上 下
778 / 954

諦めに近い?

しおりを挟む
「お疲れ様でした。ラガスさん、セルシアさん、メリルさん、シュラさん」

ルーキーたちの指導期間が終わった。
それに関する報告を終えると、受付嬢が深く頭を下げた。

「俺たちは言われた通りの仕事をしただけですよ」

「いえいえ、ラガスさんたちが彼等を指導してくれたからこそ、あの子たちはこれまでよりずっと広い視野を持てるようになりました。その視野は、彼らの今後に役立つでしょう」

もしかしなくても、そこまでを見越してわざわざ俺たちに依頼してきたのか?

ぶっちゃけ失敗してた可能性もあると思うんだが……まぁ、それだけギルドが俺たちを評価してくれてたと思えば、有難いか。

「ところで、これからどうするか……ご予定は決まっていますか?」

「特に決まってないですけど、そろそろ別の街に行こうかと考えてます」

「そうでしたか」

本当にまだ何処に行くかは決定してないけど……とりあえず、強い何かが居そうな街に向かうだろうな。


受付嬢さんとの話を完全に終え、昼飯を食い終えてから本格的に次の目的地に着いて話し合いを始めた。

「因みにですが、ラガス坊ちゃまはこれといった場所を考えていますか?」

「とりあえず、なるべく退屈しないところ、かな」

複数の人型のモンスターと戦う……戦争を想定した戦いはもう十分に詰めた。
ヴァンパイアや骨だけになったCランクやBランクのモンスターとも戦えたから、いきなり変化球が飛んできた時のケースも上手く対応出来るようになったと思う。

「俺も同じ意見っすね!!」

「……まぁ、それはそうですね。では……一旦、まだ起こるかどうか分からない件に関しては、置いておく方向でよろしいでしょうか」

「その方向で良いと思う」

せっかく冒険に出たばかりなのに、そういう事ばかり意識してても疲れるしな。

「…………そういえばラガス坊ちゃま、紅蓮の牙からの依頼は全て終わりましたか?」

「……後もうちょいだな」

「でしたら、ラガス坊ちゃまが魔靴の製作依頼を終えるまでに、次の行き先を決めたいところですね」

つまり、俺は家で留守番ってことか……いや、依頼を受けたから仕方ないんだけどさ。

「そういえば……クレア姉さんたちは、あれについて知ってんのかな」

「っ、どうでしょうか。パーティーの面子を考えれば、どこからか通達されていてもおかしくはありませんが……もし心配であれば、お手紙で伝えておいた方がよろしいかと」

「そうしとくよ」

んで、次の目的地だったな。

……色々とあるんだろうけど、色々あるからこそ纏まらないな。

「ん~~~~~~…………どうせなら、ハンターらしく未知の場所を探索してみたいな」

「未知の場所、ですか……」

次に向かう場所としては、決して悪くない。
寧ろハンターとしては当然の好奇心。
しかし……メイドとして、主人やセルシアをそんな場所に連れて行くのはいかがなものか……って考えがもろ顔に出てるな。

「…………そうですね。ルーフェイスもいることですし、予想外の事態が起こったとしても、なんとか乗り越えられるでしょう」

「おっ、珍しいじゃねぇかメリル! 俺も良い提案だとは思ったけど、お前がまさか賛成するとはな!」

「今、私たちはハンターとして活動しています。それを考えれば、未知の場所に足を踏み入れようとするのは珍しくありません。ただ、そう言い聞かせても不安は残りますけどね」

おぉ~~~、メリルの考え方が柔らかくなった。
諦めたと言えなくもないけど……とりあえず良い方向に向かってるのは間違いないな。

「未知の場所と呼ばれる場所には、いくつか心当たりがあります」

「おっ、今すぐ行ける感じか?」

「……ラガス、先程の会話を忘れたのですか。まだラガス坊ちゃま個人の仕事が残っています。それが終わるまでに、私たちでその情報を今一度しっかり集めるのですよ」

シュラが二人と一緒に行動してくれてるなら、ナンパの心配は必要なさそうだな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

処理中です...