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その家だけじゃない

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「バッカス先生、自分で言ってたじゃないですか。まだ俺が本気を出していない事には気付いてるって」

「……そうだな。確かに言った」

「なら、解ってるじゃないですか。本気を出した俺にプロの後衛職が敵うことはない……向こうのトップとかなら話は少し変わってきますけどね」

無詠唱で魔法を発動してきたとしても、ランクが低い攻撃なら魔弾で対処出来る。
そこそこ強い攻撃であっても拳や蹴りで破壊出来る。

てか……そもそもアクセルチーターを使った俺を捉えられないだろ。

「ラガス、お前どれだけ手札を隠し持ってるんだよ」

「それは内緒です。ただ、相手がプロであっても勝てる自信はありますよ」

「そうか……まぁ、それだけ自信と実力を持ってるならもう何も言わない。ただ、面倒な大人達には気を付けろよ」

「はい、それに関しては十分に気を付けます」

俺が思っている以上に生徒達は大会の優勝を望んでおり、ラガスにはあまり解らない感情を背負って戦っていた。
そして優勝という結果を持って帰ってくる事に親や学園も待っていた。

だが、結果は俺達ロッソ学園が殆ど奪った。
これで俺に直接何かを仕掛けようものなら、それは単なる逆恨みだ。
俺より……俺達より弱い生徒達が悪かったんだからな。

でも親や学園たちは中心となった俺を潰すことに躊躇は無い。
というか、悪いとすら思って無さそうだ。

「おっと、一つ聞きたかったんだが……イーリス・リザードの親から話は来てるか?」

「は、話って……政略結婚的な意味の、話ですか?」

「おっ、そういう反応になるって事は既に知ってるみたいだな」

「知ってるというか、そういう噂を聞いただけと言いますか……」

バックに最強の暗殺ギルドが付いてるから既に情報を得ているとは言えない。
でも、バッカス先生までその話は噂程度に知ってるってことは本当に話が来るのか……クッソめんどくさいな。

俺のパートナーはセルシアだけだっての。

「多分マジだと思うぞ。過去にパートナーがいる男が複数の女性を囲っていたことはある」

「えっ、それって……だ、大丈夫なんですか???」

「本人達が納得しているからこそのケースだ。パートナー同士がくっつくのは絶対。それ以上横に増えるのは二人の考えや器次第ってことだ」

マジか……その女性は良く納得したな。
仮に俺が女性側だったら絶対に嫌だから止めると思うが……でも、そこら辺が相手の感情を受け止められる器の違いってやつ……なのか?

「イーリス・リザードの親が何を考えてるのか知らないっすけど、俺は絶対に勘弁ですね」

「だろうな。それに、お前が目指す道はハンターだろ。令嬢としては基本的なお嬢様がその道に進むことに納得は出来ないだろうし、婚約話が来ても結局成立はしないだろ」

「元々成立させる気も無いですしね」

セルシアと戦い、完敗したことで多少は丸くなったかもしれないが、あいつとは合う気が全くしない。

「それと、他の家からも婚約話が来るかもしれないから、十分に注意しておけよ」

「…………うっす」

他の家からもくるのかよ……マジで勘弁してくれ。
俺は色男でもチャラ男でもないんだ。

「英雄色を好むって言葉がある。無理に男の本能を抑える必要は無いんじゃないか?」

「俺は英雄なんてガラじゃ無いですよ」

「お前はそう思ってるかもしれないが、ロッソ学園の生徒達や俺達教師達からすればお前は他校を圧倒したうちの英雄だ」

英雄……この俺が、ねぇ。
全くもってその実感はない。だが、客観的な意見を言われるとそうかもしれないと思ってしまう。

「……先生達から見ればそうかもしれませんけど、俺はやっぱりセルシア以外に手を出そうとは思えません」

そもそも本気で、心から好きだと思える人でなければ手を延ばそうとは思えない。

「身持ちが堅い奴だな。まっ、若いうちに遊ぶか遊ばないかはお前の自由だ。これから一か月間ぐらいはのんびり休め」

「えぇ、のんびりと休ませてもらいますよ」

いや、本当に色々と疲れたからマジでのんびりと休息を取る。
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