684 / 989
ラガスにはない
しおりを挟む
傷だらけでもさすがオーガ、って思える程の身体能力だが、それだけでは全く危機感を感じない。
数分をも経たずに仕留め終わり、解体タイムに突入。
「オーガの集団が傷だらけ、か……他のハンターが来なかったし、他のモンスターにやられたって考えるのが妥当だよな」
「ですね。しかし、オーガの集団を傷付けるモンスターとなると……やはり、トロールでしょうか?」
「そいつしかいねぇだろ。オーガとトロールが仲良しこよしって話は聞かねぇし」
シュラの言う通りだ。
オーガから喧嘩を売ったのか、それともファイルトロールたちが縄張りを広げた? どっちかは解らないが、モンスター内でも争いが勃発してるのは間違いないな。
解体後、ギルドで得た情報元へ向かうが、足跡や争った痕跡は見つかったが、その場にファイルトロール、もしくはトロールが現れることはなかった。
「本日は収穫なし、ですね」
「そういうもんだろ。仮にファイルトロールが多少頭が回る個体なら、見つかりにくい場所を拠点としてるかもしれない」
「トロールがそこまで考えるでしょうか?」
「モンスターは総じて俺らより知能が低いが、そう思って嘗めてると足元を掬われる。そういう予想外な点が、恐ろしい部分の一つだろ」
世の中にはフェリスさんみたいに、人の言葉を喋るモンスターだっている。
人の言葉を喋ることが出来るってだけで知能が高いと断言するのはあれかもしれないが、油断ならない個体ではあるだろう。
「群れの、トップは、危機管理も、大事」
「強さよりも臆病さが大切って話だな。群れを守るってなら、確かに一番大事な能力だ」
「ラガス坊ちゃまにはない能力ですね」
「おいおい、別に全くない訳じゃないだろ」
「ラガス坊ちゃまの場合は危機だと解っていても、ニヤニヤと笑いながら飛び込んでいくでしょう」
多少の反論はあっさりと打ち消された。
三本角のオーガジェネラルにソロで挑んだ身としては、反論の余地がない。
「メリル、そこがラガスさんの魅力ってやつだろ」
「……そうかもしれませんね」
おや? もうちょい小言が飛んでくると思ったが、珍しくそれ以上矢が飛んでこなかった。
心境の変化でもあったのかと考えていると、ハンターギルドへ帰還。
依頼達成を報告して報酬金を受け取り、素材買取カウンターで本日の成果を渡す。
本来であればオーガの皮も魔靴の素材として使えなくはないんだが、怪我を負っていて使いにくいので、全て売却。
「これは、オーガの皮、ですね」
「何かに襲われた様子のところに遭遇して討伐しました」
一応ファイルトロールに繋がる情報かもしれないので伝える。
「オーガが……ありがとうございます」
「いえ」
伝えるべき情報を伝え、素材の買取も終わった。
オーガの骨が手に入ったんだし……腕が鈍らない様に、とりあえず一足造るのもありかな。
って…………今度はなんだ?
「おい、お前。お前もファイルトロールを狙ってんのか」
ハンターギルドから出ようとしたら、先日絡んで来たルーキーたちを従えるように、一人のルーキーが立ちふさがる。
種族はシュラと同じ鬼人族。
体格だけはシュラより良いし、先日絡んで来たルーキーたちと比べればまともだな。
「そうだな。それが目的でこの街に来た」
後ろの若干おどおどしてるチンピラたちと違って真っすぐな目をしてることもあり、質問にはとりあえず答える。
「ッ…………そうか」
ん? 俺になんだかんだで喧嘩を売りに来た、って訳ではないのか?
