654 / 965
これまでの重みや価値
しおりを挟む
「ラガスは、本当に優しいね」
「……今回の一件に関しては、大半の者が俺と同じ考えの筈だ」
別に俺の考えが特別優しいって訳じゃねぇ。
客観的に考えても、ライドは被害者に近い立場なんだ。
勿論、ザックスたちのことを想っての優しさでもある。
それを踏まえても……俺は、ライドは被害者だと思ってる。
「ありがとう。そう言ってくれるのは、本当に嬉しいよ……でも、もう大半の人たちは、逆の考えを持つでしょ」
「ッ……そう、かもな」
反論出来ない。
俺が口にした言葉の内容を考えれば、そう言い返されても仕方ない。
「情けないけど、ラガスの言う通りに使用かと考えたこともあった……正直なところ、そっちの方が幸せになれる未来がみえた」
っ、なら……なんでそっちに行こうとしないんだ! と言いたい。
言いたいが、もう……さすがに解ってしまう。
俺がいくらそちらの道に進んでもお前は悪くないと伝えても、その考えが……意思揺らぐことはないと、目が語っている。
「でも、もし……そっちの未来に進んでしまったら、あの決闘まで前に前にと進み続けてきた僕の努力や思い、信念を否定してしまうことになる」
「…………それは、間違いないな」
平民がどうにかして貴族の令息に勝とうと、努力を積み重ねてきた。
細かい事情は分からずとも、普通に考えてそれは無理だ。
それぐらいはライドも解っていただろう……けど、こいつはその小さな希望を捨てず、最後の最後まで抗い続けた。
才能があったから、あそこまでリーベを追い詰めることが出来た?
そう思う者もいるだろうが、基本的に覆せない差に絶望しないやつが……この世に何人いる?
才能があっても、覆せない差が身分や権力だ。
才能があっても……ライドは俺みたいに得た能力や才能、意識みたいな部分がチートじゃない。
……だからこそ、そこまでの道のりを否定出来ないん、だよな。
「多分、そっちの道に進んで、今抱えている苦労を捨てて楽になっても、ふとした瞬間……その苦労を思い出すと思う」
「そこで罪悪感を感じて、日常生活に支障が出るかもしれない、ってところか」
「うん、そうなるかもしれないとも考えた。そうなれば、結局ザックスたちに迷惑を掛けることになると思うんだ」
「…………」
これも、否定出来ないな。
アザルトさんを捨て、ザックスたちとハンターになる道を選んだ場合……過去が、ライドにとって呪いに近いものになるかもしれない。
くそっ、そこまで深く考えられてなかった。
そもそもアザルトさんを捨てれば、メンヘラストーカーと化して、ザックスたちに危害が及ぶかもしれない。
どのみち……ライドが良い意味でハンター人生を歩める道はないってことか。
「そうなったら、僕は死にたくなると思う……いや、これに関しては僕のメンタルが弱いだけかもしれない。でも……結果的に、迷惑を掛けてしまうと思う。だから、ザックスたちとの道には進めない」
そんな事はない、って言葉が言えないのが……こんなにも辛いとはな。
「それに、フィーラと一緒に進む道を進まなければ、あの決闘で情けをかけてくれたリーベさんのこれまでをも、否定することになってしまう。それだけは……出来ない」
「…………そうだな。俺の考えが、浅はかだったよ」
そうだ、もしライドがアザルトさんを捨ててしまえば、あの時までリーベが積み重ねてきた努力や想いはどうなってしまう?
