856 / 974
欲しいのはそれだけ
しおりを挟む
「ま、だだッ!!!!!」
バルガスの連撃、フィーマの鬼火を纏った大斬によって、結界が半壊状態にまで追い込まれた。
まだ攻撃魔法の発動がギリギリ始まっていない。
そんな中でバルガスが狙ったのは……エルダーリッチの魔核ではなく、装備している杖だった。
「っ!!!???」
魔法をメインに使って戦う者にとって、杖がなくとも魔法は発動出来るが、発動速度の向上や威力、効力の増加に関わる重要なアイテム。
戦況を考えれば……目の前の四人から意識を逸らしてしまうなど、絶対にあってはならない。
だが、そんな戦況だからこそ、杖というアイテムが非常に重要なのもまた事実であり……エルダーリッチは杖を取り戻そうと、それにだけ意識が集中してしまった。
「疾ッ!!!!!!!!!!」
仕方ないと言えば、仕方なかった。
しかし……その行動が明確に、エルダーリッチの死へと繋がった。
ヴェルデは何故、レグディスが仕留める為の攻撃ではなく、武器を狙って攻撃したのかを瞬時に把握。
全身に疾風を纏い、渾身の突きを放った。
素材が惜しい?
確かに惜しくはあるものの、今なによりも欲しい物は……勝利、それだけである。
「はぁ、はぁ…………僕たちの、勝ちだ」
放たれた刺突は見事、エルダーリッチの魔核を貫いた。
リッチ……アンデットというモンスターの生体上、首を切断しただけでは完全に倒したとは言えず、当然ながら心臓という生物の重要器官もない。
故に、一番完全に絶命させるのに適した急所は……モンスターにとって第二の心臓である魔核を破壊すること。
「っしゃああああああ!!!!! やったぜ、ヴェルデ!!!!!!!」
「おわっ!!!???」
レグディスに飛び掛かられ、思いっ切り体勢を崩すヴェルデ。
「やったーーーーーーーーっ!!!!!!!」
「ぐっ!!!???」
「うごっ!!!!???」
レグディスに続き、フィーマも思いっ切り飛び乗った。
「全く……レグディス、フィーマ。どいてあげなさい。折角Bランクモンスターに勝利出来たのに、ヴェルデが窒息死してしまうわ」
「なっはっは!!! それもそうだな」
フィーマに対して「重い!!!!!」という失言をしてしまうことなく、体を起こし……四人で討伐したエルダーリッチの死体に目を向けた。
「……やったんだな、俺ら」
絶好調の状態だったとはいえ、無我夢中で戦い続けた。
恐ろしい攻撃魔法が体を掠ることは何度もあり、死の恐怖が途切れることはなかった。
「お疲れさん。最後の刺突は勿論良かったし、その前の杖を狙った攻撃もナイスだったな」
「あっ、ラガスさん…………本当に、ありがとうございました」
正直なところ、数か所罅が入っているところがあり、今すぐ腰を地面に下ろしてしまいたいところではあるが……まずは、改めて伝えなければならなかった。
「「「ありがとうございました」」」
「俺は、俺たちは依頼されたから当然の事をしただけ……って言っても、お前らにとってはそれはそれでこれはこれって話だよな…………感謝の意は、ちゃんと受け取ったよ」
依頼を受けたからこそ、当然の事をしたまで。
それは確かにハンターにとって当たり前の行動。
ただ、レグディスは初対面のラガスたちに対して、失礼な態度を取っていたことをちゃんと忘れてない。
(本当に人が良いって言うか、優しいっつーか、器が大きいと言うか…………本当に、この人たちと一緒に行動して改めて鍛えて、経験を積んでなかったら……このエルダーリッチには勝てなかった)
今回の勝利もギリギリと言えばギリギリの勝利ではあるが、もしラガスたちと出会う前までの自分たちが戦っていたらと思うと……欠片も勝利出来るイメージが浮かばなかった。
それはレグディスだけではなく、他三人も同じだった。
バルガスの連撃、フィーマの鬼火を纏った大斬によって、結界が半壊状態にまで追い込まれた。
まだ攻撃魔法の発動がギリギリ始まっていない。
そんな中でバルガスが狙ったのは……エルダーリッチの魔核ではなく、装備している杖だった。
「っ!!!???」
魔法をメインに使って戦う者にとって、杖がなくとも魔法は発動出来るが、発動速度の向上や威力、効力の増加に関わる重要なアイテム。
戦況を考えれば……目の前の四人から意識を逸らしてしまうなど、絶対にあってはならない。
だが、そんな戦況だからこそ、杖というアイテムが非常に重要なのもまた事実であり……エルダーリッチは杖を取り戻そうと、それにだけ意識が集中してしまった。
「疾ッ!!!!!!!!!!」
仕方ないと言えば、仕方なかった。
しかし……その行動が明確に、エルダーリッチの死へと繋がった。
ヴェルデは何故、レグディスが仕留める為の攻撃ではなく、武器を狙って攻撃したのかを瞬時に把握。
全身に疾風を纏い、渾身の突きを放った。
素材が惜しい?
