上 下
831 / 970

関係的に……

しおりを挟む
「その向上心に惚れて、ラガスさんに告白するような女子はいなかったの?」

話がやや一周した。
セルシアがパートナーであることは解った。
ただ、フィーマにはやや疑問に思うことがあった。

「フィーマ、ラガスさんのパートナーはセルシアさんなのですよ」

「それはちゃんと覚えてるって、鳥頭じゃないんだからさ。でもさ、ラガスさんもちゃんと貴族なんでしょ」

「…………そうですね。ラガス坊ちゃまは、ちゃんと貴族ですね」

中々の間を置いてからその通りだと答えたメリル。

男爵家の令息。
それは紛れもなく貴族と言えるのだが、ラガスの場合あまりその通りだと言える要素が多くない。

「貴族ってさ、嫁が一人って決まりはないんでしょ。それなら、えっと……あれだよ、側室を狙って近づいてくる人もいるんじゃないの?」

ようやく、ファールナは何故似た様な質問を再度したのか理解した。

ファールナも貴族ではないが、貴族の男が複数の妻を持つことは、そこまで珍しい事ではないということぐらいは知っていた。
そしてラガス自身は男爵家の令息という立場であっても、その強さは超規格外。
魔靴というマジックアイテムを造れる技術力なども考えれば、男爵家以上の立場を持つ令嬢たちが群がってもおかしくない。

「それは…………なくは、なさそうですね。メリルさん、その辺りはどうだったのでしょう」

「確かにラガス坊ちゃま自身の価値は、男爵家の四男という立場に収まることはないでしょう。しかし……まず、セルシア様は公爵家の方です」

公爵家とは、貴族の中でも王家の血統が混ざることが珍しくなく……貴族の中でも、基本的にトップオブトップの家。

「セルシア様自身は非常に温和な方ですが、必要以上に恐れてしまうのは珍しくありません」

「ふ~~~~ん? セルシアさんが超強いこともあって、そうなるものなのかな?」

「そこもあるでしょう。そして……おそらく、これがメインというべきでしょうか。先程、ラガス坊ちゃまがセルシア様の婚約者候補だった方を叩き潰したことを覚えているでしょうか」

「勿論覚えてるよ。やっぱラガスさんって凄いんだな~って改めて思った」

フィーマの言葉に、ファールナも同意しながら頷く。

「そう言ってもらえると、従者である私としては幸いです。ただ、男爵家の令息が、侯爵家の令息を……一応公式と言える場で叩き潰した……死闘を演じた訳ではなく、完膚なきまでに叩き潰し、圧倒的な差を見せつけたのです」

「……っ、なるほど。他の学生たちは、その光景を見て凄いという感情よりも、恐怖が勝ってしまったのですね」

「えぇ、そうです。特に一年生の間は、多数の生徒たちと関わることはありませんでした」

とはいえ、ラガス自身がコミュ障だった訳ではなく、兄のアリクや姉のクレアとの交流から上級生たちとはそこまで仲が悪くはなく……公式の場で実績を出し、三本角のオーガジェネラルが率いるオーガの大群の殲滅の主役になったことで、徐々に溝は埋まっていった。

「ですが、その後は色々とあってその距離も縮まっていったのですが、ラガス坊ちゃまの実力は……入学時から、学生レベルではありませんでした」

「学園に、入学、してから……体も、大きくなった、よね?」

「セルシア様の言う通り、体が大きくなれば、接近戦も得意であるラガス坊ちゃまの戦闘力は確実に増します」

仲間内であれば、シュラが一番大きな体格を有しているが、ラガスも決して小さくない。

「それもあり、他の学生たちからすれば……ラガス坊ちゃまは同級生というよりも、教師に近い存在でした」

本気で強くなりたい。
上を目指す為に、頭を下げて教えを乞うてくる相手を、ラガスは拒むことはなかった。

そんな流れもあって、ラガスと同級生たちの関係は学生と教師。

そうなってくると、女子生徒たちも意欲的な生徒たちと同じく、ラガスに教えを乞うことはあっても、そういった感情を向けることは自然と起こらなかった。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

悪役令嬢は蚊帳の外です。

豆狸
ファンタジー
「グローリア。ここにいるシャンデは隣国ツヴァイリングの王女だ。隣国国王の愛妾殿の娘として生まれたが、王妃によって攫われ我がシュティーア王国の貧民街に捨てられた。侯爵令嬢でなくなった貴様には、これまでのシャンデに対する暴言への不敬罪が……」 「いえ、違います」

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

処理中です...