万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai

文字の大きさ
上 下
505 / 982

一投一殺

しおりを挟む
「あれは……グレーグリズリーですね」

木々の奥から現れたモンスターはDランクの熊系モンスター、グレーグリズリー。

体が大きく、パワーのある一撃が厄介なモンスター……いや、この面子を考えれば別に厄介ではないか。
数は二体だが、それでも全く問題無い。

「一体は俺がやります」

「……それじゃあ、もう一体は私が、やる」

「ふむ。二人の戦いっぷりを見せてもらおう」

こっちには狼竜のルーフェイスがいるんだが、そんなの関係無しに狩る気満々って面だな。

「ガァァアアアアッ!!!!」

「よっと!」

ダッシュからの振り下ろしは確かに危ないが、懐に入って止めてしまえば爪による斬撃を無効。
手のひらはやっぱり柔らかいな。

「ッ!? ッ!!!!!」

ムキになって俺を圧し潰したようだが、パワーには少し自信がある。

「グゥアアアアッ!!!!」

どうやら本気で俺を片腕で潰そうとしてるのか……まぁ、身体強化のアビリティを使い始めたし、体に魔力も纏ってる。

本当の本当に俺を潰したいみたいだが、俺が小さいからってちょっと油断し過ぎじゃないか。

「よ、ほッ!!!!!」

「グァ!!!!????」

グレーグリズリーの攻撃を支えていた左手で右腕を弾き、懐に潜りながら跳んで腕をガッチリ掴み、そのまま一本背負いを決めた。

体格的にはあり得ないかもしれないが、腕の根元を持ってしまえば後は力次第で投げられる。

ただ…………命を懸けた殺し合いなんだから、情けをかける必要はない。
それが分かっているからこそ、つい頭を地面に落とすように投げてしまった。

「はぁ~~~、汚くしてしまったな」

「何言ってるんすか。力強い投げだったっすよ」

「そうか? まぁ、倒せたから良いっちゃ良いんだろうけどさ」

頭から勢い良く地面に落としたことで、グレーグリズリーの頭部は潰れたというか、崩壊してるというか……とにかくグロ映像って感じだ。

子供の頃から何度もモンスターの解体をやってるから、今更この程度の光景で吐いたりしないけどさ。

「やっぱり、ラガスは倒すのが、早い」

「いや、セルシアこそ十分早いと思うけど」

セルシアが倒したグレーグリズリーは首を綺麗に斬り裂いている。
首以外の部分には全く斬り傷がない。

「はっはっは!! 十分凄かったぞ、セルシア!!! ラガス君の言う通り、今の年齢を考えれば十分過ぎる討伐スピードだ。なぁ、アリスタ」

「えぇ、全くその通りかと。攻撃の見切り、間合いの把握、最後のグレーグリズリーを読んだ上での一閃。セルシア様の成長を感じる戦いぶりでした」

「そう? ……それは、良かった」

おっと、これは多分ちょっと照れてるな。
その気持ち、分かる分かる。

あんまりこう、ロウレット公爵様やアリスタさんみたいにどストレートに褒められると照れるよな。

「それはそうと……ラガス君、中々面白い戦い方でした」

「え? そ、そうですか」

面白かったか? ただ普通にグレーグリズリーの懐に潜り込んで、そのまま腕を掴んで投げただけなんだが。

「一般的に、モンスターを投げて倒す。そういった戦い方をする人はいません。大男がゴブリンを掴んで投げることはあるかもしれませんが、状況は全くの逆です」

「そうかもしれませんね。けど……自分の方がスピードは上なんで、そういう戦い方も出来ると思って」

もっと言えば、モンスターに……グレーグリズリーに人間みたいに考えて戦うことが出来ないからこそ、無茶苦茶な一本背負いが決まったんだけどな。

「理論上はそうかもしれませんが、そう簡単にはモンスターとの実戦では行えません。投げる動作の時に一瞬とはいえ、敵に背を向けることになりますからね」

「……なるほど。そう言われてみると、ちょっと安易な攻撃だったかもしれませんね」

そうか……言われてみれば一瞬ではあれど、敵に背を向けてる状態か。
モンスターなんだから口からブレスを吐くかもしれないし……いや、でもグレーグリズリーはそんな攻撃しないよな?

でも人型モンスターがそういった攻撃を行う可能性がゼロではないことを考えれば、隙がある攻撃ではあるが。

「いえ、ラガス君のあの投げを貶すわけではありません。寧ろ、投げる時に頭から地面に落とすという点はとても魅力的でした」

「ど、どうも。ありがとうございます」

み、魅力的か……普通は恐ろしい投げ方だと思うんだが……とりあえず褒め言葉は受け取っておこう。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

思わず呆れる婚約破棄

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。 だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。 余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。 ……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。 よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。

落ちこぼれ公爵令息の真実

三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。 設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。 投稿している他の作品との関連はありません。 カクヨムにも公開しています。

そんなの知らない。自分で考えれば?

ファンタジー
逆ハーレムエンドの先は? ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

処理中です...