上 下
382 / 970

ミスればただの打撃

しおりを挟む
「はぁ、はぁ、はぁ……」

「はぁ、はぁ、はぁ……」

決闘が始まってから約十分が経過した。
お互いにスタミナは同等の量を消費している。

だが……二人の体を見れば差は明らかに解る。

「ここまでだけを見れば、リーベの方が有利だな」

「そうですね……やはり手札の数を増やしたのが正解だったようですね」

「それらを使いこなすあのリーベさんが凄いってのもあるが……完全に有利に進められているのは間違いない」

体に纏う魔闘気の精度が上がったことで、魔弾による切傷は期待出来なくなった。
だが、ラガスがリーベの為に造ったレイジファング。
そして実家から取り寄せた炎の魔剣、ブレイズ。

この二つが徐々にダメージを与えていった。

ライドの魔闘気が洗礼されて防御力が増しても、猛る牙と烈火の刃を阻むことは出来ない。

それどころか、容赦なく体を斬り裂こうと迫ってくる。

(良い武器を持ってくると思っていたけど……あの靴はいったいなんだんだ?)

ブレイズの様な魔剣を使ってくることは予測出来ていた。
それに対抗する為に、縁あって手に入れた風の魔剣、シルストをこの決闘に使うことを決めた。

二つの魔剣は同等の代物であり、決して性能では劣っていない。

だが、リーベが身に着けている様な靴のマジックアイテムは全く記憶にない。

(靴タイプのマジックアイテムがあるのは知っている……でも、あれは明らかに武器の類だ。そんなマジックアイテムがあるのか? それともダンジョンの中から発見された新種のマジックアイテム??)

残念ながら、答えはラガスが造った世間にまだ知れ渡っていないマジックアイテム、魔靴。
ライドが知らないのは当然。

どういったマジックアイテムなのか、詳細を知っている者は少ない。
しかしライドはこの戦いの中でどういった性能を持つのか、だいたいは理解していた。

(他のマジックアイテムと同様に、使用者の身体能力を強化する効果が付与されている……だが、厄介なのはそこじゃない。あの刃のせいで中々攻められない)

本来蹴りというのは後隙が多い攻撃。
体術をメインで戦う戦闘職の者でさえ、人間相手だと蹴りは多用しない。

だが、今のリーベには魔弾という補助攻撃がある。
未だに魔闘気を纏い続けているライドの体を斬り裂くことは出来ないが、内部にダメージを与えることは出来る。

そんな攻撃をモロに食らえば、蹴り以上の大きな隙が生まれる。

(それに、靴が生えてくるタイミングを自由自在に操れるのも厄介だ……クソッ!!! 中々攻めきれない!!!!)

決闘で勝利するには、ライバルを……リーベを倒さなければならない。

相手からの攻撃を回避することに専念し、逃げているだけでは勝てない。
それは実際に己の魂をぶつけ合っているライドが一番解っていた。

しかしそれでも、連続で攻めに転じられないのは事実だった。

「リードの奴……結構上手くなったな」

「セオリーから大きく外れている攻め方ですが、体術が得意なリーベさんには覚えやすい動きだったのかもしれませんね」

「だとしても、そう簡単に出来る動きじゃないけどな」

セオリーから外れた獣の様な動き。
その動きに上手く剣を合わせ、例え蹴りの様な後隙の大きい攻撃を放ったとしても、予想外の動きから刃が迫る。

「魔弾だけじゃなく、炎の刃にも注意しなきゃならない……相手は中々攻撃に移り辛いだろうな」

「それを教えた本人が言いますか。こうなることは最初から分かっていたんじゃないですか?」

「さぁ、どうだろうな」

ラガスが獣剣と呼んでいる攻撃は剣を操る技量が低ければ、ただただ刃をぶつけるだけのしょぼい攻撃になってしまう。

確実にどんな体勢からでも引き裂く技術がなければ、ただトリッキーな動き……最悪な場合、手痛い反撃を食らう可能性もある。

(本当に……これから先も鍛錬を怠らなかったら、相当な怪物になりそうだ……いや、年齢を考えれば既に怪物か?)

将来は必ず大物になる。

そんな予感を指せるリーベだが、まだラガスたちはリーベの勝利に確信を持てていない。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

一人暮らしのおばさん薬師を黒髪の青年は崇めたてる

朝山みどり
ファンタジー
冤罪で辺境に追放された元聖女。のんびりまったり平和に暮らしていたが、過去が彼女の生活を壊そうとしてきた。 彼女を慕う青年はこっそり彼女を守り続ける。

悪役令嬢は蚊帳の外です。

豆狸
ファンタジー
「グローリア。ここにいるシャンデは隣国ツヴァイリングの王女だ。隣国国王の愛妾殿の娘として生まれたが、王妃によって攫われ我がシュティーア王国の貧民街に捨てられた。侯爵令嬢でなくなった貴様には、これまでのシャンデに対する暴言への不敬罪が……」 「いえ、違います」

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する

清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。 たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。 神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。 悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...