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もう一度ズタボロに

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「ふむ、分かってはいたがここまで一方的な展開か」

バレント先生が担当の魔法科の授業では勿論攻撃魔法やその他の魔法について学ぶ機会が多いが、結構訓練場で実戦を行う時間も多い。

そして今回は俺が主役らしく、前回体術等で相手になる生徒を倒すという内容だったが、今回は通常の魔弾だけで倒せという内容。

魔弾という攻撃方法自体は皆知っていたが、大した攻撃では無いという印象の様で、前回よりは油断していないがそこまで緊張もしてない。

今回も前回と同様で俺に挑みたいと思う生徒だけが俺と戦う。
俺は攻撃方法が魔弾のみという縛りに対し、同級生達は何でもあり。
流石その条件ではそう簡単には負けないだろうと思っていたんだろうな。

結果はバレント先生の言葉通り、全滅。
俺に傷を付けることが出来た同級生は一人もいなかった。

というか半径約十メートルいないに近づく事すら不可能だったかもしれない。
勿論殺傷能力は控えているが、普通に打撃面のダメージはある。
やっぱり人の体ってモンスターと比べて脆いな。身体強化のアビリティを使って無かったら尚更脆い。

腕に罅が入った奴、もしくは骨折した奴もいるな。
けどそういった生徒達は授業に付いてくれている保険医の先生に回復して貰っていた。

「これで解っただろう。魔弾という攻撃が極めればここまで有能な技術だという事を」

体術で俺にボコられた時並みに表情が沈んでる。
改めて突きつけられると思いものがあるか。

バレント先生的には良い感じにプライドが壊れてるなとも思ってるのかもしれないな。

「ラガス、魔弾はいつから訓練を始めた?」

「基本属性の適性が無いと解ってからかと」

「そうか……今、同級生達を倒した魔弾に全ての技術を込めてるか?」

「いいえ」

跳弾すら使っていないからな。
精々弾道を少し逸らすぐらいしか技術的な事は行っていない。
しかも銃口からしか魔弾は撃っていない。

手抜きも手抜きだ。

「だ、そうだ。……ラガス、先に謝っておく。すまん」

「? は、はい」

いきなりバレント先生は俺に謝って距離を取る。

大体十数メートルか? 立ち止まると俺に向かって掌を固定する。
なるほど、そういう事か。

「ファイヤーボール」

詠唱無しで放たれた火属性の初級魔法。ただ、初級魔法の割には球体が大きい。
その大きさだけで生徒達の大半は驚いている。

魔法の腕が高く、俺達とは経験値が違うんだからそれぐらい出来てもおかしく無いだろ。

そんなファイヤーボールに対して俺は魔弾の連射で対抗。
ファイヤーボールの大きさを考えれば……一弾で消せないことは無いが、そういうところまで見せる必要は無い。

合計九個の魔弾を放ち、火球を掻き消す。

「流石だ。今のを見たから解ると思うが、ラガス程の技量を持つ者ならば初級魔法を掻き消すぐらい訳なく行える」

そう言うバレント先生のファイヤーボールだって速度を抑えていたように思えるけどな。

「体術と同じくラガス程の技量を持てとは言わない。しかし後衛職は特に咄嗟の攻撃に関して攻撃魔法より魔弾を放つ方が有効な場面もある。それは覚えておくんだ。ラガスから、何か一言あるか」

えっ、そういうのはバレント先生の仕事じゃないんですか!?
俺みたいな同級生が言ったところで意味無いとは思うのだが……雰囲気的に言っておいた方が良さそうだな。

「えっと、攻撃魔法は確かに強力な武器だ。でも状況によっては他の手札が最強の武器に変わるかもしれない。戦いの場に立つならば……権力の世界に身を置くなら、いつ奇襲を仕掛けられてもおかしく無いと……俺は思う」

バレント先生並みの腕があればまた話は変わってくるかもしれないけどな。
ただ……この人が立っている場所は努力だけで辿り着くのは不可能だろうけど。

「良い事を言うじゃないか。魔弾に関しては俺でも構わないが、ラガスにアドバイスを貰うのも良し。ただし迷惑を掛けない程度にな」

俺の時間を削るのは止めて欲しいが、そういうフォローは有難い。
まっ、俺が教えても良いと思う技術は一つだけだがな。

それ以外は教える気は無いし、自分で気付ける奴は解る筈だ。
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