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身勝手な嫉妬と我儘

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神の視点

リングへと上がった両者。
片方は鋭い目付きで相手を見つめ、もう片方は何故相手が少々不機嫌になっているのか分からなかった。

「お久しぶりですわね、セルシア」

「そう、だな。久しぶり、イーリス」

直ぐに戦いは始まらない。ラガスの時と同じようにまずは口戦から……ではなく、久しぶりに会った友人として話す。

「不自由はありませんか」

「? 不自由は、特に無い、よ」

ラガスのパートナーってから一切の不自由は感じていない。
寧ろ、以前から気になっていたラガスに対する気持ちの正体が解ったのでスッキリした。

「そうですか……単刀直入に言わせてもらいます」

「うん、どうしたの?」

イーリスは指をビシッとセルシアに向かって刺し、断言する。

「あの男はあなたにとって不釣り合いな存在です。即刻別れることを薦めます!!!」

突然の友人に向かってパートナーと別れた方が身の為だと進言する令嬢。
選手と選手が試合を前に口戦を行うのは珍しく無いので、審判も口を出さずに静観している。

だが、礼を見ない口戦に審判はポーカーフェイスを保ってはいるが、内心では驚き笑っていた。

(まさか、令嬢が令嬢に向かってパートナーと別れろと進言するとは……しかも令嬢に非があるというのではなく、パートナー側に非がる……プライベートは知らないが、ラガス・リゼードが紳士として相応しく無いとは思えないが……)

子息が令嬢にパートナーと別れろと、令嬢が令嬢にお前に非があるから別れろと宣言することは……極稀にだがある。

だが、令嬢が令嬢にお前のパートナーがダメ人間だから別れた方が良いと進言した例は基本的に無い……戦の場では間違いなく無い。

「どう、して? ラガスは良い人、だよ。強いし、優しいよ」

それはセルシアがラガスと一緒に生活を始めて感じた素直な感想だ。
偶に腹黒いなと思う部分はあるが、それは正当な理由があって感情が黒くなっているのは解っている。

ラガスは他のつまらない子息とは違う。
パートナーという制度にはさほど興味は無かった。自分の婚約者だった子息にも興味は無かった。

だが、今になってパートナーという制度に感謝している。
これ以上、自分の隣に立つ人として日々の生活に楽しさを感じさせてくる人はいない。

「ッ! それは上辺だけの態度よ! 腹の中では何を考えてるか解らない怪しさ満載な男です!!」

確かにその強さに関しては怪しさ満載な男と言えるだろう。
基本属性魔法のアビリティを一つも持っていない。それは貴族の子供としてはあり得ない。

魔法、それこそが貴族の象徴だと宣言する者すらいる。
勿論平民でも魔法アビリティを習得する者はいるが、それでも血統を配合し続けてきた貴族には敵わない部分がある。

まずイーリスはその時点でラガスが気に入らなかった。

「むっ。そんなこと、無いよ。偶に黒い、けど。でも……それは皆、一緒の筈」

ただ、セルシアにそういった考えは一切無い。
寧ろ基本属性のアビリティを一つも習得していないのにも拘わらず、自分達より遥か上の強さを持っているラガスを尊敬している。

「あんな小細工を散りばめ、貴族らしくない戦いをする者は……あなたには似合わないッ!!!!」

セルシアを自分の籠に閉じ込めておく、なんて事は考えていない。
しかしセルシアには自分が似合うと思える者とくっ付いて欲しい。

その点、ジーク・ナーガルスはイーリスの中で合格点を出せる男だった。
家柄良し、礼儀良し、実力良し、見た目良しの四拍子が揃った子息……何度か話したことはあるが、まさにセルシアの横に立つべき男だろうと思えた。

だが、学院へと入学した途端に不適合者な男と出会ってしまい、そのままパートナーとなってしまった。

実力は圧倒的に良し、見た目も……まぁ良しだろう。
ただ、家柄と礼儀に関しては良しとは言えない。

なので、何がなんでもラガスをセルシアのパートナーから引きずり下ろしたい。
その感情はセルシアの関心を集めているからという嫉妬と、単純に自分のライバルと認めた同性のパートナーに相応しく無いという自己的な考え。

ぶっちゃけて言ってしまえば・・・・・・単なる我儘だ。
そもそもな話、セルシアの両親はラガスが娘のパートナーになる事に反対していない。
それどころか有効的な態度を示している。

「そんなこと、無い。というか、イーリスには、関係無い」
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