679 / 965
骨が折れる、らしい
しおりを挟む
実家への休暇が終わった後、当然と言えば当然だが、今度はセルシアの実家へと向かう。
屋敷ではセルシアの卒業を祝うパーティーが行われた。
セルシアの顔を見る限り、事前に告知はされてなかったんだろうな。
俺も知らなかったし、学園を卒業したという事に関して、そこまで祝うか? という疑問はある。
ただ……公爵様たちからすれば、祝いたくなる出来事なんだろう。
セルシアも黙ってパーティーに参加した。
「ほぅ、ファイルトロールに挑むのか」
「自分たちがノールスに到着するまでに誰かが討伐するかもしれませんが、それでも向かう価値はあるモンスターだと思うので」
「うむ。その価値はあるだろう。私も過去に何度か戦ったが、どの戦いも手汗握るものだった」
現在、娘に祝いの言葉を全て伝えた公爵様と俺は、テラスでワインを吞みながら今後について話し合っている。
にしてもこのワイン……赤ワインは個人的に少し呑みにくいと思っていたが、無茶苦茶吞みやすい……ボトルで幾らするのか訊くのが怖いな。
「して、今回は君がメインで挑むのか?」
「とりあえずはその予定です」
「そうか……ファイルトロールは、稀にツートップの体制で群れをつくることがある」
「っ!? それは、本当ですか?」
そんな話、初めて聞いた。
そりゃ隅々までファイルトロールについて調べた訳じゃないが、父さんたちからも聞いたことがない。
「本当に極稀に起こる話だ。ただ、私はその極稀に遭遇したことがある」
「……やはり、苦戦を強いられましたか?」
「君たちなら問題はないと思うが、可能なら分断するべきだ。一人であのコンビネーションを対応するのは、骨が折れる」
「っ!!??」
思わずまだワインが入っているグラスを落としそうになった。
トロールやオーガ、オークといった人型のモンスター同士がコンビネーションを取ることは珍しくない。
だが、ロウレット公爵様ほどの方が、そのコンビネーションに対して、骨が折れると確かに口にした。
「そんなに意外な情報か?」
「公爵様が骨が折れると言うほど優れたコンビネーションを持っているとなれば、少なからず驚きますよ」
「はっはっは! 安心しろ。君一人が強い訳ではない。例えその群れと遭遇しても、負けることはないだろう」
……やっぱり、メリルたちが褒められるのは嬉しいもんだな。
この後、少々赤ワインを飲み過ぎてぶっ倒れた。
気付いたときには知らないような知ってるような天井状態。
テラスでぶっ倒れたのかと思ったが、どうやら自力で部屋には戻ることが出来たらしい。
小さな頭痛に悩まされながら着替えてると、ノックして入ってきたセルシアの弟と妹であるフォースとリッシュに模擬戦を申し込まれた。
とても活き活きとした楽しそうな表情を浮かべていたが、さすがにもう少し後にしてくれと返す。
まだ朝飯を食べてないし……なんなら、珍しく朝風呂に入りたい気分。
メリルにそれを伝えると、既に覚えたであろう風呂場へ連れていってくれた。
他のメイドさんたちも交えて、お背中流しましょうと言いながら付いてこようとしたが……なんとかギリギリのところで抵抗に成功。
やはり酔いと、その後の頭痛は恐ろしい。
もう少しでメリルのいたずらに押し切られそうになった。
入浴後は朝食を取り、双子に頼まれた模擬戦の相手を引き受ける。
解ってはいた事だけど、以前模擬戦を行った時と比べて、全てのステータスは確実に一段階向上していた。
本当にロッソ学園に入学するなら……他の学園が可哀想としか言えない。
他学園の方から、入学前に是非うちの学園にご入学を!!! って勧誘されそうだな。
まぁ、別に俺やセルシアの方からロッソ学園に入学を勧めてるわけではないし、どうやら公爵様や奥さんの方からロッソ学園への入学を勧めてるわけでもないみたいだし……もう、そうなったらそうなったらで仕方ないって話だな。
