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後釜候補に……

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「ラガス、ちょろっと聞いたぜ。騎士団に入団したい奴らに、稽古つけてやって得るんだって?

おそらく、入団が決まる前最後の休日、何故か……何故か、第一騎士団の騎士団長であるリアルスさんから、お茶しようと誘われた。

いや、本当に何故って感じ。
同級生たちにアドバイスしてる事に関しても、何故知ってるんだ!? って声出してツッコみたかった。

「稽古を付けてるというか、軽くアドバイスをしてるというか……俺としては、そういうのは先生たちに頼むべきだと思うんですけどね」

「はっはっは! お前が学園に入学してから、今まで残してきた実績を考えれば、当然の結果だと思うぜ」

実績、実績か……まぁ、そりゃ学生同士の戦いとはいえ、負けるのは嫌だから勝つ気で戦ってきたよな。

「気持ちは変わってねぇとは思うが、もし騎士団に入団してくれるなら、他の新人騎士たちとは違うラインからスタートだ」

「……もしかして、誰かの上に立つってことですか?」

「そうなるだろうな。というか、俺ならそうする。実力はどう考えても文句なし。年齢や経験に文句があるなら、俺が直々に審判をして覆せば、仕方ないって判断を下すけどな」

実力で全てひっくり返る、か。

正直、俺より歳上の騎士たちが、野性としては至極単純な順位付けで納得するかどうかは、謎だけどな。

「あっ、でもあれか。ラガスはあんまり、人の上に立つのとか得意じゃねぇか」

「そうですね。他のグループと対立したりすれば、基本的に物理で解決したくなるので」

「はっはっは! 良いじゃねぇか。騎士は兎にも角にも腕っぷしがなきゃ務まらねぇ。って言ってたら、うちの副騎士団長に怒られるんだけどな」

でしょうね。
そりゃ殺人鬼や盗賊を倒す、被害を出しているモンスターを倒す仕事内容とかを考えれば、まず腕っ節は必要。

でも、傭兵や冒険者と違って、礼節という部分があるからこそ、騎士と呼ばれるんだ。

そういう部分は、俺にはない……いや、最低限は持ってるけど、相手があまりにもウザかったら、ぶん殴るか禿にするか、逆に隠せない程全部の毛を増毛するか……とにかくやらかす自信しかない。

「でも、それならお前の兄貴が入隊してる、遊撃部隊ならラガスも馴染むんじゃないか? あそこは本当に実力主義っつーか、一芸に秀でているタイプでも、利用価値ありと判断されれば入隊出来るしな」

遊撃部隊か……まっ、仮に俺が騎士団に入団数なら、そこしかないだろうな。
よっぽど癖がある、もしくは面倒過ぎる人がいない限り、衝突することはなさそうだし。

「あそこの団長は、多分ラガスのことを、凄く欲しがってるだろうな」

「? なんでですか」

「ラガスの戦闘光景を大会で観てるのは当然として、兄貴から色々と聞いてるだろ」

「……そうかもしれませんね」

ちらっと聞いた話だと、同僚や上司に俺ら家族のこと、超自慢してるらしい。

他人に自慢するのは、嬉しいと言えば嬉しいけども……やっぱり恥ずかしいって気持ちの方が勝るから、ちょっと止めてほしいかな。

「それと、お前の兄貴は後数年もすれば、遊撃部隊から除隊……引退するだろ」

「そう、ですね」

おそらくというか、確実に引退するだろうな。

基本的にうちは序列争いとか、継承者争い? 的なことはしてないから、生まれてきた準通りにカロウス兄さんが当主になる。

他のきょうだいは、特にそういう地位とか権力に興味ないというか……いや、ぶっちゃけそこに関してはカロウス兄さんもあまり興味を持ってないかも。

「そういう訳だから、近々そっちの方から誘いがあるかもしれねぇな」

「えっ!!!??? それは困るというか、リアルス団長の方から、なんとか言っておいてくれませんか?」

「いやぁ~、なぁ~~~……俺もラガスもうちに誘いたい気持ちは十分に解かるからな。俺が言っても説得力がないっつーか、あまり効果はないと思うぜ」

……強者から好感を持たれるのは嬉しいが、あまりハンター以外からの勧誘を受けるのは、そろそろ勘弁だな。
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