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徹底した隠滅

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「ラガス坊ちゃま、ルーフェイスはいったい何を……もしや、良からぬ相手を感知したのですか?」

「多分そうだろうな。ルーフェイスなら問題ない。直ぐに帰ってくるはずだ」

予想通り、数十秒後には戻って来た。
ただ、何も加えておらず、少し落ち込んでいる。

「おかえり、ルーフェイス。それで、何があったんだ」

『……勘通り? 真っ黒な服で、全身を覆ってた人がラガスたちのことを見てたんだ』

「やっぱりか。もしかしたらとは思ったんだが…………でもよ、ルーフェイス。俺、あんまりその視線から、殺気を感じなかったんだよ」

『視線を送ってた人は、僕が近づくと、直ぐに逃げ出したんだ』

対峙してルーフェイスを殺すんじゃなくて、直ぐに逃げ出した、か…………もしかしなくても、ルーフェイスの詳細を知ってるのか?

「ラガス坊ちゃま、私たちにも解るように説明して貰えますか」

「分かった分かった。分かってるからそんな怖い顔すんなっての。まず、俺らに視線を向けてた黒ずくめの奴がいたんだ」

「っ、私は……感じられませんでした」

「俺もっす」

おいおい、そんなこの世の終わりみたいな顔すんなっての。

「顔を上げろ。俺だってもしかしたら? って感じで薄っすら気付けただけだ」

「な、なぁラガスさんよ。俺らは……誰かに狙われてたのか?」

「さぁ……どうなんだろうな。少なくとも、俺は向けられてた視線に殺意を感じなかった。それはルーフェイスも同じだったみたいだ」

恨みを買った覚えは……無きにしも非ずなんだよな~。

「それで、ルーフェイス。そいつをどうしたんだ?」

『捕えようと思ったよ。電撃を浴びせさせて、ここまで持ってこようとしたんだけど、動かなくなったと思ったら、急に体が崩れ始めたんだ』

……はっ!!!??? ギリギリで毒を飲み込んで自害したとかじゃなくて、体が崩れた!!??
それはさすがに度が過ぎると言うか……いや、速攻で毒を飲んで自害するのもあれだけど。

『服とかは持って帰ろうと思ったんだけど、服とか黒ずくめ男が装備してた、全部の物が崩れたんだ』

一切、証拠を残さないつもりってことか。
徹底してるといえばそうなんだろうけど……そこまでするか?

「ラガス坊ちゃま、その視線を向けていた人物は、いったい」

「ルーフェイスが捕えようとしたら、途中で全身が崩れ始めたらしい」

「なっ!!」

「ついでに体だけじゃなくて、服や身に付けてる装備品もだ」

「…………その人物は、私たちを殺そうとしていた訳ではない、のですよね」

「多分だけどな」

間違いなく、向けられた視線に殺気は感じなかった。

でも、このまま捕まれば不利益が出る……そう判断した場合、証拠を残そうとしなかった。

仮にエスエールさんがトップの探求者以外のクランメンバーが俺たちを観察していたのであれば、俺たちに殺気を送らず、ただ視線を送ってたことは理解出来る。

ただ……その証拠を残さないように徹底していたのであれば、その線は消える。

「なぁ、その……こんな事訊くのは失礼ってのは解ってんだけどさ、ラガスさんたちは裏の連中から狙われる様な件に首を突っ込んだことがあるのか?」

「レグディス……最終的には学園の大半の連中とは仲良くなったけど、入学当初はバチクソに嫌われてたんだぞ。ハンターになってから云々関係無しに……うん、そういうの関係無しに狙われる理由がないとは言えないんだよ」

「お、おぉう。そうか。それは、なんかすまん」

未だに俺がセルシアのパートナーであることが気に入らない連中はいるだろうし、あのクソバカ第三王子が完全に諦めたと断言も出来ない。

けど、観察するのにここまで証拠隠滅を徹底してるってなると……ちょっと考える必要があるな。
今日の探索が終わったら、またエスエールさんと会わないと。
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