リーベもライドの現在の立場に理解はあるだろう。
それでも……複雑な気持ちになるのは間違いない。
「そんなことはないよ。ラガスがどれだけ僕や、ザックスたちの幸せを願ってくれているのか、良く解った。本当に、その気持ちだけで嬉しいというか、救われるというか……大分、気持ちが楽になったよ」
「そっか……それは良かったよ」
良くない、良くない、良くないけど……これ以上、ライドやリーベのこれまでを踏みにじるような言葉を、口に出せなかった。
「……今回の一件に関しては、大半の者が俺と同じ考えの筈だ」
別に俺の考えが特別優しいって訳じゃねぇ。
客観的に考えても、ライドは被害者に近い立場なんだ。
勿論、ザックスたちのことを想っての優しさでもある。
それを踏まえても……俺は、ライドは被害者だと思ってる。
「ありがとう。そう言ってくれるのは、本当に嬉しいよ……でも、もう大半の人たちは、逆の考えを持つでしょ」
「ッ……そう、かもな」
反論出来ない。
俺が口にした言葉の内容を考えれば、そう言い返されても仕方ない。
「情けないけど、ラガスの言う通りに使用かと考えたこともあった……正直なところ、そっちの方が幸せになれる未来がみえた」
っ、なら……なんでそっちに行こうとしないんだ! と言いたい。
言いたいが、もう……さすがに解ってしまう。
俺がいくらそちらの道に進んでもお前は悪くないと伝えても、その考えが……意思揺らぐことはないと、目が語っている。
「でも、もし……そっちの未来に進んでしまったら、あの決闘まで前に前にと進み続けてきた僕の努力や思い、信念を否定してしまうことになる」
「…………それは、間違いないな」
平民がどうにかして貴族の令息に勝とうと、努力を積み重ねてきた。
細かい事情は分からずとも、普通に考えてそれは無理だ。
それぐらいはライドも解っていただろう……けど、こいつはその小さな希望を捨てず、最後の最後まで抗い続けた。
才能があったから、あそこまでリーベを追い詰めることが出来た?
そう思う者もいるだろうが、基本的に覆せない差に絶望しないやつが……この世に何人いる?
才能があっても、覆せない差が身分や権力だ。
才能があっても……ライドは俺みたいに得た能力や才能、意識みたいな部分がチートじゃない。
……だからこそ、そこまでの道のりを否定出来ないん、だよな。
「多分、そっちの道に進んで、今抱えている苦労を捨てて楽になっても、ふとした瞬間……その苦労を思い出すと思う」
「そこで罪悪感を感じて、日常生活に支障が出るかもしれない、ってところか」
「うん、そうなるかもしれないとも考えた。そうなれば、結局ザックスたちに迷惑を掛けることになると思うんだ」
「…………」
これも、否定出来ないな。
アザルトさんを捨て、ザックスたちとハンターになる道を選んだ場合……過去が、ライドにとって呪いに近いものになるかもしれない。
くそっ、そこまで深く考えられてなかった。
そもそもアザルトさんを捨てれば、メンヘラストーカーと化して、ザックスたちに危害が及ぶかもしれない。
どのみち……ライドが良い意味でハンター人生を歩める道はないってことか。
「そうなったら、僕は死にたくなると思う……いや、これに関しては僕のメンタルが弱いだけかもしれない。でも……結果的に、迷惑を掛けてしまうと思う。だから、ザックスたちとの道には進めない」
そんな事はない、って言葉が言えないのが……こんなにも辛いとはな。
「それに、フィーラと一緒に進む道を進まなければ、あの決闘で情けをかけてくれたリーベさんのこれまでをも、否定することになってしまう。それだけは……出来ない」
「…………そうだな。俺の考えが、浅はかだったよ」
そうだ、もしライドがアザルトさんを捨ててしまえば、あの時までリーベが積み重ねてきた努力や想いはどうなってしまう?
リーベもライドの現在の立場に理解はあるだろう。
それでも……複雑な気持ちになるのは間違いない。
「そんなことはないよ。ラガスがどれだけ僕や、ザックスたちの幸せを願ってくれているのか、良く解った。本当に、その気持ちだけで嬉しいというか、救われるというか……大分、気持ちが楽になったよ」
「そっか……それは良かったよ」
良くない、良くない、良くないけど……これ以上、ライドやリーベのこれまでを踏みにじるような言葉を、口に出せなかった。
45
お気に入りに追加
3,491
あなたにおすすめの小説
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる