上 下
519 / 975

褒めて褒め合う

しおりを挟む
魔弾に今度は竜殺しではなく獣殺し……ビーストキラーの効果を付与。

オルトロスは見た目完全に獣だし、これで大ダメージを与えられると思ったが……アサルトワイバーンの時と同様に野生の勘が働いたのか、一撃も食らうことなく必死で躱した。

いったいどれぐらいのダメージを与えられるのか知りたいんだけどな。
まぁ、あんまり俺の魔弾を躱すことに必死になったら他の攻撃を捌けなくだろうな。

獣殺しの効果を付与した魔弾を撃ち始めてからシュラやルーフェイスの攻撃がクリティカルヒットするようになり、だんだんとオルトロスの動きが鈍くなる。

「セルシア様、今です」

「分かった」

激しい戦いの中でも二人の会話はしっかりと耳に入っており、オルトロスがシュラに狙いを定めた瞬間にセルシアは生産した粘着性の糸でオルトロスの脚を封じた。

何度も食らってれば、そこも野生の勘で回避できたかもしれないけど、初見じゃ回避できずに引っ掛かった。
シュラは既にその場から離れており、オルトロスは食らいつくことも出来ず、勢いを殺せず地面に頭からぶつけた。

「ふっ!!!!」

そして最後はチャンスを探していたメリルの渾身の一刀が放たれた。
ただの雷の斬撃……ではあるが、それでも今のオルトロスに躱す時間はない。

顔面から地面に激突した影響で、即座に炎と雷のブレスで相殺するという判断も行えず、雷の刃によって体は文字通り真っ二つに切り裂かれた。

俺の獣殺しの効果を付与した魔弾でも、あそこまで大ダメージを与えられない。
シュラでも……いや、体を抉り取ることなら出来るか?

なんにしても、見事な斬撃だった。

「お疲れ様、セルシア」

「ラガスも、お疲れ様」

「良い攻撃だったな。ほら、凄い綺麗に斬れてるぞ」

雷の斬撃で真っ二つにされたオルトロスの体は、雷の影響で毛皮が焦げたりはしていなかった。
断面を見る限り……うん、魔核も斬れてない。
本当に見事な一撃だ。

「ありがとう。でも、まだまだ。今の斬撃は、メリルがサポートしてくれたから、上手く当てられた、と思う」

セルシアに褒められて、メリルはまんざらでもない表情で頭を下げた。

ん~~~……確かに、あのメリルの働きはナイスだった。
結局最後まで戦いには加わらず、他のモンスターが戦いに割り込んで来ないか警戒し続けて、良いチャンスが来たところでオルトロスの気付かれず移動。

そして粘着性の糸を放出してオルトロスの動きを上手い具合に止めた。

「確かに、あれは本当にナイスなタイミングだったな」

「ふふ。そう言うシュラも良い位置にオルトロスを誘ってくれたじゃありませんか。セルシア様が雷の斬撃を放つ位置として最適でしたよ」

「そりゃどうも」

うんうん、シュラも良い働きをしてくれた。
シュラが本気を出した攻撃はオルトロスに十分効いてた。

あぁいう、打撃系の攻撃で与えられる痛みはこう……ズキズキと残るから嫌なんだよな。

『ラガス、僕も頑張ったよ!!!!』

「あぁ、ルーフェイスのお陰で本当に戦いやすかったよ」

やっぱりオルトロスにとって、本当に警戒しなければならない相手はルーフェイスだったんだろうな。

シュラに三、俺に二。後の五はルーフェイスに意識を割ってた。
ルーフェイスが良い感じに意識を引っ張ってたからこそ、俺の魔弾やシュラの金棒が良い感じに当たった。

まぁ、だからって俺やシュラに意識を向ける割合を増やせば、ルーフェイスの恐ろしい爪撃をまともに食らうことになるんだけどな。

「ラガス坊ちゃま、オルトロスの死体は今解体しますか? それとも屋敷に戻ってから解体いたしますか?」

「あぁ~~~……今はなるべく急ぎたいし、屋敷に戻ってから解体するよ」

フォース君とリッシュちゃんの前で解体するか?
良い勉強になる……というか、実戦の前にグロ絵面に対して耐性はできる。

とりあえず今は解体せず、少し休憩してから鉱山に向けて再出発だ。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?

ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...