上 下
471 / 950

考えるのが面倒になった

しおりを挟む
「……なぁ、こいつ。なんで盗賊なんかになったんだろうな」

「急にどうしたんすか、ラガスさん」

「いや、こいつはそれなりに強かっただろ。シュラたち四人で戦ったから結構あっさりと終わったけどさ」

「……そうっすね。それなりに強かったと思うっすよ。身体強化系のアビリティを使ってなかったら……結構良い勝負になってたんじゃないかと」

ま、まぁそうかもしれないけど……それだとうっかり大怪我を負う可能性があるだろ。
そうなってもシュラは戦いそうだけど。

「だろ。普通に考えればハンターとか傭兵業でもやってれば、普通に暮らせてたと思うんだよ」

「強さだけを考えればそうかもしれないっすね」

……ハンターも傭兵も確かに多少は頭を使うだろうけど、職業上……多少の粗っぽさは許容範囲。
よっぽど考える頭がない正真正銘の馬鹿でもない限りは、普通にやってける筈だ。

いつ死ぬか分からない恐怖感を常に感じる生活になるかもしれないけど。

「盗賊なんてさ……なったところで、大して楽しい人生にならないと思うんだよな~~」

盗賊になれば、よっぽど変装や隠蔽技術に特化していなかったら街に入れない。
飯だって自分たちが作らないといけないだろうから、料理のアビリティを持ってる奴じゃなきゃ、本当に良い料理は食えないだろ。

他にも諸々……盗賊業なんてやってなければ楽しい思いをしながら生活出来ただろ。

「俺はこんな外道な気持ちなんて分からないっすけど……あれなんじゃないっすか。単純に毎日色々と考えて生きるのが面倒になったんじゃないっすか」

「……シュラの言うとりかもしれませんね」

「考えて生きるのが面倒……思考を放棄したかったってことか?」

「思考法を放棄はいき過ぎな気がするっすけど……盗賊になれば殺して奪って。それだけを考えれば良いから楽だと思ったんじゃないっすか」

もしかしたらこいつ……オルバに壮絶な過去があり、仕方なく盗賊になったのかもしれない。
でも、仮にそうだとしても盗賊としてやることはやってたんだし、同情する余地はないか。
義賊って感じでもないしな。

オルバの首を斬って先程と同じく傷口を焼いて止血。
最後にこいつの死体を埋めて、死体処理は終了。

「メリル、こっとは終ったぞ」

「死体処理、ありがとうございます。こちらの方は見ての通りエルフ……名前はエリサさんです」

「どうも、一応このメンバーのリーダー、ラガスです」

「あなたが……いえ、年齢は関係無さそうね」

うん、やっぱりこんな言葉が一団のリーダーってのは違和感があるよな。
まぁそんな事はどうでも良くて、意外と俺と……男性と話せるみたいで一安心だな。

「ちょっと質問なんですけど、弓や短剣とかは使えますか?」

「え、えぇ。これでも一人で今まで旅をしてたから弓が一番得意だけど、武器は一通り使えるわ」

マジか。それは……普通に考えて凄いよな。
時間が俺ら人族よりも長いから、案外それが当たり前なのか?

エルフの事情は知らないからどっちか分からないな。
って、今はそんなことどうでも良いんだ。

もう一つ確認しておかないと。

「エリサさん、エリサさん以外にこのアジトに囚われている人はいますか」

「多分、私だけの筈よ」

囚われてたこの人がそう言うなら、そうなんだろうな……まっ、とりあえず出る前に気配感知とか使って調べてから出よう。

盗賊たちの実力がある程度あったから、それなりに貯め込んでいるとは思っていたが、宝物庫らしき場所を調べると本当に色々とあった。

「……なぁ、なんで絵画があるんだ?」

「誰かが絵画を運んでいたから……としか言えませんね」

これを奪った時、多分だけど盗賊たちもどうすれば良いのか迷っただろうな。

「ラガス、これ」

「ん? それは……どっからどう見てもワインだな」

盗賊たちの趣味なのか、他の武器とかと比べて随分と外見が綺麗だな。
とりあえず、盗賊たちが溜め込んでいた物の殆どは俺の亜空間にぶっこんでからアジトの外に出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

パーティー会場で婚約破棄するなんて、物語の中だけだと思います

みこと
ファンタジー
「マルティーナ!貴様はルシア・エレーロ男爵令嬢に悪質な虐めをしていたな。そのような者は俺の妃として相応しくない。よって貴様との婚約の破棄そして、ルシアとの婚約をここに宣言する!!」 ここ、魔術学院の創立記念パーティーの最中、壇上から声高らかに宣言したのは、ベルナルド・アルガンデ。ここ、アルガンデ王国の王太子だ。 何故かふわふわピンク髪の女性がベルナルド王太子にぶら下がって、大きな胸を押し付けている。 私、マルティーナはフローレス侯爵家の次女。残念ながらこのベルナルド王太子の婚約者である。 パーティー会場で婚約破棄って、物語の中だけだと思っていたらこのザマです。 設定はゆるいです。色々とご容赦お願い致しますm(*_ _)m

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話

ルジェ*
ファンタジー
 婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが─── 「は?ふざけんなよ。」  これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。 ********  「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください! *2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!

処理中です...