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もう、喋らなくて良い
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「…………良かったのか、リーベ。せっかく手に入れた勝利だろ。わざわざそれを切り捨てなくても」
「勝利は、得た。ラガス、お前らが俺に施してくれた鍛錬は無駄ではなかった。ここで勝てなかったら……俺は一生殻を破れなかった筈だ」
本音だった。この決闘に勝てなければ、一生消えない傷を負い……永遠に引き籠ることになったかもしれない。
だから……ラガスたちの手を借り、勝利を得られたことに……強敵と呼べるライバルとの決闘に勝てたことは誇りにだと思っている。
「ただ……ただ、彼女は……フィーラは、俺を求めていなかった。そんな事……昔から解ってたんだけどな」
この婚約は自分の希望……我儘から始まった関係だ。
良い関係にしようと、政略結婚に近い形だとしても自分は不幸せだと思わせないように精一杯努力してきた。
絶対に幸せにしようと決めた。
ハンターの道に進むなら、自分も生死の世界に挑もうと決めた。
隣に立つためには、努力を惜しまなかった。
「すぅぅぅ……俺の思いで、彼女の気持ちは変えられなかった。それが……現実だったんだ」
ホーリージャッジメントとレイジングストライクがぶつかり合った瞬間、確かに耳に入ってきた。
衝撃音で離れた観客席からの声なんて聞こえない筈なのに、確かに……頑張れ、ライドと。
勝利を祈り、自分の思いを乗せ……切実に願う声が聞こえてしまった。
そこで解ってしまった。
これから自分がどれだけフィーラを幸せにする為に努力を重ねても、決して彼女の気持ちが自分に向くことはない。
ライドへの思いを諦め、自分との道を進もうと思う筈が無い。
自分と結婚しても……永遠にライドのことを想い続けるだろうと……解ってしまった。
(……俺だけじゃない。俺とフィーラとの間に生まれた子が幸せになれないだろう。今回の決闘に勝ち、誓約通りに事を進めても……誰も幸せにはならない)
両親の仲が上手くいっていない様子を見た子が不安に思わないのか。
先のことを考えれば考えるほど……家族を幸せに出来る未来が見えてこない。
「だから、俺は諦めた……フィーラを幸せに出来るのは、ライドだけだ。これ以上俺が無理に傍に立とうとしても……傷付けるだけだ」
「もう、それ以上喋らなくて良い。喋らなくて良い……だから、涙を隠さなくても良い」
「……ッ!!!!!」
溜め込んでいた涙が溢れ出した。
声を押し殺しながら、それでも叫ぶように擦れた嗚咽が漏れる。
脳裏に……今まで楽しいかったフィーラとの思い出が蘇る。
ただ、今回のことで解ってしまった。それらは全て幻想だったのだと。
自分が楽しいと感じ、フィーラも楽しんでくれていると……勝手に解釈をしていた。
どんな時も……一緒に昼食を食べている時、劇を観ている時、綺麗な景色を観ている時も……想い人は自分ではない男のことを考えていた。
それは今日、知ってしまった。
これ以上、友人に情けない姿は見せたくない。
そう思っていても……肩を借りて涙を流すのを止められなかった。
こんなに泣いたのはいつぶりだろうか……もう記憶にない。もしかしたら、初めてかもしれない。
(俺の今までは……何だったんだろうな)
たった一人の女性の為に頑張ってきた。
放っておけばいずれ大きな脅威になるであろうライバルを倒す為にどうすれば良いか、自分なりに考えて行動した。
自信が溢れてきた。
長い間邪魔だと思っていた害を断ち斬れると思っていた……だが、俗に言う運命の赤い糸は自分ではなく、ライドと結ばれていた。
(忘れなければ……ならないのだろうな)
まだ十三歳。人生これからまだまだ長い。
いつか、もう一度絶対に自分が幸せにしたいと思える人に出会えるかもしれない。
だが……今日負った傷は、当分癒えそうになかった。
「……すまない、情けないところを見せた」
「いや、情けなくなんかなかった。熱い涙だったよ……リーベの思いが溢れていた。全く情けなくなんかなかった」
