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大抵は跳ね返す

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SIDE リット・リゼード

随分とまぁ……立派になってしまったものだな。
俺の目から見ても相手のイーリス嬢は大した魔法の腕を持っている。

にも拘わらず、たいした技術を見せることなく倒してしまうとは……現三年生を含めても、ラガスに敵う学生はいないだろうな。

「なぁ……お前の息子、なんなんだよ」

「なんなんだよと言われてもな。俺の自分の息子だ!!」

「そのドヤ顔は止めろ。無性に腹が立つ。それで……本当になんなんだ? 相手のイーリス嬢は相当な魔法の腕の持ち主だ」

「だろうな。将来は一流の魔法使いに……宮廷魔術師になれる器だろう」

国に認められた魔術師集団。
そんなエリート中のエリート集団に入れる程の実力を有しているだろう。

将来的に成功するのは目に見えている。だが……相手が悪かった、その一言しかない。

「それでも、うちの息子の方が強かったそれだけだろう」

「いや、まぁ……結果だけを語るならそうだろうけどよ。でも、どうやってあの強さを説明するんだよ」

「そうだなぁ・・・・・・まず、ラガスの従者は昨日のメイドと執事が参加する大会で優勝した二人だ。その二人とラガスは毎日訓練を積んでいた」

あの二人ほど実力を持った同年代の執事やメイドは……正直いないと思っている。
年齢が上がれば更に上がいるとだろうが、確かその大会での一番年上は十七歳だったか。
その従者を倒して優勝したのだから、大抵の者は倒せてしまう。

「あぁ、あの二人か。確かにあの実力を持つ二人と訓練を積んでいるなら……でも、それだけであの接近戦の強さと魔弾の技術を身に着けられるものか?」

「それに関しては……あれだな。始めるのが圧倒的に早かったんだよ」

「何をだ?」

「訓練がだ。幼い頃に属性魔法のアビリティが使えない解かったラガスはそう時間が経たないうちから魔弾と接近戦の訓練を始めた。それに、あいつは四男だ。正直な話、殆ど面倒な勉強はさせていない」

読み書きと簡単な礼儀作法。
後は簡単な常識だけ。雇っている家庭教師も学習の速さに随分と驚いていたな。

「まさか、一年の全てを訓練に費やしていたのか?」

「いいや、全てという訳では無い。だが、それに近いな。趣味に使う時間等以外は訓練に使っていた筈だ」

「なるほど、なぁ……それで、まだあの解説が言う通り、本気では無いのか?」

「帯剣している剣を使っていないという点では、本気では無いな」

別に長剣がメインの武器では無い。ラガスのメイン武器はその稀有な力を持つ魔弾だ。
にしてもあいつは長剣だけじゃ無くてある程度の武器をある程度使えてしまうから……本当に人の心を折るのが得意だよな。

「ははぁ……お前の子供達はみなヤバいと思っていたが、あの子……ラガス君が一番ヤバそうだな」

「ヤバそうというか……一番ヤバいだろう」

確かに俺の子供達はしっかりと俺と妻のリアラの血を引いており……ちょっと血気盛んなところがある。
別にラガスはそこまで血気盛んという訳では無い……と思うが、キレたらヤバ過ぎるのは間違いない事実だろう。

「それで、大丈夫そうなのか?」

「何がだ?」

「何がって……ラガス君はリザード家の令嬢をぶっ倒してしまったんだぞ。色々と面倒ごとに絡まれそうじゃないか」

「あぁ、そういう事か。確かのラガスは面倒ごとに絡まれることが多いらしいからな」

手紙で最近の近況は知っているが……パートナーであるセルシア嬢の影響もあってか、面倒ごとに絡まれる回数が非常に多い。

だが、自分の息子だが中々恐ろしいことをやってのけたので、大抵の権力問題に対しては十分に跳ね返すことが出来ると思っている。

「それでも……親の俺が出しゃばる場面はそうそう無いだろう。いざとなれば誰が相手でもぶった切るがな」

「……分かった、解ったからいきなり闘気をまき散らすのは止めろ。お前の場合はちょっと洒落にならん」

「おっと、悪かったな」

だが、本当に俺が前に出る事はなさそうだ。
セルシア嬢の父親であるバルンク殿はそういった問題には自分が全力で対処しようと言ってくれている。

バルンク殿と対峙しようと考える者など、本当に数える程しかいないだろう。
さて、久しぶりに会いに行くとしよう。
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