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止まらない屑ラッシュ

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「ただいま」

「ワゥ」

「おかえりなさいませ、ラガス坊ちゃま、ルーフェイス。それで……どうなりましたか」

「きっちり交渉して、あのバカどもを殺ってくれることになったよ」

「やはりあのバカたちでしたか……何故ラガス坊ちゃまにそういう刃を向ければ、自分に返ってくると解らないのでしょうか」

「ハンターは危機管理能力が高くないと生きていけないけど、全員が全員その事実を理解してる訳じゃないってことだろ」

つか、今回に関してはそういった知識があるないの話じゃなくて、プライドの問題か。

「お疲れ様っす、ラガスさん。暴れたっすか?」

「別に対して暴れてないよ。ただ壁を一枚ぶん殴って壊しただけだ」

「ラガス坊ちゃま、それは暴れてないと言いませんよ」

「細かい事は気にすんなって。んじゃ、用事も終わったことだし、さっさとダンジョンに行こう」

裏の連中を相手に一々気を使うのは面倒。
それに、一応周囲に人がいなかどうかは確認してから殴った。

壊した壁は……俺たちを殺そうとした慰謝料? と思えば安いもんだろ。


「リビングデット、レイス系のモンスターが増えてきたっすね」

「そうだな。レイスはグールとかと同じく光弾で殺しやすいけど、リビングデットは俺の光弾だと、上手く撃たないと殺せない奴がチラホラいるな」

二十一階層に転移し、今日も元気にダンジョン探索。

上の階層と同じくスケルトンとかグールも出現するけど、割合としてはリビングデットやレイス系の方が六割……五分っていったところかな。

「やっと、ちょっと、面白く、なってきた、と思う」

「はは、確かにそうだなセルシア。ようやく戦い応えがあるモンスターがチラホラと増えてきた」

「もう少しダンジョン内という危機感を持ってほしい……と言うには、まだ温いですね」

おっ、メリルもようやく解ってきた?

ルーフェイスが一緒に居ることをあてにしたら駄目ってのは解ってるんだけど、まだ不足の事態が襲ってきたとしても、俺たちだけでなんとか出来る自信がある。

『ッ、ラガス……前の方から、大量の何かが来る』

『大量ってなると……噂のモンスターパーティーってやつか!!』

バカな反応であることは理解してる。
でも、ここ最近結構退屈してた部分があるから、モンスターの大群ってだけで、ちょっとワクワクしてしまう。

「ラガス坊ちゃま」

「解ってる。迎え撃つぞ」

「その判断は否定しませんが、モンスターの大群の前にハンターたちがいます」

「ん? 確かにそうみたいだな」

モンスターパーティーに遭遇したのであれば、まず逃げる。って先輩や職員から教わるもんだし、別に情けなくはない……これも何かの縁だ、そのまま助けよう。

「ッ!? おい、あいつらに押し付けるぞ」

「ナイス生贄!!!」

……こういう場面に遭遇した場合、力を持っている俺たちが彼らを助けるのは、割と自然で当然。
なんて思ってた時期が俺にもあった。ほんの数秒前まで。

「……ラガス坊ちゃま」

「解ってる。捕まえてそのまま群れの中心に放り込む。あいつらが死ぬまで下手に数を減らすなよ」

「「「了解」」」

「ワゥ!」

……一、二の、三!!!!

「おわっ!?」

「な、何すんだお前ら、って、やめ、止めろ!!!!」

「ひ、人殺し!!!!!」

ルーキーたちにモンスターパーティーを押し付けようとする奴らに人殺しなんて言われてたまるか。

「この、クソが!!!! お、お前らも、戦えよ!!!!!」

「お前らの会話が、聞こえてないとでも、思ってるのか? 随分と、都合が良い頭を、してるんだな」

「「「ッ!!??」」」

声に出さず、目だけで合図したり……そういうやり取りだけだったらバレなかったかもしれないのに。

まっ、後ろでそれらしき声が聞こえたら、きっちりダンジョンの栄養? になってもうのは間違いないけどな。
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