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使えずとも傑物

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森での戦いを終えた翌日、朝食を終えて少し経ってから昼まで訓練を始める。

「・・・・・・ラガス君達は毎日こういった訓練をしているのか?」

「そうですね。午後は昨日と同じように森の中に入ってモンスターを倒して魔石や素材をとっています」

やはり九歳の子供のトレーニングに関しては異常だろうな。
レアースさんが軽く放心状態になっている。
他のセルシア・ロウレット以外の三人も同様な表情をしている。

セルシア・ロウレットに関しては驚きながら何故か拍手をしている。謎だ。

内容を説明してから早速訓練を開始する。
最初はストレッチなどの準備運動で体をほぐしてから素振りに移る。

ただ何回も同じ事はせず、蹴りや拳に長剣と短剣、槍や手斧などの素振りの感触に違和感が無ければ直ぐに違う武器へ移る。

説明の時点で全員、特にバーズは疑わしい眼を俺に向けていたがレアースさんは納得がいった表情をしてくれた。
俺の考えを解ってくれる人がいるのは普通に嬉しいな。

「何回も素振りを、しなくて良いの?」

「それが普通かもしれないが、俺としては自分で何回も同じ訓練をしなくても本番で同じ動きを出来ると思っている」

「そうなんだ・・・・・・確かに、そうかもしれない、ね。それと、ラガスは長剣以外も、扱える事が出来るんだね」

「別にそこまでの錬度が高い訳では無い。万が一、魔力が切れて長剣が手元にない場合、素手で戦っても良いかが手札を増やすという意味も含めて多少訓練を積んでいる」

マジで手札が多い事にこした事は無いだろうからな。
それにある程度腕を上げておけば普通の戦いにおいても奇手として使える。

「それじゃぁ、各自素振りに関してはいつも通りに」

シュラやメリルに関してはこんなんやってみたらどうだとか言えるけど、セルシア達に口出していいのかいまいち分らん。
というか、バーズの奴が吠えそうだから面倒。

二十分程で素振りを終え、次はシャドーに移る。
俺は基本的にシャドーを始めると終わるまで周りの事に意識が向かなくなる。

だから、何時もより集中しよう・・・・・・相手がしっかりと見える様に。



「・・・・・・すさまじいな」

あれがまだ十歳にも満たない子供の訓練、か・・・・・・基本属性の魔法アビリティが使えずとも傑物。
この言葉が相応しい。
セルシアお嬢様が興味を持たれるのも解る。

「私の目の錯覚でなければラガス様ともう一人色の無い人が見えるのですが」

「私もそれらしいものが見える。いや、見させられていると言った方が正しいのかもしれないね」

ラガス君の必死の表情も相まって見えているのかもしれない。
なら、実戦と同じような心情でやれば周囲の人物に戦っている相手があたかもいる様に見せられるか?

無理だね。

ラガス君はメインの武器である魔弾に素手と長剣以外にサブとして多様な武器を扱えるようにしている。
万が一の状況を考えての習得。

確かにその考えを持つ者は多いけれど、錬度がこの歳にしては圧倒的に高い。
万が一の状況を考えて・・・・・・そういった次元を超えている気がするね。

「凄い、やっぱりラガスは、凄い!!!!」

あららら、セルシアお嬢様は完全にラガス君に夢中だね。
一応婚約者がいるんだが・・・・・・もしかしたらの可能性があるのかもしれない。

まっ、その辺りに関して僕が口出しできる訳無いんだけどな。
にしても、バーズは相変わらずセルシアお嬢様に夢中だからか、セルシアお嬢様が夢中になっているラガス君に対して嫉妬の感情が欠陥して溢れ出そうになっている。

気持ちは解らんでもないけど、それだと益々セルシアお嬢様から嫌われるだけなんだが・・・・・・もうそこそこ自分で考えられる歳なんだから自分で気づいてもらおう。

さて・・・・・・まずは目の前に武器を持った相手がいる。
それのイメージを強く持ってシャドー? を始めよう。
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