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受かる、そう思っていても

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「また会ったな」

「そうだね。また、会ったね」

試験の合否を確認するために学園に向かっていたんだが、前回と同じく道中でセルシア達と会い、一緒に向かう事にした。

「にしても・・・・・・周りの奴らは随分と緊張してるな」

今の言葉は抑えた訳では無い、周囲に同じく受験した者達全員とは言わないが、それでも数人には確実に聞こえていた筈。

てめぇ、調子こいてんじゃねぇーーぞ的な視線は無い。

「基本的にラガス坊ちゃまの様に試験に落ちても他の道があると思っている人は少ないのですよ」

「俺もメリルに同意っす。ラガスさんが色んな意味でオールマイティ過ぎるんですよ」

「褒めたって何も出てこないぞシュラ。まぁ・・・・・・確かに俺は色々出来るよ。それにこれから先の選択肢は別に一つじゃない」

他の奴らは今の時点では貴族の学園に入学して当たり前って考えている奴らが殆どなんだろうな。

でも、そうやって選択肢を狭めてるのは親が子供に押し付ける邪魔な期待と強制、そんで受験生の親と同じ下らないプライドと自分で未来を決めようとしない意志の弱さだろ。

前世を日本で生きた俺としては今の俺の生き方は当たり前の考えだ。

「自分の意志で決めて選んだ道でないのなら、どうせ大して意味のない人生しか送れないだろ」

「・・・・・・相変わらずどこか達観した考えですね」

「他の貴族の子供が親が敷いたレールを素直に歩き過ぎなんだよ。各家の当主は仕方ないかもしれないが、それ以外はある程度の選択肢がある筈だ。親が自身の権力を広げることに執着している屑で無いならな」

「は、ははは。ラガス様、それはあまり公の場で言わない方がよろしいかと」

「それぐらい解ってますよキリアさん」

そんな事を言えばどんな面倒な未来がやって来るのか容易に想像出来る。

「ラガスなら、言葉より行動に、移しそう」

「うっ・・・・・・否定出来ないのが辛いな」

「ラガス坊ちゃまにはそれが出来てしまう程の実力がありますからね」

そりゃそうだが、相手によっちゃ見切る奴もいるだろうからな。
隠蔽の効果を付与したとしても、いずれは見切る奴と出会うだろう。

「ラガスは、確かに多くの選択肢を、持ってる。でも・・・・・・私は出来れば、ラガスと一緒に学園に、通いたい」

「ッ・・・・・・だ、大丈夫だろう実技も座学も合格点は超えている筈だからな」

あ~~~、なんでこの人はこうも不意を突く様な攻撃を俺に仕掛けてくるかなぁ。

メイド二人は何やら盛り上がってるし。
察しの良いシュラは鈍感なルーンに何が起きてるのか説明しちゃってるし。いらん事せんで良いってのに。

ってもう学園に到着したみたいだな。

というかやっぱり俺とセルシアが一緒に歩いているのに敵意や殺意に嫉妬心を抱いた視線をぶつけてくる奴はいなかったな。

「ラガス、あそこに多分結果が張れてる」

「みたいだな」

過去に学校のテスト以外で試験とか受けた事は無い。
本当ならもっと周りの奴らと同じぐらい緊張してるのが普通なんだろうけど、これだけ余裕を持っていられるのは神様が与えてくれた才能と・・・・・・今まで積み重ねて来た努力があったから、かな?

「ラガス坊ちゃま!!!」

「ん?」

テンションが高いメリルが指をさす方向に目を向けると・・・・・・そこには俺の名前が書かれてあった。

「・・・・・・はは、受かるって思ってたけど、やっぱり嬉しいもんだな」

「おめでとうございます、ラガス坊ちゃま」

「おめでとうございます!!! ラガスさん!!!」

「おう! ありがとな、二人共」

俺の名前の少し上・・・・・・というかトップにセルシアの名前が書かれていた。
もしかして成績順に書かれてあるのか?

「おめでとう、ラガス」

「セルシアもおめでとう。これから三年間、よろしくな」

何となくこういう場はお互いに握手をするものだと思い、手を差し出す。

「うん。こちらこそ、よろしく」

セルシアは満面の笑みを浮かべて手を出し、俺の手を握ってくれた。

よくよく思い返せば、身内以外の人間の女性と触れるのはこれが初めてか?
そう考えると少し恥ずかしくなってきたな。
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