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上位互換

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「ラガス坊ちゃま、地上に戻った際、どうなさいますか」

モンスターがいなかった部屋での食事中、メリルがもう少し詳しく言葉にして欲しい質問をしてきた。

「……俺たちを狙って潰そうとした奴らと、俺たちにモンスターパーティーを押し付けようとした連中について、か?」

「モンスターパーティーの件に関しては偶然ですので、彼らがいなくなったとしても大した騒ぎにはならないと思いますが、裏の人間を使って私たちを殺そうとした連中は別だ」

「そこそこ多くの人間が見てたっすからね。あいつらが消えたら、変な噂が立つかもしれないっす」

もしかしたらの話じゃなくて、多分そういう話をしだす奴はいるだろうな。

噂話なんて、この世界では一種の娯楽だ。
好きなように噂を拡大していくのが大好きな人間は多い。
それはハンターも貴族も変わらないだろう。

「そうかもしれないな。でも、ハンターとして自由に活動してれば、もうそれは今更って話なんだろ」

「それはそうなのですが……噂の元を潰せることに越したことはないと思いますが」

潰すってことは、あれだよな。
つまり殺すってことだよな。
却下却下、それこそダメだっつーの。

「メリル、お前がこの前行った通り、元が屑な連中と仲良くする必要はないと思ってる。でも、そういう屑ではない連中にまで怖がられるのはちょっとな」

「ッ、そうでしたね。その可能性を忘れていました」

噂ってのは、どういう形で広がってくのか解らない。

俺たちに関わる屑連中は必ず不幸に見舞われるとかなら別に良いんだけど、関わる人全員が不幸になるとかそういう噂は勘弁してほしい。

「……あれっすね、世の中そこそこ生き辛いっすね」

「その分楽しく生きてるからな。しょうがない部分はある」

貴族出身ってだけで、この世界では裕福な部類なんだ。
実際に男爵家にしてはそれなりに裕福で、生活に困らなかったからな。

「とりあえず、あいつらが殺されたであろう件に関しては放っておけば良い」

「解りました」

小さい事は気にしなくて良いって訳じゃないけど、あんまりにも気にし続けてたらキリがない。

三十層のボス部屋前に到着するまではあんな屑共みたいな同業者と遭遇することなく、無事到着。

「ラガス坊ちゃま、戦闘前にここまでがっつりした料理は遠慮した方がよろしいと思いますが」

「中にいるボスモンスターはいずれBランクだろ。飯の時間としては丁度良いし、今食べておいても問題無いだろ」

俺の前に四組もパーティーがいるから、俺たちの番が回ってくる頃には消化が終わってはいないだろうけど、満腹感はそこそこ消えてる筈だ。

「確か、デスシリーズのどれかが出てくるんでしたっけ?」

「そうだ。四体が一度に出てくるなら本気で気を引き締めないとあれだけど、一体だけだからな」

リビングデット系モンスターの上位互換的な存在。

鎧はリビングデット系の様に古くなく、寧ろ艶がある質感。
身体能力や技術も数段上。

主にデス・ナイトにウォーリアー、ウィザード、ランサーなどが存在する。
三十層のボスとして登場する個体はこの四体の中の一体。

ウィザードだけは自身が魔法を発動するための時間を稼ぐために下位のモンスターを召喚するが、召喚されるモンスターは主にスケルトンなど。

「ラガスさん、ウィザード以外は俺が戦っても良いっすか」

「……私も、戦い、たい」

おっと、俺は別に構わないと思ってたけど、ちょっと前にシュラがそれなりに戦えるリビングデットナイトと戦ったのを考えると……今回は譲るべきかもな。

「うっ、分かったっす。今回はセルシア様に譲ります」

「ありが、とう。シュラ」

「当然の判断です。それに……三十層を越えれば、一般的なエリアでも遭遇することは珍しくありません」

メリルの言う通りだ。
他のダンジョンの内部はそこまで詳しく知らないが、地上基準で考えれば本当に恐ろしくて……鍛え甲斐があるところだ。
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