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切っても切り離せない考え
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ザックスたちに関する一件が終了……いや、綺麗に終わってはいないが、とりあえずそれらの問題が終わってから約一か月後……今度は、モロに自分たちに関する問題が起きた。
学園を退学になる、ハンターになれないなどといった人生に関わる問題ではないが、それなりに衝撃が大きい問題ではある。
何故なら……キリアさんとルーンが、学園の卒業と同時に、セルシアの従者という席から外れると伝えてきた。
二人の言葉を聞いたセルシアは、普段からあまり変化がない表情に、少なからず変化が現れていた。
俺もシュラやメリルがいきなり従者を辞めて、屋敷に帰ると言われたら、絶対に動揺する。
二人の言葉に対して、当然セルシアはその理由を尋ねた。
理由は、戦力に関する問題だった。
その内容に、俺は何とも言えない気持ちになる。
二人の実力が、あまりにも低い……なんてことはない。
学園に在籍する従者たちの中では、戦闘力もトップクラス。
一緒にハンターになんても、個人的には重荷にならないとは思ってる。
それはセルシアも同じ考えだろう……でも、本人たちがどう思ってるかは別だ。
「…………」
「…………」
二人の言葉に、メリルとシュラが何も言わなかった。
おそらく、本人たちが口にした通り、重荷であるとは考えていない。
それでも……実際に戦闘力に関しては二人の方が上だから、それらの事情を考えると、何も言えないのだろう。
「私たちの力では、どこかのタイミングでセルシア様やラガス様に迷惑を掛けてしまいます」
「俺も、キリアと同じ考えです」
ハンターになれば、立場的にはパーティーメンバー……仲間だ。
仲間がお互いに迷惑を掛け合うのは、決しておかしなことではない。
それを支え合うのがパーティーメンバーというものだと俺は思う。
ただ、二人はセルシアと一緒にパーティー組むとしても、根っこの部分では仲間ではなく従者。
その意識が変わらないからこそ、他の者たちよりも強く、迷惑を掛けたくないんだろうな。
「…………」
セルシアは、どうやら上手く言葉が出てこない様子。
元々口が上手い方じゃないからな……俺の方からなんとか言うことができても、多分二人の考えが変わることはない。
質が悪いことに……いや、質が悪いって言葉は良くないな。
俺やセルシア、おそらく二人にとって雇い主に当たるロウレット公爵様に続けるよう言われても、二人の意思は変わらない。
そんな強さを、二人の目から感じる。
簡単に言ってしまえば、覚悟を決めた目だ。
掛ける言葉がない、説得できる言葉が浮かばない。
セルシア、それが解かってるんだろうな……本当に喋らない。
喋らないけど、二人からの提案……頼みに対して、中々分かったと答えられない。
「……とりあえず、今日はここまでにしませんか」
なんとか話を決着を翌日に持ち越すことが出来た。
二人の気持ちは、失礼かもしれないが、解らなくもない。
セルシアも同じだろうけど、セルシアは二人の主人にあたる者……二人の気持ちを理解出来たとしても、そう簡単に解ったと言えないのが現実だ。
「強さなんて、これからでも、良いよね」
その日の夜、俺の部屋にセルシアが相談に訪れた。
メリルは紅茶を用意してもらい、気を利かせて退室した。
「これから、か……世間一般的に見れば、二人はその対象に入らない強さを持ってるんだけどな」
これから強くなればいい。
そんな言葉は、普通に考えればキリアさんとルーンも、既に十分な強さだ。
でも、本人たちはそう思ってない。
「ただ、二人からすれば……そんな悠長な考えをしてる間に、もしも自分たちのせいでセルシアに命の危機が及んだら、っという思いが一番強い理由だと思うんだ」
「…………」
私はそう簡単に、危機に陥るほど弱くないって思ってそうな顔だな。