屋敷ではセルシアの卒業を祝うパーティーが行われた。
セルシアの顔を見る限り、事前に告知はされてなかったんだろうな。
俺も知らなかったし、学園を卒業したという事に関して、そこまで祝うか? という疑問はある。
ただ……公爵様たちからすれば、祝いたくなる出来事なんだろう。
セルシアも黙ってパーティーに参加した。
「ほぅ、ファイルトロールに挑むのか」
「自分たちがノールスに到着するまでに誰かが討伐するかもしれませんが、それでも向かう価値はあるモンスターだと思うので」
「うむ。その価値はあるだろう。私も過去に何度か戦ったが、どの戦いも手汗握るものだった」
現在、娘に祝いの言葉を全て伝えた公爵様と俺は、テラスでワインを吞みながら今後について話し合っている。
にしてもこのワイン……赤ワインは個人的に少し呑みにくいと思っていたが、無茶苦茶吞みやすい……ボトルで幾らするのか訊くのが怖いな。
「して、今回は君がメインで挑むのか?」
「とりあえずはその予定です」
「そうか……ファイルトロールは、稀にツートップの体制で群れをつくることがある」
「っ!? それは、本当ですか?」
そんな話、初めて聞いた。
そりゃ隅々までファイルトロールについて調べた訳じゃないが、父さんたちからも聞いたことがない。
「本当に極稀に起こる話だ。ただ、私はその極稀に遭遇したことがある」
「……やはり、苦戦を強いられましたか?」
「君たちなら問題はないと思うが、可能なら分断するべきだ。一人であのコンビネーションを対応するのは、骨が折れる」
「っ!!??」
思わずまだワインが入っているグラスを落としそうになった。
トロールやオーガ、オークといった人型のモンスター同士がコンビネーションを取ることは珍しくない。
だが、ロウレット公爵様ほどの方が、そのコンビネーションに対して、骨が折れると確かに口にした。
「そんなに意外な情報か?」
「公爵様が骨が折れると言うほど優れたコンビネーションを持っているとなれば、少なからず驚きますよ」
「はっはっは! 安心しろ。君一人が強い訳ではない。例えその群れと遭遇しても、負けることはないだろう」
……やっぱり、メリルたちが褒められるのは嬉しいもんだな。
この後、少々赤ワインを飲み過ぎてぶっ倒れた。
気付いたときには知らないような知ってるような天井状態。
テラスでぶっ倒れたのかと思ったが、どうやら自力で部屋には戻ることが出来たらしい。
小さな頭痛に悩まされながら着替えてると、ノックして入ってきたセルシアの弟と妹であるフォースとリッシュに模擬戦を申し込まれた。
とても活き活きとした楽しそうな表情を浮かべていたが、さすがにもう少し後にしてくれと返す。
まだ朝飯を食べてないし……なんなら、珍しく朝風呂に入りたい気分。
メリルにそれを伝えると、既に覚えたであろう風呂場へ連れていってくれた。
他のメイドさんたちも交えて、お背中流しましょうと言いながら付いてこようとしたが……なんとかギリギリのところで抵抗に成功。
やはり酔いと、その後の頭痛は恐ろしい。
もう少しでメリルのいたずらに押し切られそうになった。
入浴後は朝食を取り、双子に頼まれた模擬戦の相手を引き受ける。
解ってはいた事だけど、以前模擬戦を行った時と比べて、全てのステータスは確実に一段階向上していた。
本当にロッソ学園に入学するなら……他の学園が可哀想としか言えない。
他学園の方から、入学前に是非うちの学園にご入学を!!! って勧誘されそうだな。
まぁ、別に俺やセルシアの方からロッソ学園に入学を勧めてるわけではないし、どうやら公爵様や奥さんの方からロッソ学園への入学を勧めてるわけでもないみたいだし……もう、そうなったらそうなったらで仕方ないって話だな。
34
お気に入りに追加
3,491
あなたにおすすめの小説
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる