上 下
301 / 950

単体では最強の敵だった

しおりを挟む
お互いに息を完全に整え、最後の攻撃に移る。
クロウザ・バレアントが望んでいる攻撃はおそらく、俺がセルシアの最後の一撃に迎え撃ったあの一撃のことだろう。

クロウザは腰の位置を引くくして槍の真ん中辺りを持って構える。
というか、やっぱり遠距離攻撃で来るんだな。てっきり斬撃系で勝負してくるのかと思った。

ただ……やっぱり最後の最後に隠し玉を持っていやがった。
今回の試合中、槍には火の魔力しか纏っていなかった。
なのに今回の一撃には火だけではなく、迸る雷の魔力も同時に纏っていた。

てか……中々に器用な事をするな。
違う属性の攻撃魔法を同時に放つよりも、違う属性の魔力を一つの武器に纏わせる方がセンスと才が必要だと聞いたことがあるけど……こいつ、もしかしたらマジで強くなるかもな。

「獣王の進撃!!!!」

「炎雷・怒号!!!!」

獅子の進撃と全てを食らい尽くす炎雷の螺旋が激突する。
この威力……セルシアの雷王の砕牙に迫るんじゃないか?

それ程までに高威力の一撃だった。
その結果……お互いの攻撃は弾け飛び、周囲に大きな衝撃を与えた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……はっ、やっぱり……届かなかった、か」

最後の一撃を放った後、クロウザは今にも倒れそうな程に疲弊していた。
そりゃそうだろうな。元々体力と魔力は殆ど底を尽いていたんだ。
それを無理矢理振り絞って出した最高の一撃……ははっ、本当に楽しかったよ。

「確かに届かなかった。でも、俺の獣王は確かにお前の炎雷に消し飛ばされた。それは事実だ」

「そう……か。確かにそうだな。そこは、誇らせてもらおう」

そう言い終えると、クロウザは糸が切れたように倒れた。
ただ、寸でのところで場外に落とされて既に脱落いていたパートナーの女の子がキャッチした。

そして審判がクロウザが完全に気を失ったのを確認し、俺達の勝利判定を宣言する。
その瞬間、観客達の熱が膨らみ……弾けた。

「はぁーーー、相変わらず観客達は元気だな。ちょっとぐらい声が枯れれば良いのに」

「多分、それは無い……と思うよ。だって、お祭りだから」

「あぁ・・・・・・そうかもな。それでも耳に響くのは嫌だな」

でも……今回はセルシアの時みたいに良い試合が出来たからそこまで気分は悪く無かった。

「ねぇ……今度あの人と戦う時は、私が戦っても良い?」

「あぁ、良いよ。でも……俺がもう一度クロウザ・バレアントと戦う事は無いんじゃないか?」

「それは……そうかも、しれない。どうしよう?」

セルシアとしてもマジで戦ってみたい相手なんだろうな。
それは解らなくもない。純粋に戦いだけを楽しんでるような奴だったからな。

それに力量を考えれば結構近い相手だし……もしかしたら俺と戦うよりも緊張感があってヒリヒリする戦いになるかもな。

「クロウザ・バレアントもセルシアと戦ってみたいって言ってたし、個人的にあって模擬戦をすれば良いんじゃないか?」

「……うん。そうだ、ね。でも、それだと……今日のラガスが体験したような戦いには、ならない。だから、今日クロウザ・バレアントと戦えたラガスが、羨ましい、かも」

「あぁ~~、なるほどな。確かに今回はお互いに負けられない舞台だったからな。今日と後日ではそこら辺の緊張感が変わってくるか」

セルシアが何に不満を持っているのかは解かる。
単純に言えば、模擬戦と命を賭ける実戦の差だ。

セルシアは後者を欲するタイプだからな。
なら、今日クロウザと戦えた俺はラッキーだな。

「……多分、あの人以上の人は、もうダブルスにはいない、と思う」

「それは……そうかもな」

やっぱり学校の代表として出るだけあって実力がそこまで離れることは基本的に無い。
だから一回戦ではともかく、二回戦目になると手札を惜しんでいられるペアは殆どいないだろう。

てか、単体最強の敵はクロウザ・バレアント以外にはいない。
それは断言出来る。後は……コンビネーション攻撃でどれだけ高威力な技を出せるペアがいるか……ただ、セルシアはそういうのを求めてはいないからな。

「まっ、そういう楽しみは団体戦になれば味わえる筈だよ」

「そう、かな……うん、そうかもいれない、ね」

団体戦はその学園最強のメンバーを選んでくる筈……だから満足出来る試合が多いと思う。
……断言は出来ないけどな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

異世界で捨て子を育てたら王女だった話

せいめ
ファンタジー
 数年前に没落してしまった元貴族令嬢のエリーゼは、市井で逞しく生きていた。  元貴族令嬢なのに、どうして市井で逞しく生きれるのか…?それは、私には前世の記憶があるからだ。  毒親に殴られたショックで、日本人の庶民の記憶を思い出した私は、毒親を捨てて一人で生きていくことに決めたのだ。  そんな私は15歳の時、仕事終わりに赤ちゃんを見つける。 「えぇー!この赤ちゃんかわいい。天使だわ!」  こんな場所に置いておけないから、とりあえず町の孤児院に連れて行くが… 「拾ったって言っておきながら、本当はアンタが産んで育てられないからって連れてきたんだろう?  若いから育てられないなんて言うな!責任を持ちな!」  孤児院の職員からは引き取りを拒否される私…  はあ?ムカつくー!  だったら私が育ててやるわ!  しかし私は知らなかった。この赤ちゃんが、この後の私の人生に波乱を呼ぶことに…。  誤字脱字、いつも申し訳ありません。  ご都合主義です。    第15回ファンタジー小説大賞で成り上がり令嬢賞を頂きました。  ありがとうございました。

処理中です...