上 下
71 / 950

・・・・・・なんでこんな大物が

しおりを挟む
トーナメント戦の前日、俺達はミレーアスの街を治める貴族の屋敷で行われるパーティーに出席している。

とりあえず美味い飯は食えると思って俺はパーティーに出席する事を決めた。
そしてあわよくばパーティー会場に前回、王都の城で開かれたパーティーで知り合ったロックスがいるかもと思ったが、残念ながら会場にはいなかった。

父さんや母さんにクレア姉さん、アリクの奴も知り合いと話しているが俺には生憎とロックス以外に貴族の知り合いはいないので、直ぐに会場から料理を持ってバルコニーで一人寂しく食べていた。

でも只飯を食べていた訳じゃない。しっかりと明日大会に出場するであろう参加者を観察していた。

勿論俺は解析や鑑定系のアビリティを持っていないから正確な事は解らない。
それでも大体の事は解る。

やっぱりクレア姉さんやアリクより実力が上だと感じる奴らはちらほらいた。
んで、公爵家の令嬢と侯爵家の子息のお二人もいた。子息のイケメン男子はまだ少年とは思えない程営業スマイル? が上手い。
それに対して、ロウレット家のお嬢様は相変わらず無表情だな。

ん? なんかこっちに向かって人が来てるような・・・・・・バルコニーには今のところ俺しかいないが、別に俺目当てって訳では無いよな? 単純に風に当たりに来ただけだよな?

・・・・・・いや、やっぱり俺に用がありそうだな。
俺と目が合っても一向に逸らさずまっずぐ俺に向かって来る。

「やぁ、君は他の子達と話したりしないのかい?」

いきなりフランクな態度だな。どう返したらいいか分らないだろイケメン紳士。
けど・・・・・・この人が父さん以上に強いってのは何となく解る。

「自分は貴族らしくないので他の子供達とは話が多分合わないと思います。だからバルコニーで美味い飯を食べています」

「・・・・・・そうだね。君は他の子供達と比べて何か違うようだ。ところで、君は明日のトーナメントには出場するのかな?」

「いえ、姉とあ・・・・・・兄は明日のトーナメントに出場しますが、自分は出ません」

あっぶな。アリクだけで名指して言うところだった。
というか、この人なんでそんな事を訊いてくるんだ? もしかしてトーナメントの運営? に関わってたりするのか?

「そうなのかい? それは勿体無い。君ならある程度上までは勝ち上れるはずなのに」

何を思ってそう判断したんだこの人? この人の前で戦った記憶は全くないんだが。

「自分はあなたの前で戦った事がありましたか?」

「そうだねぇ・・・・・・あれは戦ったというよりは、降りかかってくる前に追い払ったというべきかな」

降りかかる前に追い払った・・・・・・あぁ、なるほどな。あの時のパーティーにいたのか。
つか・・・・・・ちょと待て。俺はあの時魔弾の能力を使って魔弾を見えない様にしていたんだぞ。
まさかそれをほんの少し瞬間で見破ったのか!?

「あの時にいたんですね」

「少し見た目は頼りないかもしれないが、これでも国の副騎士団長だからね」

・・・・・・・・・・・・マジでか。そりゃ父さんより強いと感じる訳だ。
国の副騎士団長ともなればあの数瞬で俺の攻撃の種が解っても可笑しくは無いか?

「それで、いきなりの提案なんだけど学校を卒業したら騎士団に来ないか? 推薦状は僕が出すからさ」

「・・・・・・遠慮します」

「はは、あっさりと断るね。ちょっと傲慢かもしれないけど、騎士団に誘われるって事は結構名誉な事だと思うんだけどね」

それは間違っていないだろうな。でも俺が騎士団に入ったところでどう考えても輪が乱れるだけだ。

「自分の戦い方は騎士という言葉に合いません。それに俺は学校を卒業したらハンターになるつもりです」

「そうか、確か君の両親は元ハンターだったね。それなら未来のハンターを育てる学校に入学するんだね」

「いいえ、入学するのは王都の貴族専門の学校です。そちらの方が多くの事を学べると思うので」

学べるというか、色々な事を得られそうだからな。

「ふ、ふふふ。君は本当に変わっているね。ロウレット家の令嬢、セルシア嬢も変わっているが君はあの子を上回っているよ」

「褒め言葉として受け取っておきます」

若干馬鹿にされた気はしなくもない。

「そう受け取ってくれると嬉しい。さて、君にもう一つ提案が・・・・・・と言うよりは頼み事だね。良ければ私の息子と摸擬戦をして欲しいんだ」

・・・・・・何故そうなる。副騎士団長の息子ならそういった相手は幾らでもいるだろ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

パーティー会場で婚約破棄するなんて、物語の中だけだと思います

みこと
ファンタジー
「マルティーナ!貴様はルシア・エレーロ男爵令嬢に悪質な虐めをしていたな。そのような者は俺の妃として相応しくない。よって貴様との婚約の破棄そして、ルシアとの婚約をここに宣言する!!」 ここ、魔術学院の創立記念パーティーの最中、壇上から声高らかに宣言したのは、ベルナルド・アルガンデ。ここ、アルガンデ王国の王太子だ。 何故かふわふわピンク髪の女性がベルナルド王太子にぶら下がって、大きな胸を押し付けている。 私、マルティーナはフローレス侯爵家の次女。残念ながらこのベルナルド王太子の婚約者である。 パーティー会場で婚約破棄って、物語の中だけだと思っていたらこのザマです。 設定はゆるいです。色々とご容赦お願い致しますm(*_ _)m

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話

ルジェ*
ファンタジー
 婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが─── 「は?ふざけんなよ。」  これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。 ********  「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください! *2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!

処理中です...