心なんてもんは大してねぇけど、友人や顔見知りの連中を守れるなら、参加しねぇ訳にはいかない」
「俺も同じ気持ちです」
「なっはっは!!!! お前らはまだ若いが、確かに実力はピカ一だもんな。お前らにその気がなくても、上から
頼まれるだろうな」
「かもしれませんね……とはいえ、一部のバカが暴走してただけであれば、その方が良いのかもしれませんけど」
「…………罪もねぇ人間を殺すのは、気が引けるか」
「盗賊や裏の人間を殺すのとでは、訳が違うと……思ってます」
クソ絡みをしてきたバカ共をボコボコにしてきた経験はある。
ただ、別にそいつらも殺してはいない。
国と国の戦争になれば、戦うのは国民や国を守るために鍛え続けてきた兵士や騎士、魔術師。
そして俺たちと同じハンター…………仮にそうなれば、退いてくれないかな、なんてバカな事を考えてしまうな。
「そうだろうな。その考えは、大事に持っておいた方が良い……」
「……もしかしてですけど、そういった考えを忘れた人と、戦ったりしたことがあるんですか?」
「昔ちょっとな。まだパーティーで行動してた頃の話だ。そいつは……元傭兵、だったらしい。それなりに有名な奴だったらしいが、それまで積み重ねてきた名声を捨てた……なんでたと思う」
「………………同じ人間との殺し合いに、快楽を覚えたから、ですか?」
「そうだ。百点満点の回答だ」
そう言うと、エスエールさんがグラスに残っていたワインを一気に飲み干し、再度グラスに注ぎ始めた。
「シリアルキラーって呼ばれる連中とは、また違う。弱者をいたぶって殺すことに快楽を得ているのではなく、強者との戦いを心の底から楽しんでいる……そんな奴だった」
「……その人は、強者との戦い……だけでは満足できなかったんですか」
「そいつが言うには、モンスターが俺たちに向けて放つ怒気や殺気よりも、人間が人間に向けて放つ怒気や殺気の方が様々な感情が込められていて、複雑かつ濃密なものらしい」
放つ圧に、様々な感情が込められている、か。
人間がモンスターよりも考える力があることを考慮すると……そういった捉え方も出来るのか?
「加えて、強者と呼ばれる人間との戦いではなく、殺し合うことに快楽を感じていた」
「それが……本当の意味での、殺し合いを経験した人間が堕ちるかもしれない道、ということなんですね」
「あいつ、死ぬ時に恐怖で怯えた表情じゃなく、満足気な笑みを浮かべながら逝ったんだ……本当の意味で染まっちまってたんだって、今なら思う。だからこそ、同じ人を殺すことに対してある程度の罪悪感を持つのは大事だと俺は思うぜ」
「……心に刻んでおきます」
この世界で第二の人生を送ってから、特に盗賊とかは絶対に殺すか奴隷送りにべきだと思ってたけど、全員が全員……堕ちたくて墜ちたわけではないよな。
「ふっ、悪いな。こんな暗い話がしたい訳じゃなかったんだ。とにかく、ラガスたちが発見した地下遺跡は、割と面白味があって、探索のし甲斐があるところだぜ」
「みたいですね。少なからず興味は湧いてきました……って、ちょっと待ってください。その、地下遺跡って……俺たちが見つけた事になってるんですか?」
「あぁ、そうだぞ。ちゃんとギルドの方でも、発見者たちはラガスたちってことになってるぞ」
………………止めとこう。
もうツッコんだところで、意味はなさそうだし。
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