確かに惜しくはあるものの、今なによりも欲しい物は……勝利、それだけである。
「はぁ、はぁ…………僕たちの、勝ちだ」
放たれた刺突は見事、エルダーリッチの魔核を貫いた。
リッチ……アンデットというモンスターの生体上、首を切断しただけでは完全に倒したとは言えず、当然ながら心臓という生物の重要器官もない。
故に、一番完全に絶命させるのに適した急所は……モンスターにとって第二の心臓である魔核を破壊すること。
「っしゃああああああ!!!!! やったぜ、ヴェルデ!!!!!!!」
「おわっ!!!???」
レグディスに飛び掛かられ、思いっ切り体勢を崩すヴェルデ。
「やったーーーーーーーーっ!!!!!!!」
「ぐっ!!!???」
「うごっ!!!!???」
レグディスに続き、フィーマも思いっ切り飛び乗った。
「全く……レグディス、フィーマ。どいてあげなさい。折角Bランクモンスターに勝利出来たのに、ヴェルデが窒息死してしまうわ」
「なっはっは!!! それもそうだな」
フィーマに対して「重い!!!!!」という失言をしてしまうことなく、体を起こし……四人で討伐したエルダーリッチの死体に目を向けた。
「……やったんだな、俺ら」
絶好調の状態だったとはいえ、無我夢中で戦い続けた。
恐ろしい攻撃魔法が体を掠ることは何度もあり、死の恐怖が途切れることはなかった。
「お疲れさん。最後の刺突は勿論良かったし、その前の杖を狙った攻撃もナイスだったな」
「あっ、ラガスさん…………本当に、ありがとうございました」
正直なところ、数か所罅が入っているところがあり、今すぐ腰を地面に下ろしてしまいたいところではあるが……まずは、改めて伝えなければならなかった。
「「「ありがとうございました」」」
「俺は、俺たちは依頼されたから当然の事をしただけ……って言っても、お前らにとってはそれはそれでこれはこれって話だよな…………感謝の意は、ちゃんと受け取ったよ」
依頼を受けたからこそ、当然の事をしたまで。
それは確かにハンターにとって当たり前の行動。
ただ、レグディスは初対面のラガスたちに対して、失礼な態度を取っていたことをちゃんと忘れてない。
(本当に人が良いって言うか、優しいっつーか、器が大きいと言うか…………本当に、この人たちと一緒に行動して改めて鍛えて、経験を積んでなかったら……このエルダーリッチには勝てなかった)
今回の勝利もギリギリと言えばギリギリの勝利ではあるが、もしラガスたちと出会う前までの自分たちが戦っていたらと思うと……欠片も勝利出来るイメージが浮かばなかった。
それはレグディスだけではなく、他三人も同じだった。
185
お気に入りに追加
3,497
あなたにおすすめの小説
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。
リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。
そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。
そして予告なしに転生。
ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。
そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、
赤い鳥を仲間にし、、、
冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!?
スキルが何でも料理に没頭します!
超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。
合成語多いかも
話の単位は「食」
3月18日 投稿(一食目、二食目)
3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる