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魔法使い殺し
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SIDE 近衛騎士
「ロウレット嬢のパートナーのラガス・リゼード……やっぱり見た目はなんというか、普通だったよな」
「そうね。でも、だからこそ侮れない空気を纏ってるって感じね」
オルアとサリナはラガスの実力を全く疑っていない。
だが、疑っていないからこそ、見た目との差にギャップを感じていた。
「侮れないというのは非常に深く解る。属性魔法が使えないからこそ得た手段なのかもしれないが、その身体能力と魔弾の威力は恐ろしい」
近衛騎士ではあるが、どちらかといえば魔法の方が得意なヤガスから見て、ラガスの身体能力の高さと魔弾を自由自在に操れる技術と威力の高さは心底恐ろしいと感じる。
「はっはっは!! あの速度と腕力で殴られたら、魔法使いはひとたまりもないだろうな。一流の武道家にも引けを取らないんじゃないか?」
「そうでしょう。魔法使いからすれば、生粋の魔法使い殺しですよ。私やフィーラの様な武器も使える魔法タイプであれば対処出来るとは思いますが、学生レベルの魔法使いでは試合開始の合図とともに一瞬で距離を詰められ、腹に一撃入れられて終わりですよ」
「それじゃあ、あれかい。一年生のトーナメントでラガス君と最初に戦ったリザード家の氷の令嬢と戦ってる時は手加減してたってことかい?」
サリナの言葉にヤガスではなく、今回の護衛のリーダーであるドレッグが答えた。
「ラガス殿はおそらく、全ての試合を通して手加減していた筈だ」
「……いや、ラガス・リゼードが強く、学生離れした実力を持つのは認めるが、さすがにそれは盛り過ぎじゃないか」
「ならオルア、お前はリングで戦っていたラガス殿の表情が絶対に勝ちたいという意思が伝わってくるほど必死な表情に見えたのか?」
「うっ……あんまりそんな表情じゃ、なかったな」
リングからそれなりに離れた位置から観ていても、大体の表情は解る。
大会に出場する生徒たちは全員が負けられない、勝ち進みたいという思いをお持ちながら戦いに臨む。
そんな中、ラガスだけは勿論試合に勝ちたいという思いはあるが、他の生徒と比べてその意思が弱かった。
「おそらく……私の想像でしかないが、ラガス殿は学園の方からあまり速く終わらせないでほしいと頼まれたいたはず」
「……なくはない話ですね。ラガスさんほどの実力者が本気で戦えば、試合が十秒も掛からず終わってしまうかもしれません」
「フィーラの言う通りだ。ラガス殿が本気で……極端な話、相手を殺してでも勝つ気で挑めば全ての試合が数秒で終わっていたかもしれない」
「パートナーであるロウレット嬢が相手でも、ですか」
大会の試合は全て観ていたので、五人はセルシアが戦う様子も観ていた。
決勝戦ではラガスに敗れたが、良い勝負をしていたと記憶している。
「……おそらくな」
ドレッグの見解は正しく、ラガスはセルシアとの試合でも本気を出していなかった。
しかし本気を出さずとも、ラガスは余裕の勝利を収めた。
「はぁ~~、それほどの実力を持ってるなら是非とも近衛騎士になってほしいもんだな」
「オルアの言う通りね。現時点で規格外な実力を持っているのだから、最年少で近衛騎士になってもおかしくない筈よ」
「その可能性は大いにあるだろう。ただ、残念ながらラガス殿が目指す道は長男のカロウス殿とは近い、ハンターという自由を求める道を目指している。おそらく近衛騎士になることはない」
「自由を目指す道か……なるほどな。確かにそういった奴は騎士や近衛騎士には向いてないな」
「……ラガス殿ほどの実力があれば、騎士の称号を手に入れることは容易だと思うが」
騎士という称号、爵位を手に入れるには条件がある。
強さという一点に関しては、既にラガスはその条件を満たしている。
「ラガス君なら現時点でも騎士の称号を手に居られるでしょうけど、彼はあんまりそういうのに興味は無いでしょ」
「それもそうか。パートナーが公爵家の令嬢様なんだ。その辺りを心配する必要はないか」
おバカやドアホは気にせず絡んでちょっかいを出そうとするが、そうでない者は公爵家の令嬢という立場に怯えるのが普通だった。
「ロウレット嬢のパートナーのラガス・リゼード……やっぱり見た目はなんというか、普通だったよな」
「そうね。でも、だからこそ侮れない空気を纏ってるって感じね」
オルアとサリナはラガスの実力を全く疑っていない。
だが、疑っていないからこそ、見た目との差にギャップを感じていた。
「侮れないというのは非常に深く解る。属性魔法が使えないからこそ得た手段なのかもしれないが、その身体能力と魔弾の威力は恐ろしい」
近衛騎士ではあるが、どちらかといえば魔法の方が得意なヤガスから見て、ラガスの身体能力の高さと魔弾を自由自在に操れる技術と威力の高さは心底恐ろしいと感じる。
「はっはっは!! あの速度と腕力で殴られたら、魔法使いはひとたまりもないだろうな。一流の武道家にも引けを取らないんじゃないか?」
「そうでしょう。魔法使いからすれば、生粋の魔法使い殺しですよ。私やフィーラの様な武器も使える魔法タイプであれば対処出来るとは思いますが、学生レベルの魔法使いでは試合開始の合図とともに一瞬で距離を詰められ、腹に一撃入れられて終わりですよ」
「それじゃあ、あれかい。一年生のトーナメントでラガス君と最初に戦ったリザード家の氷の令嬢と戦ってる時は手加減してたってことかい?」
サリナの言葉にヤガスではなく、今回の護衛のリーダーであるドレッグが答えた。
「ラガス殿はおそらく、全ての試合を通して手加減していた筈だ」
「……いや、ラガス・リゼードが強く、学生離れした実力を持つのは認めるが、さすがにそれは盛り過ぎじゃないか」
「ならオルア、お前はリングで戦っていたラガス殿の表情が絶対に勝ちたいという意思が伝わってくるほど必死な表情に見えたのか?」
「うっ……あんまりそんな表情じゃ、なかったな」
リングからそれなりに離れた位置から観ていても、大体の表情は解る。
大会に出場する生徒たちは全員が負けられない、勝ち進みたいという思いをお持ちながら戦いに臨む。
そんな中、ラガスだけは勿論試合に勝ちたいという思いはあるが、他の生徒と比べてその意思が弱かった。
「おそらく……私の想像でしかないが、ラガス殿は学園の方からあまり速く終わらせないでほしいと頼まれたいたはず」
「……なくはない話ですね。ラガスさんほどの実力者が本気で戦えば、試合が十秒も掛からず終わってしまうかもしれません」
「フィーラの言う通りだ。ラガス殿が本気で……極端な話、相手を殺してでも勝つ気で挑めば全ての試合が数秒で終わっていたかもしれない」
「パートナーであるロウレット嬢が相手でも、ですか」
大会の試合は全て観ていたので、五人はセルシアが戦う様子も観ていた。
決勝戦ではラガスに敗れたが、良い勝負をしていたと記憶している。
「……おそらくな」
ドレッグの見解は正しく、ラガスはセルシアとの試合でも本気を出していなかった。
しかし本気を出さずとも、ラガスは余裕の勝利を収めた。
「はぁ~~、それほどの実力を持ってるなら是非とも近衛騎士になってほしいもんだな」
「オルアの言う通りね。現時点で規格外な実力を持っているのだから、最年少で近衛騎士になってもおかしくない筈よ」
「その可能性は大いにあるだろう。ただ、残念ながらラガス殿が目指す道は長男のカロウス殿とは近い、ハンターという自由を求める道を目指している。おそらく近衛騎士になることはない」
「自由を目指す道か……なるほどな。確かにそういった奴は騎士や近衛騎士には向いてないな」
「……ラガス殿ほどの実力があれば、騎士の称号を手に入れることは容易だと思うが」
騎士という称号、爵位を手に入れるには条件がある。
強さという一点に関しては、既にラガスはその条件を満たしている。
「ラガス君なら現時点でも騎士の称号を手に居られるでしょうけど、彼はあんまりそういうのに興味は無いでしょ」
「それもそうか。パートナーが公爵家の令嬢様なんだ。その辺りを心配する必要はないか」
おバカやドアホは気にせず絡んでちょっかいを出そうとするが、そうでない者は公爵家の令嬢という立場に怯えるのが普通だった。
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