上 下
399 / 965

最強の助っ人

しおりを挟む
「まずは謝らせてくれ」

ソファーに腰を下ろすと、いきなり腰を折って謝罪された。
待って、待ってくれ。

まだちょっと心が落ち着いてないから、とりあえず顔を上げてほしい。
ていうか、この状況にメイドさんは慌てないんだな。

「あの、国王様が悪くないと分かってるので、どうか頭を上げてください」

「そうか……すまない、そう言ってもらえると嬉しいよ」

いや、だって……国のトップ・オブ・トップが学生に頭を下げたら、そりゃ驚くというか慌てるというか……メリルとシュラだってちょっとオロオロしてたし。

「それで、自分たちはいつからアルガ王国に向かえば良いのでしょうか」

「ラガス君の夏休みを考えると、この件はなるべく早く終わらせた方が良いと思っているのだが……これから一週間ほどの間に、何か大きな用事はあるかな」

「いえ、特にはありません。自分の事情を考えてもらって光栄です」

俺とセルシアがいつアルガ王国の王都に行くかを決められるということは、向こうと速攻で連絡を取れる手段があるということだよな。

「二日ほどあればこちらの準備は整います」

「分かった。それでは、三日後の朝に出発、ということで構わないか」

「そうですね」

「よし、それは近衛騎士の中から五人ほどラガス君たちの護衛に付けよう」

「ありがとうございます」

まぁ、そりゃそうだよな。
向こうの都合で隣国に向かうのに、護衛を付けない訳がないよな。

近衛騎士が五人もいれば、大抵の敵はなんとかなるだろ。

『ラガス、お母さんが今度の旅行? に付いて行っても大丈夫だって!!!』

『本当か!! それは有難い。フェリスさんによろしく言っといてくれ』

『分かった!!!』

いや~~、本当に嬉しい朗報だ。
フェリスさんが付いて来てくれるなら、向こうでどんな面倒事が起きても物理的に対処出来る。

おっと、この件は一応国王様に伝えた方が良いよな。

「えっと……護衛に関してなんですけど、自分の知り合いも一人追加させてもらっても良いですか」

「勿論それは構わないが、近衛騎士だけでは不安か?」

「いえ、そういう訳ではないんですが……より万全にと考えると、その人がいた方が良いかと思いまして」

「……そうか、ラガス君がそう言うのであれば、よほど信頼できて尚且つ強い者なのだろう」

それぐらいは察せてしまうよな。
確かに超信頼出来る人物……いや、モンスターか。

そしておそらく国王様が考えてるよりも十倍は強い人だ。

「はい、とても信頼出来る人です。それで……手紙には明確に書かれていませんでしたが、自分はアルガ王国に向かってからいったい何をするのでしょうか?」

旅行……そう、隣国への良好と思えば少しは気が和らぐ。
だが、それは向こうで何をさせられるのかによる。

場合によっては……胃がキリキリして、その苛立ちを何かにぶつける為に暴れるかもしれない。
無差別に暴れるつもりはないが、今回向こうに行かなければならない要因をつくった第三王子にその苛立ちを全てぶつけるかもしれない……いや、絶対にぶつける。

「……向こうもパートナーを解消しろとは言えない。そういう制度だからな……だが、第三王子は好いていた人物がいきなり名も知らない者のパートナーになった事に、感情の整理が出来ていない」

「長年想い続けていれば、そうなるかもしれませんね」

ジークもそう簡単に認められなかったからこそ、俺に決闘を挑んできた訳だしな。
まてよ……ということは、今回もそういう流れになるのか?

「ラガス君がセルシア嬢のパートナーに相応しいの見極めたい、というのが一応の願望の様だ」

「ということは、第三王子が自分に課す試験? 的なものに失敗すれば、それを理由にセルシアと別れることを強要してくるかもしれないってことですね」

「……残念ながら、第三王子の口からそういった言葉が出る可能性は否定出来ない」

本当に残念そうな顔だな……もしかして第三王子は教育に失敗した問題児なのか? 
それとも今は恋心が暴走しているだけで、普段は真面目な好青年……なのか?

まぁ、どちらにしろぶっ潰して呪うのは変わらないけど。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...