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正確には違うが、危機感は覚えた

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SIDE 国王

「ふぅ……なんとも心臓に悪い時間だった」

「国王陛下、体調は大丈夫でしょうか」

「あぁ、問題無い……この後起こることを考えると少々胃が痛いがな」

既に場内に滞在する騎士に王命として第三王子であるブリットにセルシア、ラガスとの接触を禁止するよう伝えてあるので、試練が始まる前に問題が起こることはあり得ない。

もし、ブリットが王命を破ってセルシアやラガスに近づけば、王家からの除籍も考えている。

「セルシア嬢は一段と強さが増したように感じたな。そしてセルシア嬢のパートナーであるラガス君……二人から視て、どう感じた」

「……一言で言えば、規格外。その言葉が相応しいでしょう」

「同じ考えです。とても十二歳の子供とは思えません」

ラガスはなるべく力を悟らせないようにしているが、歴戦の騎士である二人にはだいたいの実力を知られてしまっていた。

見た目はとても害がなさそうな少年に見えるが、真実は違う。
中身は決して手を出してはいけない凶暴なドラゴン。二人が感じた感覚は同じだった。

だが、そんなラガスよりも恐ろしい存在が後ろに立っていた。

「国王陛下。どうか……どうか今回の一件、お越しになった方々に不快な思いをさせず、帰国していただくが重要になります」

「……それは、あれか。後ろに立っていた女性があちら側の者だからか」

イギラスもフェリスの異質さに気付いていた。
一瞬対峙しそうになった瞬間、自分たちに向けられたのが戦意で良かったと、騎士二人は心の底から思った。

もし向けられたのが殺意であれば、本能的に剣を抜いていたかもしれなかった。

「正直に申し上げますと、後ろに立っていた護衛である女性の強さはラガス殿以上の危険度があります。あの女性は完全にラガス殿たちの味方……こちらの不手際で機嫌を損ねてしまえば……この王城が破壊されてしまうかもしれません」

「ッ!!!! 強いとは思っていたが、そこまでの強さか」

王城が破壊されてしまう。
つまり、王城の中にいる者全てがフェリスに挑んでも勝てないという事になる。

(アルガ王国にまさかそこまでの戦士がいたとは……その女性は本当に人なのか?)

イギラスは即座にその疑問に至った。
果たしてセルシアとラガスの後ろに立っていた女性は人なのか。

今回、自分の後ろに立っていた騎士二人は国内でもトップクラスの騎士。
相手の力量を正確に測る眼を持っている。
その二人が断言した。

女性が本気を出せば王城が滅ぶと。

正確に言えば国が亡ぶのだが、その危機感があれば十分だろう。

(高位のモンスターは人化のスキルを用いて人の姿に化けることが出来る……もしやその類なのか?)

鑑定のスキルを持っているイギラスだが、こちらの我儘で来てもらった客人に鑑定を使うのは失礼だと思っていた。
だが、今になってフェリスの正体が猛烈に知りたくなった。

ただ……迂闊に鑑定を使えば敵対行動とみなされるかもしれない。
王城を滅ぼすだけの力を持つ者と敵対など、絶対に敵対したいと思わない。

「……お前たち、あとで直ぐに裏の者たちに伝えるのだ。もう監視する必要はないと」

「かしこまりました」

何故? とは聞かなかった。
一度の対面で解ってしまった……絶対に敵対するような真似をしてはならない。
敵対すれば、必ず殺されてしまう。

今目の前にいないにもかかわらず、三人は死神の鎌を首に当てられている冷たさを感じていた。

「国王陛下、王命であればブリット様も強行突破することはないと思いますが、試練を与える際にその……ラガス殿を不快にさせてしまうかもしれません」

「むっ……そう、だな」

ブリットがラガスに試練を与えるまでの衝突は回避する流れとなったが、試練を与えるタイミングになればブリットの口から王族らしからぬ暴言を吐いてしまうかもしれない。

「……後でラガス君に私が会いたいと言っていたと伝えてほしい。勿論専属の執事やメイド同伴で構わない」

「かしこまりました。必ず伝えておきます」

まだ残っている爆弾処理にイギラスの心は全く休まらなかった。
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