セルシアの強さは理解しているし、二人も当然理解してる。
それでも……従者という立場である二人からすれば、そのもしもは切っても切り離せない考えなんだろうな。
学園を退学になる、ハンターになれないなどといった人生に関わる問題ではないが、それなりに衝撃が大きい問題ではある。
何故なら……キリアさんとルーンが、学園の卒業と同時に、セルシアの従者という席から外れると伝えてきた。
二人の言葉を聞いたセルシアは、普段からあまり変化がない表情に、少なからず変化が現れていた。
俺もシュラやメリルがいきなり従者を辞めて、屋敷に帰ると言われたら、絶対に動揺する。
二人の言葉に対して、当然セルシアはその理由を尋ねた。
理由は、戦力に関する問題だった。
その内容に、俺は何とも言えない気持ちになる。
二人の実力が、あまりにも低い……なんてことはない。
学園に在籍する従者たちの中では、戦闘力もトップクラス。
一緒にハンターになんても、個人的には重荷にならないとは思ってる。
それはセルシアも同じ考えだろう……でも、本人たちがどう思ってるかは別だ。
「…………」
「…………」
二人の言葉に、メリルとシュラが何も言わなかった。
おそらく、本人たちが口にした通り、重荷であるとは考えていない。
それでも……実際に戦闘力に関しては二人の方が上だから、それらの事情を考えると、何も言えないのだろう。
「私たちの力では、どこかのタイミングでセルシア様やラガス様に迷惑を掛けてしまいます」
「俺も、キリアと同じ考えです」
ハンターになれば、立場的にはパーティーメンバー……仲間だ。
仲間がお互いに迷惑を掛け合うのは、決しておかしなことではない。
それを支え合うのがパーティーメンバーというものだと俺は思う。
ただ、二人はセルシアと一緒にパーティー組むとしても、根っこの部分では仲間ではなく従者。
その意識が変わらないからこそ、他の者たちよりも強く、迷惑を掛けたくないんだろうな。
「…………」
セルシアは、どうやら上手く言葉が出てこない様子。
元々口が上手い方じゃないからな……俺の方からなんとか言うことができても、多分二人の考えが変わることはない。
質が悪いことに……いや、質が悪いって言葉は良くないな。
俺やセルシア、おそらく二人にとって雇い主に当たるロウレット公爵様に続けるよう言われても、二人の意思は変わらない。
そんな強さを、二人の目から感じる。
簡単に言ってしまえば、覚悟を決めた目だ。
掛ける言葉がない、説得できる言葉が浮かばない。
セルシア、それが解かってるんだろうな……本当に喋らない。
喋らないけど、二人からの提案……頼みに対して、中々分かったと答えられない。
「……とりあえず、今日はここまでにしませんか」
なんとか話を決着を翌日に持ち越すことが出来た。
二人の気持ちは、失礼かもしれないが、解らなくもない。
セルシアも同じだろうけど、セルシアは二人の主人にあたる者……二人の気持ちを理解出来たとしても、そう簡単に解ったと言えないのが現実だ。
「強さなんて、これからでも、良いよね」
その日の夜、俺の部屋にセルシアが相談に訪れた。
メリルは紅茶を用意してもらい、気を利かせて退室した。
「これから、か……世間一般的に見れば、二人はその対象に入らない強さを持ってるんだけどな」
これから強くなればいい。
そんな言葉は、普通に考えればキリアさんとルーンも、既に十分な強さだ。
でも、本人たちはそう思ってない。
「ただ、二人からすれば……そんな悠長な考えをしてる間に、もしも自分たちのせいでセルシアに命の危機が及んだら、っという思いが一番強い理由だと思うんだ」
「…………」
私はそう簡単に、危機に陥るほど弱くないって思ってそうな顔だな。
セルシアの強さは理解しているし、二人も当然理解してる。
それでも……従者という立場である二人からすれば、そのもしもは切っても切り離せない考えなんだろうな。
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