胸を張って言える。自分の弟子は……友人は情けなくなかった。
最後まで立派に戦い遂げた、男の中の男だった。
「勝利は、得た。ラガス、お前らが俺に施してくれた鍛錬は無駄ではなかった。ここで勝てなかったら……俺は一生殻を破れなかった筈だ」
本音だった。この決闘に勝てなければ、一生消えない傷を負い……永遠に引き籠ることになったかもしれない。
だから……ラガスたちの手を借り、勝利を得られたことに……強敵と呼べるライバルとの決闘に勝てたことは誇りにだと思っている。
「ただ……ただ、彼女は……フィーラは、俺を求めていなかった。そんな事……昔から解ってたんだけどな」
この婚約は自分の希望……我儘から始まった関係だ。
良い関係にしようと、政略結婚に近い形だとしても自分は不幸せだと思わせないように精一杯努力してきた。
絶対に幸せにしようと決めた。
ハンターの道に進むなら、自分も生死の世界に挑もうと決めた。
隣に立つためには、努力を惜しまなかった。
「すぅぅぅ……俺の思いで、彼女の気持ちは変えられなかった。それが……現実だったんだ」
ホーリージャッジメントとレイジングストライクがぶつかり合った瞬間、確かに耳に入ってきた。
衝撃音で離れた観客席からの声なんて聞こえない筈なのに、確かに……頑張れ、ライドと。
勝利を祈り、自分の思いを乗せ……切実に願う声が聞こえてしまった。
そこで解ってしまった。
これから自分がどれだけフィーラを幸せにする為に努力を重ねても、決して彼女の気持ちが自分に向くことはない。
ライドへの思いを諦め、自分との道を進もうと思う筈が無い。
自分と結婚しても……永遠にライドのことを想い続けるだろうと……解ってしまった。
(……俺だけじゃない。俺とフィーラとの間に生まれた子が幸せになれないだろう。今回の決闘に勝ち、誓約通りに事を進めても……誰も幸せにはならない)
両親の仲が上手くいっていない様子を見た子が不安に思わないのか。
先のことを考えれば考えるほど……家族を幸せに出来る未来が見えてこない。
「だから、俺は諦めた……フィーラを幸せに出来るのは、ライドだけだ。これ以上俺が無理に傍に立とうとしても……傷付けるだけだ」
「もう、それ以上喋らなくて良い。喋らなくて良い……だから、涙を隠さなくても良い」
「……ッ!!!!!」
溜め込んでいた涙が溢れ出した。
声を押し殺しながら、それでも叫ぶように擦れた嗚咽が漏れる。
脳裏に……今まで楽しいかったフィーラとの思い出が蘇る。
ただ、今回のことで解ってしまった。それらは全て幻想だったのだと。
自分が楽しいと感じ、フィーラも楽しんでくれていると……勝手に解釈をしていた。
どんな時も……一緒に昼食を食べている時、劇を観ている時、綺麗な景色を観ている時も……想い人は自分ではない男のことを考えていた。
それは今日、知ってしまった。
これ以上、友人に情けない姿は見せたくない。
そう思っていても……肩を借りて涙を流すのを止められなかった。
こんなに泣いたのはいつぶりだろうか……もう記憶にない。もしかしたら、初めてかもしれない。
(俺の今までは……何だったんだろうな)
たった一人の女性の為に頑張ってきた。
放っておけばいずれ大きな脅威になるであろうライバルを倒す為にどうすれば良いか、自分なりに考えて行動した。
自信が溢れてきた。
長い間邪魔だと思っていた害を断ち斬れると思っていた……だが、俗に言う運命の赤い糸は自分ではなく、ライドと結ばれていた。
(忘れなければ……ならないのだろうな)
まだ十三歳。人生これからまだまだ長い。
いつか、もう一度絶対に自分が幸せにしたいと思える人に出会えるかもしれない。
だが……今日負った傷は、当分癒えそうになかった。
「……すまない、情けないところを見せた」
「いや、情けなくなんかなかった。熱い涙だったよ……リーベの思いが溢れていた。全く情けなくなんかなかった」
胸を張って言える。自分の弟子は……友人は情けなくなかった。
最後まで立派に戦い遂げた、男の中の男だった。
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