上 下
499 / 965

顔に出さない

しおりを挟む
フォース君とリッシュちゃんの順で一人ずつ軽く戦った後は、二人一緒に挑んできてもらう流れになったわけだが……結構息ピッタリ? って感じだな。

髪の色がかなり違うし……多分、双子ではないよな。
でもお互いの動きを読んでいるかのような動きで斬って突いて払ってくるし……もしかしなくても、セルシアに二対一でいつも挑んでたってところか。

一朝一夕で出来る連携じゃないからな………というか、徐々に目が本気モードに……いや、元々二人とも本気だったんだろうけどさ。

なんというか、これが模擬戦ということを忘れている様な気がするんだが。

「ふんっ!!!」

「はっ!!!」

フォース君は俺の上半身を狙って槍を払い、リッシュちゃんは下半身を狙って変則的な体勢からの斬る。

寸分狂わずに来てるから、防御か迎撃しないのであれば躱す方向は一つだな。

「よっ、と」

後ろに軽く跳べば払いも斬撃も当たらない。
やっぱり俺とは身体能力の差が大きい……そう思ってたら、なんとリッシュちゃんが双剣の片方を俺の頭を狙ってぶん投げてきた。

「危な」

投擲のアビリティも使用してただろうな。
うっかり食らえば出血コースだぞ。

「でぇあああッ!!!!!」

これは……槍術アビリティの一点突きか!!

「ふん!」

「ッ!!??」

危ない危ない。
ちょっと意識が双剣の片割れをぶん投げたリッシュちゃんに意識がいってた。

それにしても、良いタイミングで一点突きを放ってくるな。
ちゃんと反応出来たから片手で刃ではない部分を掴めたけど、威力的にはフォース君の年齢を考えれば十分過ぎる。

……ただ、フォース君。
あまりこう……作戦が上手くいった、みたいな顔はしない方が良いよ。

「はぁぁああああッ!!!!!」

投擲のアビリティを使用して投げた双剣を縮地を使って追いつき、キャッチ。
そして俺の意識がフォース君に向いている隙を狙って、リッシュちゃんが双剣で一撃をぶち込む。

そんな感じのプランを一瞬で思い付いたんだろうな。
それとも事前に考えていたのかは分からないけど……悪くないプランだとは思う。

でも、それは相手が想像以上の腕力を持っていなかったらの話だ。

「おらっ!!!」

「えっ!?」

「きゃっ!!!」

一点突きを受け止め、そのまま槍を掴んでフォース君の体ごと持ち上げて振り回す。
そしてそのまま半回転させ背後から襲い掛かってきたリッシュちゃんにぶつける。

そこまで力を込めてぶん投げてないから、多分骨に異常とかはない……はず。
うん、多分大丈夫だと思う。

「えっと……まだやるか?」

もう俺との実力差がどれぐらいあるかは、なんとなく分かったと思う。
セルシアの隣に立つ男に相応しいか否かって審査には合格だと思うんだが………二人の眼を見る感じ、まだまだ諦める気はゼロって様子だな。

「えぇ、まだやります」

「このまま……終われないんで」

そう言うと、二人は自身の木製武器に属性の魔力纏った。
フォース君は火の魔力を纏い、リッシュちゃんは水の魔力を纏った……さすがスーパーエリートだな。

本人たちは勿論努力を積み重ねてるとは思うけど、やっぱりその歳で武器に属性魔力を纏えるのは凄いよ。

それに自分たちのプランが上手くいかなかったとしても、また冷静にコンビネーションで俺を追い詰めようとしてる。
武器に属性魔力を纏ったことで、紙一重では避けられなくなった。

防御個所に魔力を纏えばそれで済む話ではあるんだが……やっぱりそれでも凄いな、二人とも。

ただ……そろそろ模擬戦が始まってから数分が経った。
スタミナが少ないってわけじゃないと思うが、まだまだ全力で動ける時間は短い。

コンビネーションは悪くないが、疲れで動きの精度が悪くなってきている。
そろそろ終わらせて良さそうだな。

「ふんっ!!」

「おわっ!?」

放たれた突きを避けて火の魔力が纏われていない部分を掴み、一気に捻る。
そしてフォース君の力が緩まった瞬間を狙って奪う。

「よっ、ほっ!」

「痛っ! ……えっ、嘘」

魔弾で持ち手の一番下の部分を狙って撃ち、リッシュちゃんの手から双剣をすっぽ抜けさせ、しっかりキャッチ。

「俺の勝ちで良いかな」

「「……参りました」」

ようやく二人との模擬戦が終了し、二人からの試練? に見事合格した。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...