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そっちからも

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「よう、お疲れさんだなラガス」

「バッカス先生……どうも」

クレア姉さんと別れた後にやって来た客は担任であるバッカス先生だった。
つか……ちょっと酒臭い。ワインの匂いか?

「今回参加した大会だが……つまらなかったか?」

「どうしてそう思うんですか?」

「遠目からだったが、お前からは殺気に近い戦意を感じられなかったんだよ」

殺気、ねぇ……でも、たかが試合にそこまで殺気を撒き散らすか?
人によってはたかがじゃないかもしれないけど。

「大会に参加するような奴らの大半は自分は家の名を背負って戦っている」

「……自分の為じゃなくて、家の為に戦ってると」

「気持ちの全てがそうじゃないとは思うが、半分ぐらいはそういった気持ちで占めてるだろうな」

家の為、か。
うちは男爵家だから特にプレッシャーを掛けられるなんてことは無いが、他の家……伯爵家以上の子供は大変そうだな。

「うちの家は、そういったプレッシャーを掛ける様な人はいないんで」

「俺としてはお前の兄や姉が残した実績がプレッシャーになると思うんだがな」

「なるほど。確かにそう思えるかもしれませんね。でも……俺は単純に自身を持って戦える程に努力と実戦を積んできた。それだけですよ」

「そうやって得てきた力も全て使う程……対戦相手は強くなかったんだろ」

いや、それはそうなんだけど……この人、どこまで視えてるんだ?

「結果だけで言えばそうですね。殺意を持つほど強い生徒はいませんでした。でも、退屈な大会って訳でも無かったですよ。楽しめる試合はいくつかありましたし」

「……そういえばいくつかまともな戦いはあったな。まぁ、大会の話は一旦置いといて……これ、どうするんだ?」

懐から取り出されたのは国に仕える騎士団からの勧誘書。

「史上初かもな。全ての団から勧誘書が届くなんて」

「俺からすれば全て要らないんですけどね」

「……お前以外の生徒達が発狂しそうなセリフだな。それ、他の奴らがいるまでは言うなよ。嫉妬の視線で殺されるかもしれないぞ」

「胃がキリキリするのでそれは勘弁したいですね」

学園には騎士を目指す生徒も多くいる。
そういった生徒からすれば騎士団からの勧誘を蹴る俺は嫉妬や妬みで殺したくなる対象か。

「というか……魔法師団からも勧誘書が届いてたぞ」

「あれ、そうでしたっけ?」

さっき軽く話を聞いた限りでは魔法師団からの勧誘は無かった気がするが……俺がしっかりと聞いていなかっただけか。
でも、なんで魔法を使わない俺を勧誘するんだよ。

一応音魔法はあるけど、大会では全く使っていない。
だから俺が属性魔法を習得してるって情報がそもそも生まれることはないと思うんだが。

「折角だから今ここで読んでみるか?」

魔法師団から渡された手紙を受け取り、封を開ける。

魔法師団が俺を欲する理由……確かに気にはなる。
上から下までゆっくり……漏れが無いように全ての文字に目を通した。

シングルスでの優勝、ダブルスでの優勝、団体戦での優勝を褒める内容。
それが大半を占めていた。だが、その戦績を得たから欲しいのではなく、後半に明確な内容が書かれてあった。

「……ふぅーーーーー。なるほどな」

「なんて書いてあったんだ?」

「簡単に言えば、俺に魔法師団を守る剣に、盾になって欲しいという願いですね」

「魔法師団を守る剣と盾に、か……あぁ~、そういう事か。なら、その誘いに乗るのはお薦めしないな」

「どうしてですか?」

元々誘いに乗る気は一切無いが、それでもバッカス先生がお薦めしない理由は気になる。

「魔法師団に在籍している魔法使いたちは自分達の魔法技術に誇りを持っている。故に、魔法が使えない者を見下す傾向にあるんだよ」

「……俺の戦いを観ていてもそんな戯言が吐けると」

「確かにお前の戦いぶりは圧巻だった。だが……プロの魔法使いと戦っても同じ事が言えるか?」

なるほど。学生とプロとは完全にレベルが違うという訳か。
確かに魔法師団に在籍している魔法使いレベルになれば、学生の中では天才中の天才でも及ばない強さを持っていて当然か。

ただそれでも……俺の答えは変わらない。
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