上 下
144 / 970

応用した結果

しおりを挟む
「ふんッ!!!」

投げられた数個の石ころは空を切り、弾丸と化してゴブリンに迫る。
目の前の角が生えた人間が拾った石を投げた。それはゴブリン達も理解出来た。

だが、その石ころを目で追えた訳では無い。

「グギャッ!!??」

「ギャッ!!??」

「ギャギャッ!!??」

「ッ―――・・・・・・」

腕を抉られ、腹に穴を空けられ、足の骨を折られ、頭の風穴を空けられた。

力任せに適当に投げられた石ころを場所がバラバラとはいえ、ゴブリン達に甚大ダメージを与えた。
そしてシュラはソウスケから預かっているアイテムポーチから木刀を取り出す。

「お前らには、これで十分だろ」

不遜な表情。
それだけでゴブリン達はさっきまでとは逆に、自分達が嘗められていると解る。

木刀に魔力を纏い、襲い掛かるシュラにゴブリンは怒りを燃やす。
燃やすのだが、素の身体能力でシュラより劣るゴブリンが出来る事は無い。

「一、二」

首を斬り落とし、胴に蹴りを喰らわせて木に激突させる。

「三」

そしてシュラに対応しようと構えるよりも先にシュラの上段からの一撃で頭が大きく凹む。

「四」

三体目のゴブリンが落としかけた石槍を素早く広い、腹部に目掛けて投擲。
当然ゴブリンにその投擲が躱せる事は無い。

ただ、少しだけシュラの狙いよりズレてしまった。

「多少は反応出来たって事か。ただ、その怪我じゃ出血多量で死ぬな」

まだ意識はあるものの、立っているのがやっとの状態のゴブリンに反撃の術は無く、シュラに恐れをなして体を引きずって逃げようとする。
だが、二人の視界から消える前に前のめりに倒れて絶命。

「ギャッ!!!???」

地上の五匹のゴブリンをシュラが倒し終えたところで、メリルが枝で隠れている木の上部を狙って短剣を投げる。

「やはりホブ・ゴブリンでしたか」

「逃げようとしていたのか?」

「シュラがあっという間にゴブリンを倒してしまうのを見て退散しようとしたのでしょう」

五体目のゴブリンが腹を貫かれた時点で逃げればもしかしたら、は無い。
しかしその時点では本能の部分に伝わる恐怖がホブ・ゴブリンの体を縛っていた。

そして慌てて逃げようとしたが、メリルの投擲の前では完全に無力だった。

「そういえば、あの糸生産と糸操作だったか。結構使いやすいのか?」

「使い勝手の良いスキルと言えるでしょう。それに、私の毒魔法とは相性が良い」

「・・・・・・お前がどういった攻撃方法を考えているのか何となく解った」

「あら、そうですか。なら感想は?」

シュラは予想出来た攻撃方法を苦い顔をしながら答える。

「エグイ。広範囲の遠距離を持たない者にとっては恐怖だろう」

「でしょうね。こうやって」

指先から紫色の糸を出したメリルはそれを木に巻き付ける。
そして木から柴糸を離すと、巻かれた部分が腐っていた。

「体に毒を染み込ませる事も出来ますし、応用が出来れば更に使い勝手が良くなるでしょう。それで、シュラの方はどうなのですか?」

「最初は完全に防御用のアビリティだと思っていた。けど、ラガスからの言葉でその認識が変わった」

ラガスからの一言で城壁はただ仲間を守るだけのアビリティでは無い。
その実演をするため、シュラは城壁を発動する。

すると地面から岩の壁が現れる。
そして岩の壁は徐々に形を変え、シュラの腕にドリル状となって纏う。

「よっと」

軽くストレートを放つと、岩のドリルがすっぽ抜け、木々に風穴を空けながらどんどん前へ前へ進む。

「攻撃は最大の防御、それなら防御は最大の攻撃にもなるんじゃないのかってな。最初は良く解らんかったが、ラガスが造る魔靴を思い出したら何となく出来た」

「何となくであれですか。人にとってもモンスターにとってもかなりの脅威ですね。さて、シュラの今の攻撃で何かが釣れたようですね」
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

悪役令嬢は蚊帳の外です。

豆狸
ファンタジー
「グローリア。ここにいるシャンデは隣国ツヴァイリングの王女だ。隣国国王の愛妾殿の娘として生まれたが、王妃によって攫われ我がシュティーア王国の貧民街に捨てられた。侯爵令嬢でなくなった貴様には、これまでのシャンデに対する暴言への不敬罪が……」 「いえ、違います」

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...