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疲れ百パーセント

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「お疲れ様です、ラガス坊ちゃま」

「……いや、どう見てもお前の方が疲れてるだろ、メリル」

夕方手前、本日のアドバイス会? が終了した。

俺の従者であるメリルやシュラも三年生たちに師事を乞われていた。
普通に考えれば、歳上の従者にそういうのを頼むのでは? と思うんだが……二人がその従者たちの中で、トップであることに変わりはない、か。

ただ、もっとも身近な戦闘者として先輩である自分たちを差し置かれた、同級生たちの従者どう思ってるのか。
卒業前に、決闘ラッシュが起こってもおかしくなさそうだな。

「そう、ですね」

「本当にお疲れ状態だな……晩飯は外食するか?」

時間的には全然外に出ても問題無い。

これからが夕食時だから、その店でも入れる筈だ。

「いえ、今日は寮で夕食を作る予定です。疲れたからといって、外食に逃げたりできません」

「わ、分かった。無理しないようにな」

「はい、解ってます」

ん~~、全く逃げとは思わないが、そういう部分がメリルの従者としてのプライド、芯なんだよな。
これ以上何か言ったところで、絶対そのあたりは曲げなそうだ。

「シュラもお疲れ」

「うっす……本当に、マジで疲れたっす」

「みたいだな」

いつも訓練が終わった後、疲れはあるものの、表情には楽しさがある。

でも、今日に限っては疲れ百パーセントだ。
シュラは感覚派だからな。誰かにアドバイスを伝えきるのは難しいタイプ……教え子のタイプにもよるだろうけど、あまり教師には向かない。

「はぁ~~~、なんで俺みたいな奴に師事を乞うんですかね」

「そりゃお前……シュラが自分たちより強いからに決まってるだろ」

「いや、そりゃラガスさんやセルシア様、後はリーベさんみたいなずば抜け過ぎてる学生は例外として、その他の学生には基本的に負けないっすよ」

年齢的に上だから……そんなしょぼい理由じゃなく、今までの経験や本能的な強さから出る自信だな。

「そうだな。俺もお前が学生に負けるとは思ってない。だからこそ、俺の同級生たちには圧倒的な強者として映ってるんだろ」

「……それが師事を乞う理由になるんすか?」

「なるに決まってるだろ。よっぽど性格が終わってなければ、圧倒的な強さを持っている者に対して、この学園の在校生殆どは敬意を持つ」

強さに対して憧れる。
その感覚は、騎士やハンターを目指す学生とか関係無く、早ければ子供の内から憧れを持ち、それを目標として生きようとする。

「なるほど。納得したっす」

「それは良かった」

「だからといって、やっぱり師事を乞われるのは困るっす」

「はっはっは!! それは同感だな」

ハンターを目指すとなれば、引退後は指導者になるかもしれないが、そんなのは遥か未来の話だ。

リーベに軽く教えてたりはしてたから、絶対に無理って訳じゃない。
でも、とりあえず今は破格の給料を用意されても、教職には付きたくないな。

「私も、いつもより、疲れ、た」

「そうみたいだな。でも、アドバイスをすることで、自身の動きに対して理解が深まることもある……ほんの偶にだと思うけど」

「ラガス、そう言うなら、そう、なのかも。でも、私はまだ、分からない」

それもそうか。
セルシアは人に的確なアドバイスが出来たからこそ、自身の動きや技術を見直す良い機会を得られた、ってなるほど普段の訓練が生温くない。

精度がや技を繰り出すタイミングが一気に上がることはないが、確実に改良が重ねられている。

「というか、ラガスさん。俺としては自分たちに教えを乞うてきた学生たちが、入団試験に落ちるとは思えないんすけど」

「それに関しては、俺も同意見だ。こう言っては上から目線過ぎるかもしれないが、全員入団出来る実力はあると思う」

「私も、二人と同意見、だね」

まっ、騎士団魔法師団にも色々と事情があるかもだから……物事に絶対はないように、全員が入団出来る保証はないんだけどな。
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