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まさかの相手
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「……あらら、まさかそっちがぶつかるとは」
「ラガスとしてはぶつからなくて良かったんだろ」
「いや、そりゃそうだけどさ。まさかあの二人がぶつかるとは思わなかったからさ」
そう、先鋒としてリングに上がったセルシアの同じ先鋒である対戦相手は、まさかのイーリス・リザードだった。
「ラガスの事が好きなパートナーと、ラガスがセルシア・ロウレットのパートナーである事を嫌っている……正確には、ラガスが嫌われてるのか?」
「そうだよ、主に俺が嫌われている。セルシアとは元々仲が良かった……のか? 多分そんな感じだったな」
初対面の相手に中々ボロカスに言われたからな。
でも、俺がイーリス・リザード立場だったら……いやいやいや、嫌がって無いんだからその相手に必要以上に突っかかるのはやっぱりちょっとなぁ……うん、無いな。
「面倒な事に巻き込まれてるなぁ。それで、どっちが勝つんだ?」
「……絶対って断言出来るほど差がある訳じゃない……けど、相性から考えるにセルシアの方が有利だ」
「遠距離攻撃も出来る接近戦のエキスパートだしな……本当は相手側が勝つ可能性はゼロだと思ってるんじゃないか?」
ハッキリと訊いて来るな。でも、正直セルシアの勝利は揺るがないと思っている部分はある。
だって、俺とシングルスで戦った時に本気を出さず、隠し玉を持っている様には思えなかった。
そしてその日から今日まで数日しか経っていない。
そんな時間で大幅に戦力がアップすることは……基本的に無い。
個人で持ち込めるのは武器のみ。それ以外のマジックアイテムとかを持ち込めば反則負けになる。
試合前の補助魔法やマジックアイテムによるドーピングも同じくルール違反。
過去にはこの大会でも違反を犯したやつがいるみたいだが、速攻でアウトになったらしい……マジでアホだろ。
「まぁ……本心はそうだな。シングルスの決勝で戦ったからこそ、解る。イーリス・リザードがセルシアに勝つ可能性は限りなくゼロに近い」
「限りなくって事は、万が一はあるって事か」
「俺は神じゃないんだ。この試合の未来を視れる訳じゃない。それに……イーリス・リザードがセルシアの虚を突けば万が一は起こるだろ」
「虚を、なぁ……でも、学校に入ってからは毎日お前らと一緒に訓練をしてるんだろ」
そりゃ同じ場所に住んでるからな。
授業が終われば夕食の時間までずっと訓練を続けるとかよくある。
「そんで多分お前とイーリス・リザードとの戦いも観ている。それなら大体の攻撃には対処出来るだろうし、お前の教えを学んでるなら、その万が一にも余裕で対処するんじゃないか?」
「それは……ど、どうなんだろうな? それこそ戦いが始まってみないと分からないだろ」
「はっはっは! それもそうかもな。てか、お前むっちゃ睨まれてねぇか」
俺とアリクは選手の入場入り口から試合を観ようと思って移動したんだが……うん、セルシアとの会話で不機嫌になったのか、俺の方を睨んできた。
この距離だと観客達の声も混ざって何を言ってるのかちょっと聞こえないな。
でも、音魔法を使って二人の会話だけ拾うのも……ちょい怖いし恥ずかしくなるかもしれないから止めておこう。
「お前は何かと美人に縁があるよな」
「さぁ、縁があるのかは分からないな。ただ……あんなギャングみたいな鋭い目付きでこっちを見てくる奴との縁はご遠慮願いたいな」
「ぶっ!! ははっ、それは俺も同感だな。いくら相手が美人でもあんな人を凍りつかせる様な目を向けられたくない。でも、同じ公爵家なんだろ……過去に遡れば、パートナー以外の嫁がいた男もいるんだし、案外将来お前の嫁さんになってるかもしれないぞ」
「・・・・・・マジで止めてくれ。洒落にならない」
おいおいおいおいおい、もしかしてその話って結構広まってるのか? そんな事無いよな。
だって、ごく一部の人間しか知らない話的な内容だし……というか俺がそれを了承する訳無いし。
「そんなにあの令嬢は嫌いか?」
「負けん気が悪いとは思わない。でも、完全に俺に敵意を向けてるんだから好きにはなれないな。からかう相手としては丁度良いかもしれないけど」
「……お前って意外と黒いよな」
貴族の世界で生きるなら腹黒くて当然だろ
「ラガスとしてはぶつからなくて良かったんだろ」
「いや、そりゃそうだけどさ。まさかあの二人がぶつかるとは思わなかったからさ」
そう、先鋒としてリングに上がったセルシアの同じ先鋒である対戦相手は、まさかのイーリス・リザードだった。
「ラガスの事が好きなパートナーと、ラガスがセルシア・ロウレットのパートナーである事を嫌っている……正確には、ラガスが嫌われてるのか?」
「そうだよ、主に俺が嫌われている。セルシアとは元々仲が良かった……のか? 多分そんな感じだったな」
初対面の相手に中々ボロカスに言われたからな。
でも、俺がイーリス・リザード立場だったら……いやいやいや、嫌がって無いんだからその相手に必要以上に突っかかるのはやっぱりちょっとなぁ……うん、無いな。
「面倒な事に巻き込まれてるなぁ。それで、どっちが勝つんだ?」
「……絶対って断言出来るほど差がある訳じゃない……けど、相性から考えるにセルシアの方が有利だ」
「遠距離攻撃も出来る接近戦のエキスパートだしな……本当は相手側が勝つ可能性はゼロだと思ってるんじゃないか?」
ハッキリと訊いて来るな。でも、正直セルシアの勝利は揺るがないと思っている部分はある。
だって、俺とシングルスで戦った時に本気を出さず、隠し玉を持っている様には思えなかった。
そしてその日から今日まで数日しか経っていない。
そんな時間で大幅に戦力がアップすることは……基本的に無い。
個人で持ち込めるのは武器のみ。それ以外のマジックアイテムとかを持ち込めば反則負けになる。
試合前の補助魔法やマジックアイテムによるドーピングも同じくルール違反。
過去にはこの大会でも違反を犯したやつがいるみたいだが、速攻でアウトになったらしい……マジでアホだろ。
「まぁ……本心はそうだな。シングルスの決勝で戦ったからこそ、解る。イーリス・リザードがセルシアに勝つ可能性は限りなくゼロに近い」
「限りなくって事は、万が一はあるって事か」
「俺は神じゃないんだ。この試合の未来を視れる訳じゃない。それに……イーリス・リザードがセルシアの虚を突けば万が一は起こるだろ」
「虚を、なぁ……でも、学校に入ってからは毎日お前らと一緒に訓練をしてるんだろ」
そりゃ同じ場所に住んでるからな。
授業が終われば夕食の時間までずっと訓練を続けるとかよくある。
「そんで多分お前とイーリス・リザードとの戦いも観ている。それなら大体の攻撃には対処出来るだろうし、お前の教えを学んでるなら、その万が一にも余裕で対処するんじゃないか?」
「それは……ど、どうなんだろうな? それこそ戦いが始まってみないと分からないだろ」
「はっはっは! それもそうかもな。てか、お前むっちゃ睨まれてねぇか」
俺とアリクは選手の入場入り口から試合を観ようと思って移動したんだが……うん、セルシアとの会話で不機嫌になったのか、俺の方を睨んできた。
この距離だと観客達の声も混ざって何を言ってるのかちょっと聞こえないな。
でも、音魔法を使って二人の会話だけ拾うのも……ちょい怖いし恥ずかしくなるかもしれないから止めておこう。
「お前は何かと美人に縁があるよな」
「さぁ、縁があるのかは分からないな。ただ……あんなギャングみたいな鋭い目付きでこっちを見てくる奴との縁はご遠慮願いたいな」
「ぶっ!! ははっ、それは俺も同感だな。いくら相手が美人でもあんな人を凍りつかせる様な目を向けられたくない。でも、同じ公爵家なんだろ……過去に遡れば、パートナー以外の嫁がいた男もいるんだし、案外将来お前の嫁さんになってるかもしれないぞ」
「・・・・・・マジで止めてくれ。洒落にならない」
おいおいおいおいおい、もしかしてその話って結構広まってるのか? そんな事無いよな。
だって、ごく一部の人間しか知らない話的な内容だし……というか俺がそれを了承する訳無いし。
「そんなにあの令嬢は嫌いか?」
「負けん気が悪いとは思わない。でも、完全に俺に敵意を向けてるんだから好きにはなれないな。からかう相手としては丁度良いかもしれないけど」
「……お前って意外と黒いよな」
貴族の世界で生きるなら腹黒くて当然だろ
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