上 下
632 / 954

心配……し過ぎ?

しおりを挟む
二日目、タッグ戦のトーナメントが始まり、俺とセルシアは先日と同様に優勝を目指して戦う。

ただ、俺たちは相変わらず下手に連携を鍛えるよりも、単独で戦った方が良い。
ガルガント王国側の生徒たちはそれを知っているが、タッグ戦なのにソロで戦おうとする俺たちに、アルガ王国側の生徒たちは面食らってたな。

タッグ戦なのに、その戦い方はどうなんだ! って批判は飛びそうだけど、観客たちは結局盛り上がってたし、特に気にしなくて大丈夫だろう。

一先ず初戦は楽々突破。
レアードとセリスの二人も余裕の圧勝だった。

二人の個人戦力だけじゃ……って、二人なら個人の力でも上級生に引けを取らなかったな。
でも、何だかんだでタッグ戦の方が生き生きとしてる。

後、スレイドとフローラさんのタッグも初戦を超えた。

優勝候補と呼ばれてるタッグが二回戦に駒を進める中……相変わらず俺の心には、不安が残っていた。

「…………」

「ラガス、大丈夫?」

「大丈夫……だけど、不安が消えないかな」

今、俺たちはタッグ戦のトーナメント表が張り出されている場所にいる。

俺たちとレアードたちがぶつかるには、決勝戦まで進まなければならない。
その間に、レアードとセリスはアルガ王国の生徒たちとぶつかる。

「レアードと、セリスは強い、よ」

「うん、解ってる。それは解ってるよ。でもな……」

一年生の校内戦の時に、麻薬を使って無理矢理身体能力を上げてでも、セルシアとパートナーになった俺を憎み、殺そうとしてきた男を思い出す。

人はその気になれば、自分の全てを捨ててでも、殺したい相手を殺しにいく。

二人とこれからぶつかるであろう、アルガ王国の生徒たちが、今はそんな殺意を持ってないだろうけど……あのバカ王子が何かを命じて渡せば、最悪の可能性が起こらないとは言えない。

「リングで、何か起これば、私も、直ぐに跳び出る」

「……ありがとな」

まっ、何かリングで異変が起これば審判が早急に止めるとは思うが……まさか、審判の買収とか考えてねぇよな?

あぁ~~、やべ~~~~。
考えだしたら本当にキリがない。

なるべく試合に集中しよう、試合に集中しようと思って動き続けていたら……あっという間に決勝戦まで到着。
決勝戦の相手は、スレイドとフローラさんのタッグ。

スレイドとセルシアが中央でバチバチに戦っている後ろで、俺はフローラさんと遠距離合戦を行っていた。
俺の方はフローラさんの力量に合わせたバトルで、中央で激しい攻防をしている二人に迷惑掛けない様に戦っていたので、魔力の残量やらなんやらで、先にこっちが決着。

二人の方が、五分? ぐらい経ってからセルシアが一歩リードし始め、そのまま優勢に進め……スレイドが降参を宣言し、終了。

タッグ戦も俺たちの勝利で終わった……そう、何も問題が起こることなく終わった。
いや、普通に有難いし、嬉しいよ。
二人の身に何も起こらなかったんだからな。

ただ……あのセルシア大好き人間が、何もしてこない訳あるか?

「浮かない顔ですね、ラガス坊ちゃま。また心配事ですか?」

「そうだな。心配事というか、不安というか……あのバカが、このまま何も起こさずに終わるのかと思ってさ」

バカ王子は個人戦にしか参加していないので、他のトーナメントで名誉挽回する機会がない。

俺が全てに参加するから、結局そんな機会、全くないと言えばないんだけどな。

「初の国際大会ですから、向こうも不祥事を起こさない様に厳戒態勢を敷いているのでしょう」

「……だと良いんだけどな」

メリルの言葉は納得出来る。
納得出来るんだが、やはり不安はそう簡単に消えない。

そう思ってると、なにやら暗い表情のフォルスたちとばったり遭遇。

「あっ、お疲れ。やっぱり二人とも想像以上の強さだよ」

「おぅ、ありがたな。ところで、なんでそんな表情が暗いんだ?」

っと、口にしてしまってから、互いの立場的にその発言は不味いと思った。

ただ……どうやら、フォルスたちの表情が暗いのは、俺とセルシアが優勝したのが理由ではなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

処理中です...