上 下
653 / 950

そっち、なのか?

しおりを挟む
「……ザックスたちと別れて、フィーラと二人でハンターになるよ」

「…………えっ」

全く逆の答えに、数秒ほど固まってしまった。

だって……えっ? なんで? どうして?
普通に考えて……いや、色々と普通じゃなかったから、あんな決闘が起こったんだよな。

でも、だとしても…………なんで、そっちの道を選んだんだ。

「ライドは、それで良いのか?」

「うん、そうだね。ザックスたちと別れるのは、正直辛いよ。でも……一緒にハンターとして活動していれば、必ずどこかで迷惑を掛けてしまう」

「そりゃ……」

何も反論出来なかった。

アザルトさんが借金を返すには、一発当てる……というギャンブルを意識したハンター人生を送ったとしても、返せるかは分からない額。

ハンター生活を送っていれば、多くの場面で金が必要になる。
というか、上を目指してより金を稼ぐには、自分たちに投資しなければならない。

「だから、卒業したらハンターにはなる。でも、ザックスたちとは別れるよ」

「……ライド、俺はお前がアザルトさんから逃げたとしても、卑怯者や薄情者だとは思わない」

人によっては、そう思う者もいるだろう。
ただ、アザルトさんがライドに隠してた秘密は、あまりにも大き過ぎる爆弾だ。

隠しててごめんなさい、で済む内容ではない。
ていうか……アザルトさんはちょっとでも、ライドに自分と別れようとか、自分一人でなんとかするとか、そういう意志を見せたのか?

…………ヤバい、色々と腹が立ってきた。少し落ち着かないと。

「金ってのは、生きていく上で非常に重要な……なくてはならない存在だ」

原始人みたいな生活をするならまだしも、そうじゃないだろ。
ハンターになるんだろ、ライド。

「殆どの職業にも言えることだとは思うが、上を目指すなら……余計に金が掛かる。お前、素手で戦うタイプじゃないだろ」

「まぁ……そうだね」

多少自身があるのは、表情を見れば解る。
筋肉も二年前と比べて付いてるし、それなりに出来るだろう。

確実にレベルが上がってる……でも、打撃戦に限っては今もリーベの方が上だろう。
限界突破のアビリティレベルも上がってるだろうが、それはリーベも同じだ。

なにより、一番の武器はロングソードを使った斬撃だろ。

「武器に投資できなければ、どうしても不運が訪れる可能性が高まる。他にも要因はあるが……はっきり言って、まともに返済出来るか分からないぞ」

正直……アザルトさんと別れて、ザックスたちとパーティーを組みながら、自身の取り分から本来はアザルトさんの借金を一緒に返していく。
それなら、まだ借金を返済できる可能性がある。

でも、アザルトさんと二人だけで行動するなら……物事に絶対がないのは解ってる。
解ってるけど、俺個人としては……絶対に返済不可だと思ってしまう。

何故かって?
ライドの性格上、絶対にアザルトさんが危機に陥れば、助けに行く。

そして、アザルトさんの正確な戦闘力は知らないが、一年生の頃にチラッと見た時は……正直、どうだろうって感じだった。

才能に関しては、絶対にライドより下。
努力に努力を重ねて、絶え間なく実戦を重ねていけば……ブロンズランクには辿り着けるかもしれない。
一応貴族の令嬢ではあるしな。

ただ、そこに辿り着く為にはやっぱり、自身が装備する武器にも投資しなきゃならない。

強くなるために、より稼ぐために自分たちに投資する。
このサイクルを行えなければ、あの大借金を返すなんて、到底不可能。

リーベの親父さんとしては、売った方が儲かるのでは? なんて考えが浮かんでもおかしくない。

「もう一度……何度でも言うぞ。お前がアザルトさんから逃げたとしても、俺はお前を卑怯者薄情者だと思わない。その判断は間違ってないと断言する」

そうだ、何度でも何度でも言い続ける。
それで少しでも考えが揺らいでくれるなら、何度だって言い続ける。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

パーティー会場で婚約破棄するなんて、物語の中だけだと思います

みこと
ファンタジー
「マルティーナ!貴様はルシア・エレーロ男爵令嬢に悪質な虐めをしていたな。そのような者は俺の妃として相応しくない。よって貴様との婚約の破棄そして、ルシアとの婚約をここに宣言する!!」 ここ、魔術学院の創立記念パーティーの最中、壇上から声高らかに宣言したのは、ベルナルド・アルガンデ。ここ、アルガンデ王国の王太子だ。 何故かふわふわピンク髪の女性がベルナルド王太子にぶら下がって、大きな胸を押し付けている。 私、マルティーナはフローレス侯爵家の次女。残念ながらこのベルナルド王太子の婚約者である。 パーティー会場で婚約破棄って、物語の中だけだと思っていたらこのザマです。 設定はゆるいです。色々とご容赦お願い致しますm(*_ _)m

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

処理中です...