「お前、同族のよしみで忠告しておくぞ。下手にファイルトロールに挑んだところで、死ぬだけだ。無茶は止めとけよ」
一歩前に出て、シュラはいきなり俺に声をかけてきた同族に対し、本当に同族のよしみで忠告をした。
シュラ的には侮りとか、目の前の同族を悪い意味で下に見たりはしてない、と思う。
本当に善意で言ったんだろうけど、その善意が伝わることはなかった。
数分をも経たずに仕留め終わり、解体タイムに突入。
「オーガの集団が傷だらけ、か……他のハンターが来なかったし、他のモンスターにやられたって考えるのが妥当だよな」
「ですね。しかし、オーガの集団を傷付けるモンスターとなると……やはり、トロールでしょうか?」
「そいつしかいねぇだろ。オーガとトロールが仲良しこよしって話は聞かねぇし」
シュラの言う通りだ。
オーガから喧嘩を売ったのか、それともファイルトロールたちが縄張りを広げた? どっちかは解らないが、モンスター内でも争いが勃発してるのは間違いないな。
解体後、ギルドで得た情報元へ向かうが、足跡や争った痕跡は見つかったが、その場にファイルトロール、もしくはトロールが現れることはなかった。
「本日は収穫なし、ですね」
「そういうもんだろ。仮にファイルトロールが多少頭が回る個体なら、見つかりにくい場所を拠点としてるかもしれない」
「トロールがそこまで考えるでしょうか?」
「モンスターは総じて俺らより知能が低いが、そう思って嘗めてると足元を掬われる。そういう予想外な点が、恐ろしい部分の一つだろ」
世の中にはフェリスさんみたいに、人の言葉を喋るモンスターだっている。
人の言葉を喋ることが出来るってだけで知能が高いと断言するのはあれかもしれないが、油断ならない個体ではあるだろう。
「群れの、トップは、危機管理も、大事」
「強さよりも臆病さが大切って話だな。群れを守るってなら、確かに一番大事な能力だ」
「ラガス坊ちゃまにはない能力ですね」
「おいおい、別に全くない訳じゃないだろ」
「ラガス坊ちゃまの場合は危機だと解っていても、ニヤニヤと笑いながら飛び込んでいくでしょう」
多少の反論はあっさりと打ち消された。
三本角のオーガジェネラルにソロで挑んだ身としては、反論の余地がない。
「メリル、そこがラガスさんの魅力ってやつだろ」
「……そうかもしれませんね」
おや? もうちょい小言が飛んでくると思ったが、珍しくそれ以上矢が飛んでこなかった。
心境の変化でもあったのかと考えていると、ハンターギルドへ帰還。
依頼達成を報告して報酬金を受け取り、素材買取カウンターで本日の成果を渡す。
本来であればオーガの皮も魔靴の素材として使えなくはないんだが、怪我を負っていて使いにくいので、全て売却。
「これは、オーガの皮、ですね」
「何かに襲われた様子のところに遭遇して討伐しました」
一応ファイルトロールに繋がる情報かもしれないので伝える。
「オーガが……ありがとうございます」
「いえ」
伝えるべき情報を伝え、素材の買取も終わった。
オーガの骨が手に入ったんだし……腕が鈍らない様に、とりあえず一足造るのもありかな。
って…………今度はなんだ?
「おい、お前。お前もファイルトロールを狙ってんのか」
ハンターギルドから出ようとしたら、先日絡んで来たルーキーたちを従えるように、一人のルーキーが立ちふさがる。
種族はシュラと同じ鬼人族。
体格だけはシュラより良いし、先日絡んで来たルーキーたちと比べればまともだな。
「そうだな。それが目的でこの街に来た」
後ろの若干おどおどしてるチンピラたちと違って真っすぐな目をしてることもあり、質問にはとりあえず答える。
「ッ…………そうか」
ん? 俺になんだかんだで喧嘩を売りに来た、って訳ではないのか?
「お前、同族のよしみで忠告しておくぞ。下手にファイルトロールに挑んだところで、死ぬだけだ。無茶は止めとけよ」
一歩前に出て、シュラはいきなり俺に声をかけてきた同族に対し、本当に同族のよしみで忠告をした。
シュラ的には侮りとか、目の前の同族を悪い意味で下に見たりはしてない、と思う。
本当に善意で言ったんだろうけど、その善意が伝わることはなかった。
36
お気に入りに追加
3,501
あなたにおすすめの小説
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる