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判断を誤れば掬われる

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「チッ!! 役に立たねぇ屑共だな」

一番後方で戦況を眺めていた盗賊団の頭……オバルは地面に唾を吐いた。
自身の部下がラガスたちの手によって次々に殺されていくなか、特に悲しいという感情は生まれてないみたいだな。

もう少し疲弊させろ。少しでも傷を負わせろ。
もっと役になってから死ね。
そんなことしか思ってなさそうだ。

いかにも盗賊らしい面構えだ。

「はぁ~~~~、俺様自ら動かねぇとならねぇのか……めんどくせぇな」

大斧を持ち上げ、地面から腰を上げて一歩前に出る。

大将が重い腰を上げたころには、盗賊団……全員が地面に倒れ伏していた。
真打登場とでも思ってるのか? 仮に本当にそう思ってるなら、馬鹿過ぎるだろ。

「残るはあんただけだな」

「はっ!! ガキがカス共を殺したぐらいで粋がってんじゃねぇぞ!!!!」

「うるさい声だな……響くからあんまり大きな声を出すなよ」

出口が一つしかなくて、ちょっと距離があるからマジで大きな声を出されると耳に響く。

「口だけは一人前みてぇだな」

「……まぁ、自分で実力も一人前って言うのは恥ずかしいな」

既に大人と変わらない……もしくはそれ以上の力は持ってるだろうけど、堂々と自分は一人前だって言うのはちょい恥ずかしい。
目の前の盗賊団の頭よりは強いと思うけど。

「ラガスさんは口だけじゃなくて実力も一人前……いや、超一人前っすよ」

「シュラの言う通りですね。それで、ラガス坊ちゃま。目の前のお山の大将をどう懲らしめてから殺しますか?」

「……電気で、ビリビリしてから、メリルの毒で、じわじわ追い詰める」

「あら、セルシア様。とても良い案ですね。ラガス坊ちゃまには先程、その役割を行ってもらいましたので、今度は私たちが行いましょうか」

二人とも、目がマジじゃないですか。
別にそんな感じで殺しても良いと思うけどさ。

「……メリル、それで殺すなら本当にキッチリ死ぬ毒を使えよ」

「えぇ、勿論分かっていますよ、ラガス坊ちゃま」

「さっきからペラペラごちゃごちゃくっちゃべってんじゃねぇぞ、クソガキども!!!!!!」

……おっさんこそ、ちゃんと風呂に入ってるのかよ。
加齢臭どうこうの臭さじゃないぞ、その匂い。

見ろよ、お前が勢い良く近づいてきた瞬間、ルーフェイスが物凄く嫌そうな顔をしたぞ。
やっぱり盗賊なんかに毎日風呂に入って体を綺麗するなんて考えはないんだろうな。

「おい、その汚い体でラガスさんの近づくなよ。匂いが移るだろ」

「……調子に乗んなよ。鬼人族だろうが、ガキ相手に負けるわけねぇだろ」

身体強化のアビリティを使って、更に魔力を纏って身体能力を向上。
それで……へぇ、俺が外で戦った奴と同じで腕力強化のアビリティを持ってるのか。

でも、こいつのほうがアビリティレベルは上だな。
それに……こいつが持ってる大斧にも腕力強化の効果が付与されている。
典型的なパワータイプって感じだな。

それに戦えるんだろうけど……総合的には、ハンターのベテランぐらい、か?
一級レベルには程遠いだろう。

シュラも判断を間違えることなく、強化系のアビリティを使用している。
良い判断だ。

中身と外面も完全に屑だけど、それなりの力を持っている。
判断を誤れば、足元を掬われるぐらいの力は持っている。

「ッ!!? ぐ、ぅおおおおおおおあああああああっ!!!!!!」

「ッ……さすがに、見た目通り力はあるな。けどよ、ちょっと俺に集中し過ぎじゃないか」

「がっ!!!???」

確かに、シュラの言う通り目の前の相手に集中し過ぎたな。
誰もこの戦いが盗賊の頭……オバルとシュラの一騎打ち、なんて言ってないからな。

「文字通り、隙だらけってやつだな」

ルーンはちょっとシュラと似てるよな。
メインはロングソードだけど、体術も年齢を考えればおそらくそれなりの腕がある。

いくら強化能力を使っていたとしても、ルーンも同じく自身を強化している。
今のであばら二、三本は折れたか?

でも、相手は二人だけじゃないんだよな。
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