上 下
739 / 950

迅速な処理

しおりを挟む
「お、お待たせしました!!」

職員が慌てて戻って来たけど、特に豪華すぎる待遇を受けたわけではない……って思ったのは最初だけだった。

俺たちが現金をチップに交換した後、明らかに周囲にそれなりにできる職員が増えた。

これは多分あれかな。
俺たちが同じテーブルに座った人たちがイカサマをしたり、因縁を付けながら絡んできたりした時の為に、迅速に対応するためだな。

まっ、悪い気はしないな。
主に公爵家の令嬢であるセルシアがいるからだろうけど、面倒事を店側が対処してくれるのはありがたい。

「それじゃ、適当に楽しむか」

ルールは解っているので、各々自由に楽しむ。

(いきないエースが二枚、か)

トランプという紙がダンジョンの宝箱から手に入る為か、ポーカーやその他のトランプを使った賭け事はそれなりに盛んなんだよな。

つっても、トランプ以外のカードゲームが出ないってのは……謎だよな~~。
もしかしたら……日本の色合いが強い国のダンジョンだと、花札が出たりするのかもな。

「ふふん」

おっちゃんは八と七のツーペアか。
得意気なところ悪いが、役はこっちの方が上なんだよな。

「フルハウス」

「「「っ!!??」」」

「ッ……クソ!」

手札を入れてエースが三つと七のペアが一つ。
初回から強気に出て正解だったな。

とはいえ、手元にキングが二枚来たとしても、残り五枚で何も役が揃わない場合もある。
その際は一応勝負に出たが、四のスリーカードで負けた。

逆に十が二枚手札に来た時に嫌な流れを察知して、上手くフォールドして逃げられたケースもある。
そのゲームで勝利した人はスペード揃いのフラッシュだった。

後で他のゲームもやったけど、やっぱりポーカーが一番楽しかったな。

「おい、てめぇ! クソが「お客様、向こうでお話ししましょうか」な、なんだよお前ら!!」

……一応この店に来店したのは初めてだが、交換したチップは初期量より五割ほど増えていた。
俺以外のメンバーも何だかんだでチップの量を増やしており、シュラなんてこういうのが苦手そうなイメージがあるが、見事三倍まで増やしていた。

初来店だからこそのビギナーズラックが発動してるのかもしれないけど……負けが続いてる人たちからすれば、俺たちがガキが順調に増やしてるのは物凄く目障りなんだろうな。

「大丈夫ですか、ラガス坊ちゃま」

「全くもって大丈夫だ。店側が迅速に処理してくれるみたいだからな」

「そうみたいですね……しかし、そうなると店を出てから問題ですね」

メリルの言うことは解る。

店の中で起こった問題は後々店に関わってくるから、カジノ側も必死で対応するが、店の外で起きた問題に関しては別問題だ。

「でも、職員から一応セルシアの情報を伝えられるだろうから、下手に絡んでくることはないんじゃないか?」

「オルトーとセルシア様の実家がどれだけ離れてると思ってるのですか。それに、今の立場は一介のハンターです」

「……もう少し大局を見てくれると嬉しいんだが、それが出来る人であればそもそもガキが運良く勝ってるからといって、絡んできたりしないか」

ったく、本当に面倒事に困らないな。
今回に限っては俺が意図的に何かしたりしてないってのに。

「面倒っすね……上手く乗せて、この場でぶっ潰しますか?」

「悪い手じゃないと思うけど、相手にするのも面倒だから、とりあえず放っておこう」

「分かったっす」

結局、それ以降面倒な輩が絡んでくることはなく、全員それなりに勝って店を出た。

店を出てからもあのギャンブル依存症に見えた兄ちゃんを店側がどうにかしてくれたからか、店外で絡まれることはなかった。


「……えっと、もう一回言ってもらっても良いですか」

「その、ギルドとしましてはラガスさんたちにルーキーたちへ、ダンジョン探索の指導を行って頂きたいと思っております」

目指せ五十層!!! って思ってたら、別方向から面倒が飛んできた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

処理中です...